著者
片山 学 大原 利興 村野 健太郎
出版者
公益社団法人大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.200-217, 2004-07-10
被引用文献数
10

地域気象モデルRAMSと結合した物質輸送モデルHYPACTを用いて東アジアにおける硫黄化合物の動態をシミュレートし,1995年7月と12月におけるソース・リセプター関係を定量化することにより,日本列島への沈着量の発生源地域別構成とその季節変動を解析した。本研究で用いたモデルは,従来のソース・リセプター解析用モデルとは異なり,地域気象モデルで計算された時空間分解能の高い気象データを活用することにより物質輸送モデルで必要とする各種の気象パラメータを精緻に与えているところに特徴がある。変質・沈着プロセスを組み込んだHYPACTは国内各地で観測されたSO_2とSO_4^<2->の地上濃度およびSO_4^<2->湿性沈着量を良好に再現する。このモデルを使って東アジアにおけるソース・リセプター関係を解析した結果,日本への硫黄沈着量の発生源地域別寄与率は7月には火山36%,日本28%,中国18%,朝鮮半島12%,12月には中国58%,朝鮮半島17%,日本13%,火山8%となり季節によって大きく変化する。すなわち,7月と12月における日本列島の硫黄沈着を比較すると,7月には火山を含む国内発生源の寄与が64%にも達するのに対して,12月にはその寄与は21%に低下し越境汚染の寄与牢が75%まで増加する。このように7月と12月において発生源地域別寄与率が大きく異なる原因は基本的に風系パターンの違いによって説明できる。また,日本海側と太平洋側の季節別沈着量を比較すると,太平洋側では7月の沈着量が12月の沈着量に比べて3倍程度増加するのに対して,日本海側における12月の沈着量は7月の沈着量に比べて約10%増加する程度である。このため日本全体では,越境大気汚染の寄与が大きな12月よりも火山を含む国内発生源の寄与が増加する7月の方が沈着量が20%程度多くなる。以上のことから,日本での沈着量の季節変動を議論する場合,越境汚染よりもむしろ火山を含む国内発生源影響の季節変動が重要である。