著者
満薗 勇
出版者
マーケティング史学会
雑誌
マーケティング史研究 (ISSN:24368342)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.147-164, 2023-09-30 (Released:2023-09-30)
参考文献数
15

日本企業における消費者対応部門は1970年代から整備が進んだが,当初の消費者対応は,苦情処理という位置づけにとどまり,社内での地位も低かった。そうしたなかで1980年に発足したACAPは,企業や業種の枠を越えて消費者対応のノウハウを蓄積・共有するとともに,消費者対応という業務をマーケティングの一環として位置づけることに努め,「消費者志向体制」の整備に大きく貢献した。先進的な企業においては,コンピュータを利用したシステム整備が進み,消費者対応を通じて集めた消費者の声を,社内のさまざまな部門にフィードバックする態勢も整えられ,商品の改善や開発につながる成果も表れた。1980年代後半以降には,消費者対応部門の名称に「お客様」の呼称を冠する企業が増えていったが,そうした変化は,消費者対応の業務がマーケティング上の位置づけを獲得していったことと,深く結びついていたと考えられる。

4 0 0 0 OA 研究の思い出

著者
石井 淳蔵
出版者
マーケティング史学会
雑誌
マーケティング史研究 (ISSN:24368342)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.45-50, 2023-03-31 (Released:2023-03-31)
著者
神野 由紀
出版者
マーケティング史学会
雑誌
マーケティング史研究 (ISSN:24368342)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.96-104, 2022-03-31 (Released:2022-03-31)
参考文献数
14

近代初期の日本における消費文化をつくりだした百貨店は,試行錯誤を繰り返しながらその後のマーケティングの前史となるような,新たな市場開拓やブランディングを展開して顧客の潜在的な欲望を喚起した。初期百貨店では,広告をはじめとするデザイン・ディレクションや文化活動,呉服をはじめとする様々な商品における流行操作,子ども用品や家具・室内調度品などの商品開発に至るまで,積極的にかかわりながら市場を開拓していく状況が見られた。明治末から昭和初期にかけての日本の消費文化は,中間層を巧みに消費者として取り込むことで急速に発展していった。その先駆的な試みはその後に続く日本のマーケティング史の源流のひとつとして,学ぶべき点は多いと思われる。本稿では,筆者のこれまでのデザイン文化史的な百貨店研究を,マーケティング史という視点から捉えなおした。

1 0 0 0 OA 書評

出版者
マーケティング史学会
雑誌
マーケティング史研究 (ISSN:24368342)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.250-282, 2022-09-30 (Released:2022-09-30)
参考文献数
45

青木 均『小売営業形態の成立の理論と歴史』同文舘出版,2020 年. (書評者:鳥羽 達郎) 上沼 克德『学としてのマーケティング―マーケティング学の論理と方法―』同文舘出版,2020 年. (書評者:小林 啓志) 田中 智晃『ピアノの日本史―楽器産業と消費者の形成―』名古屋大学出版会,2021 年. (書評者:薄井 和夫) 光澤 滋朗『わが国マーケティングの成立』晃洋書房,2021年. (書評者:神保 充弘) 矢作 敏行『コマースの興亡史―商業倫理・流通革命・デジタル破壊―』日経 BP 日本経済新聞出版本部,2021 年. (書評者:関根 孝)

1 0 0 0 OA 書評

出版者
マーケティング史学会
雑誌
マーケティング史研究 (ISSN:24368342)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.195-215, 2023-09-30 (Released:2023-09-30)
参考文献数
62

石井淳蔵『進化するブランド オートポイエーシスと中動態の世界』碩学舎,2022年.(書評者:木下 明浩)鳥羽達郎(訳・解説)『「小売の輪」の循環:アメリカ小売業の発展史に潜むダイナミクス』同文舘出版,2022年.(書評者:青木 均)堀越比呂志『アメリカ・マーケティング史15講―対象と方法の変遷―』慶應義塾大学出版会,2022年.(書評者:菊池 一夫)柳 純『日本小売企業の国際マーケティング』同文舘出版,2022年.(書評者:鳥羽 達郎)
著者
野村 比加留
出版者
マーケティング史学会
雑誌
マーケティング史研究 (ISSN:24368342)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.165-175, 2023-09-30 (Released:2023-09-30)
参考文献数
16

