著者
斎藤 幸雄 柴 光年 山川 久美 馬場 雅行 木村 秀樹 藤沢 武彦 山口 豊 大和田 英美
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.95-100, 1991-01-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
12
被引用文献数
2

症例は60歳男性, 主訴は乾性咳嗽, 胸部X線写真にて右上肺野に腫瘤影が認められ, 気管支鏡検査で気管浸潤を伴う右S1原発の肺癌と診断された. 化学療法 (CDDP+VDS) 1クール, 続いて放射線療法 (50Gy) が施行されたがいずれの療法も奏効せず腫瘍の増大による気管圧迫のため呼吸困難が出現し, また上肢および体幹部に皮膚転移巣が多発した. 救命的にNd-YAGレーザーで気道の開大を行い呼吸困難および全身状態の改善が得られたため, 皮膚転移巣に対してはエタノールの局所注入あるいは摘出を行い退院となった. 外来での経過観察中 (退院時より約2ヵ月間) に残存する全ての皮膚転移巣が消失し, 続いて原発巣も退縮を示した. 現在, 発見から5年経過したが臨床的には腫瘍の再増殖は認められず健在である. 退縮の機転に関しては明らかではないが, 本症例は極めて稀な肺癌の自然退縮例であると考え報告した.