著者
斎藤 幸雄 柴 光年 山川 久美 馬場 雅行 木村 秀樹 藤沢 武彦 山口 豊 大和田 英美
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.95-100, 1991-01-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
12
被引用文献数
2

症例は60歳男性, 主訴は乾性咳嗽, 胸部X線写真にて右上肺野に腫瘤影が認められ, 気管支鏡検査で気管浸潤を伴う右S1原発の肺癌と診断された. 化学療法 (CDDP+VDS) 1クール, 続いて放射線療法 (50Gy) が施行されたがいずれの療法も奏効せず腫瘍の増大による気管圧迫のため呼吸困難が出現し, また上肢および体幹部に皮膚転移巣が多発した. 救命的にNd-YAGレーザーで気道の開大を行い呼吸困難および全身状態の改善が得られたため, 皮膚転移巣に対してはエタノールの局所注入あるいは摘出を行い退院となった. 外来での経過観察中 (退院時より約2ヵ月間) に残存する全ての皮膚転移巣が消失し, 続いて原発巣も退縮を示した. 現在, 発見から5年経過したが臨床的には腫瘍の再増殖は認められず健在である. 退縮の機転に関しては明らかではないが, 本症例は極めて稀な肺癌の自然退縮例であると考え報告した.
著者
藤村 政樹 野村 将春 坂本 さゆり 上尾 友美恵 柴田 和彦 小川 晴彦 西 耕一 松田 保
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.105-112, 1990-01-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
14

若年健康女性にみられる深吸気の Vmax 増加効果と basal bronchomotor tone の関係にっいて, partial and maximum expiratory flow-volume curve を用いて検討した. 深吸気の Vmax 増加効果は, ipratropium bromide によるPEF25の増加率 (r=-0.81, p<0.0002) および salbutamol によるPEF25の増加率 (r=-0.62, p<0.01) と有意の相関を示した. 深吸気の Vmax 増加効果の日差変動は, PEF25の日差変動と有意 (r=0.68,p<0.005) に相関したが, MEF25の日差変動とは相関しなかった. 以上より, 若年健康女性における深吸気の Vmax 増加効果は, 迷走神経緊張による basal bronchomotor tone が亢進しているためにみられる現象と考えた.
著者
榊原 博樹 廣瀬 邦彦 松下 兼弘 中村 慎吾 佐藤 元彦 加古 恵子 末次 勸
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.395-402, 1995-04-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
20

気管支喘息患者10名にエイコサペンタエン酸エチルエステル (EPA-E) 製剤 (MND-21) を1日2.7g, 12週間投与した. この間, 喘息症状, 血清の脂肪酸濃度, および calcium ionophore A23187で刺激された白血球のロイコトリエン (LT) 産生能を測定した. コントロールとして, EPA-Eを内服していない39名の気管支喘息患者から得られた白血球を使用した. LT産生量は逆相高速液体クロマトグラフィーにより測定した. EPA-Eの内服で血清中のEPA濃度は3.3倍に増加した. EPA-E内服4週間後の白血球のLTC4およびLTB4産生量 (それぞれ53.5±23.3ng/107cellsと24.9±12.4ng/ao7cells) はコントロール (それぞれ124.4±91.6ng/107cellsと58.3±34.8ng/107cells) と比べて有意に減少した. 4週間のEPA-E内服で有意なLTC5, およびLTB5の産生が認められたが僅かであった (それぞれ6.5±1.9ng/107cellsと4.6±2.7ng/107cells). 臨床症状の改善はEPA-E投与2ヵ月後に認められたが, その効果は一時的であった.
著者
持丸 博 川並 汪一 工藤 翔二 仁井谷 久暢
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.268-274, 1995-03-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
25

シリカを経気管的にSDラットに投与し, 肺胞壁の線維化と肺胞毛細血管内皮細胞の化生の発現機序について免疫組織化学的電顕的に観察した. 投与直後より肺胞毛細血管は虚脱し, 内皮細胞は広い範囲にわたり壊死を示した. 腔内にはシリカによる肉芽腫が形成され, 同部へ肺胞壁の線維芽細胞が侵入増生し膠原物質を産生した. 同病変は再生上皮細胞で被覆され間質線維化が誘導された. 投与4日目に細気管支周囲の小血管の内皮細胞がPCNA (増殖細胞核抗原) 陽性を示した. 同胞体は肺胞毛細血管に沿って遊走し壊死に陥った内皮細胞を置換した. 1ヵ月目以降, 正常では陰性の肺胞毛細血管は, Factor-VIII related antigen (F-VIII) 陽性となり, 電顕的には Weibel-Palade 小体が出現した. 一部の毛細血管には, 気管支動脈系毛細血管内皮細胞の特徴を示す有窓構造の出現を認めた. この化生は新生内皮細胞の起源が気道系血管であることを示唆すると思われた.
著者
藤村 政樹 野村 将春 坂本 さゆり 上尾 友美恵 柴田 和彦 小川 晴彦 西 耕一 松田 保
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.105-112, 1990

若年健康女性にみられる深吸気の Vmax 増加効果と basal bronchomotor tone の関係にっいて, partial and maximum expiratory flow-volume curve を用いて検討した. 深吸気の Vmax 増加効果は, ipratropium bromide によるPEF<sub>25</sub>の増加率 (r=-0.81, p<0.0002) および salbutamol によるPEF<sub>25</sub>の増加率 (r=-0.62, p<0.01) と有意の相関を示した. 深吸気の Vmax 増加効果の日差変動は, PEF<sub>25</sub>の日差変動と有意 (r=0.68,p<0.005) に相関したが, MEF<sub>25</sub>の日差変動とは相関しなかった. 以上より, 若年健康女性における深吸気の Vmax 増加効果は, 迷走神経緊張による basal bronchomotor tone が亢進しているためにみられる現象と考えた.
著者
早田 義博 加藤 治文 周 明智 立花 正徳 林 永信 田原 真 河内 堯 瀬尾 泰樹 雨宮 隆太
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.15, no.11, pp.759-768, 1977-11-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
20