本稿ではマーケティング実践史研究を類型化する試みを行っている。類型化の基盤としてそれぞれの研究がどのような目的で執筆され,どういう点に重点を置いているのかに注目した。また,時代区分についても検討材料としている。 本稿では①経営史におけるマーケティング実践史,②流通史におけるマーケティング実践史,③特定業界に特化したマーケティング実践史,④4Pを意識したマーケティング実践史の4つの類型に区分した。それぞれについて特徴が見られた。 類型化することでマーケティング史研究(特に実践史)についてどの様な傾向があるのかを整理することができる。また,実践史に関連した未開拓・未発達な研究領域も明らかにすることができたと考える。
著者
大内 秀二郎
出版者
マーケティング史学会
雑誌
マーケティング史研究 (ISSN:24368342)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.127-146, 2023-09-30 (Released:2023-09-30)
参考文献数
164

本論文の目的は,官報において公告された商業登記や当時の紳士録,各種年鑑などの同時代的史料を活用して,1930年代の東京電気の販売会社の実態を,その設立の経緯や役員の構成,事業所の所在地から明らかにすることである。東京電気は1930年4月に東京市内に3つの販売会社を設立して以降,1939年までには全国(朝鮮を含む,北海道と台湾を除く)を8つのブロックに分割し,それぞれを地域販社が統括する体制を整備した。各販売会社の役員構成や設立の経緯は多様であり,有力電気商を統合して内部化するかたちで設立されたものもあれば,電気商の人・組織を活用せずにその影響を極力排するかたちで設立されたものもあった。多様な形態の販売会社の存在は,東京電気と有力電気商との複雑な関係性を示唆する。
著者
光澤 滋朗
出版者
マーケティング史学会
雑誌
マーケティング史研究 (ISSN:24368342)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.112-126, 2023-09-30 (Released:2023-09-30)

いわゆるマーケティングがわが国ではいつ,いかにして生成したかについては,わが国学界ではいまだ決着を見ていない。綿糸紡績業の歴史は,マーケティングが明治時代の大手紡績業者と伝統的問屋間の対立・抗争からもたらされたことを示している。当時,この業界で中間商人排除運動が大々的に展開されたのもその結果とみてよい。
著者
薄井 和夫
出版者
マーケティング史学会
雑誌
マーケティング史研究 (ISSN:24368342)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.3-23, 2023-03-31 (Released:2023-03-31)
参考文献数
112

本稿は,1900年代に成立する日本の商業学を準備した要素として,19世紀末における高等商業教育運動とその教育論,海外の商業史と商業経済学の翻訳書,わが国執筆者による商業史と商業経済学の内容を分析する。高等商業教育論は,実用教育への要請と学術研究を志向する議論とがあったが,後者が前者を排斥する傾向があった。だが,経営学も商業学も成立していなかったこの時期において,実用教育を排斥する学術研究の中味は漠然としたもので,またその「商業教育」は「商業」の枠を超えて経営者教育全般を意味していた。翻訳書では,まずイギリスの執筆者たちの商業史が翻訳された。それは世界貿易史であり,貿易を担う人材へ基礎知識を提供すると同時に,自由貿易こそが国を富ませるという社会経済的主張の裏付けであった。一方,商業経済学は,1890年代にドイツ歴史学派の影響が現れる中でドイツ人の商業経済学が翻訳され,20世紀初頭のわが国の議論に一定の影響を及ぼした。日本人執筆者たちによる著作では,1890年代に日本商業史が外国貿易史および国内商業史として成立した。一方,商業経済学は玉石混交であったが,「純粋の商業」と「補助商業」の区別や,商業経営論の萌芽などが確認でき,1900年代における商業学の成立を準備していた。
著者
川邉 信雄
出版者
マーケティング史学会
雑誌
マーケティング史研究 (ISSN:24368342)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.18-35, 2022-03-31 (Released:2022-03-31)
参考文献数
70

本稿の目的は,マーケティングにおいて歴史研究がなぜ必要なのか,その意義を明らかにすることである。とりわけ,従来からマーケティング史研究と密接な関係を有してきた経営史の視点が,マーケティングにおける歴史研究の発展に多大な貢献ができることを示唆している。そのため,経営史研究の分析においてよくみられるように,近代的なビジネス・システムの発展を4つの時期に分け,各時期における経営環境の変化とビジネス・システムの変容,それらに対応したマーケティングの特徴,変化の原因,過程,帰結を概観している。 こうした長期にわたるマーケティングの変化を考察する歴史研究によって,マーケティングの一般化・理論化の意味が明らかになり,斯学の存在価値と今後の発展をもたらすことができる。同時に,マーケティングの歴史研究の分析・説明方法は,マーケティング実践者にとっても,日々の意思決定や行動において有意義なものとなる。

1 0 0 0 OA 目次

出版者
マーケティング史学会
雑誌
マーケティング史研究 (ISSN:24368342)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.toc1, 2022-03-31 (Released:2022-03-31)