著者
大出 義仁
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.51, no.12, pp.892-898, 1996-12-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
27

気体の圧力の下限は零であるが, 液体ではその圧力は負となりうる. 液体分子が分子間力の及ぶ距離で運動しており, 分子間相互作用ポテンシャルに引力部分があるからである. 負圧下の液体は熱力学的には準安定で容易に気相を核生成するため, その'引っ張り強さ'以外の物性はこれまで殆ど測定されていない. そこで, 熱力学的な負圧発生法であるBerthelot法を使って高負圧発生技術の可能性を調べた. 容器壁との界面でおきる気相の核生成確率を低下させるよう, 予め脱ガスしておいた金属容器に抜気した液体を密封し, 多数回温度サイクルを施すことにより, 水および有機物について-20MPaを発生させた. 気相の核生成理論から予測されるそれぞれの引っ張り強さの約1/7および1/2を越す負圧である. 容器表面の微細な孔状欠陥に保持されていたガスが負圧により液中に抜き出されるとき気相の核生成が起きるが, これらの表面欠陥への容器材内部からの不純物ガス供給率がこのレベルの負圧を制限していることが解ってきた. さらに高負圧が液体に発生維持できれば, これまで見逃されてきた極端環境となりうる.
著者
大出 義仁
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.51, no.12, pp.892-898, 1996-12-05

気体の圧力の下限は零であるが, 液体ではその圧力は負となりうる. 液体分子が分子間力の及ぶ距離で運動しており, 分子間相互作用ポテンシャルに引力部分があるからである. 負圧下の液体は熱力学的には準安定で容易に気相を核生成するため, その'引っ張り強さ'以外の物性はこれまで殆ど測定されていない. そこで, 熱力学的な負圧発生法であるBerthelot法を使って高負圧発生技術の可能性を調べた. 容器壁との界面でおきる気相の核生成確率を低下させるよう, 予め脱ガスしておいた金属容器に抜気した液体を密封し, 多数回温度サイクルを施すことにより, 水および有機物について-20MPaを発生させた. 気相の核生成理論から予測されるそれぞれの引っ張り強さの約1/7および1/2を越す負圧である. 容器表面の微細な孔状欠陥に保持されていたガスが負圧により液中に抜き出されるとき気相の核生成が起きるが, これらの表面欠陥への容器材内部からの不純物ガス供給率がこのレベルの負圧を制限していることが解ってきた. さらに高負圧が液体に発生維持できれば, これまで見逃されてきた極端環境となりうる.