In order to examine the carcinogenetic process of squamous cell carcinoma of the lung, the authors observed chronologically the changes of the bronchial epithelium throughout the duration of the experiment which produced squamous cell carcinoma in dogs. The changes were observed cytologically, histologically and bronchofiber-scopically.At the bifurcation of the apical and cardiac bronchi of two adult beagles and four adult mongrels a single dose of 50mg 20-methylcholanthrene (20-MC) was injected by means of a special needle which we developed for both therapeutic and experimental use through a bronchifiberscope at seven day intervals. Proliferation of basal cells accompanied by atypical nuclei or nuclear fission appeared immediately after injection of 20-MC, and were replaced by metaplastic cells after one week. Mildly atypical squamous cell metaplasia occured after 1-4 weeks, and moderately atypical squamous cell metaplasia after 2-8 weeks in all dogs. Five to nine weeks after the commencement of the experiment severely atypical squamous cell metaplasia appeared in 4 dogs, and in 3 dogs carcinoma in situ between 8 and 14 weeks. Invasive carcinoma developed after 18-22 weeks in 3 dogs (2 beagles, 1 mongrel). Squamous cell metaplasia was thus recognized to be an important precursor of squamous cell carcinoma, and further research on DNA analysis performed throughout the experiment may provide further elucidation of the carcinogenetic process.
著者
源馬 均 佐藤 篤彦 千田 金吾 岡野 昌彦 岩田 政敏 安田 和雅 谷口 正実 山崎 晃 立田 良廣 西村 和子
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.29, no.6, pp.710-717, 1991-06-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
24

超音波加湿器による過敏性肺炎の2例を報告した. 両例とも環境誘発試験陽性であり, 同試験後早期のBALは好中球増多を示し, 第1例では病理組織学的にも胞隔内に好中球浸潤が認められた. 第1例では加湿器の水の培養を施行しえなかったが, 皮内反応, 沈降抗体, 吸入試験の成績から Aspergillus fumigatus が起因抗原と考えられた. 第2例では水の培養および沈隆抗体から抗原として Acremonium が疑われた. 従来, 加湿器肺の抗原として好熱性微生物が重視されていたが, 超音波加湿器による本報告例ではその関与を示唆する所見は得られなかったことから, 本症の抗原検索にあたっては加湿器の機構にも留意すべきと考えられた.
著者
山田 峰彦 柿崎 藤泰 渋谷 まさと 中山 秀章 廿楽 裕 田中 一正 鈴木 一 本間 生夫
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.34, no.6, pp.646-652, 1996-06-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
20
被引用文献数
1

呼吸筋ストレッチ体操 (RMSG) プログラムを作成し, 肺機能, 運動能力, 呼吸困難感, 生活の質 (QOL) に与える効果について4週間のトレーニングの前後で検討した. 13名の慢性閉塞性肺疾患患者 (平均FEV1: 1.24L) を対象とし, 4週間にわたりRMSGを1日3回実施した. 12名が検討終了した. FRC (前4.19±1.27, 後3.88±1.03L), TLC (前5.98±1.35, 後5.66±1.20L), RV (前3.29±1.16, 後2.89±0.89L), 残気率 (前53.9±11.2, 後50.6±9.74%) はそれぞれ有意 (p<0.01) に低下した. 6分間歩行距離 (6MD) は平均43±30m (+15%, p<0.01) 延長した. 6MD終了時の呼吸困難感 (150mm VAS) は (前65.1±40.8, 後36.1±36.8mm) と有意 (p<0.05) に低下した. QOLは Guyatt らの The Chronic Respiratory Disease Questionnaire により評価し, 有意な改善が認められた. RMSGは呼吸リハビリテーションとして有用性があると考えられた.
著者
井原 義尚
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.216-224, 1994-03-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
21

慢性気管支炎等の慢性閉塞性肺疾患を有する毒ガス傷害者のうち72例について, 胸部X線像, 肺機能検査所見, 喀痰性状を解析し, 病像の経時的変化の検討を行った. 胸部X線所見別にみると, 炎症性変化群に比べ, 気腫性変化群において, また慢性気管支炎の臨床分類別にみると, 単純型, 感染型に比べ, 閉塞型, 感染閉塞型において, FEV1.0は有意に減少した. 次に72例を含め計93例について, 肺野CT所見の検討を行った. 肺野CT%(1-E) 値は, 胸部X線上, 正常群, 炎症性変化群に比し, 気腫性変化群において有意に低下し, FEV1.0, FEV1.0%, V50/V25との間に正の相関を認めた. 従来, 毒ガス傷害による慢性気管支炎の特徴は, 炎症の優位性と病像の多彩さにあるとされてきたが, 今回の結果から, 長期生存例における増悪群の特徴は, 気腫性変化に伴う閉塞性換気障害の進行にあると考えられた.
著者
鈴木 信哉 中林 和彦 大河内 啓史 畑田 淳一 川口 真平 酒井 正雄 佐々木 徳久 伊藤 敦之
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.61-66, 1997-01-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
19

閉鎖環境の条件が厳しい潜水艦において感染性が低い結核患者の周囲の乗員に結核感染が疑われた例を経験した. 本症例は艦艇の環境と感染性及びその対策を考える上で貴重な症例と考えられたので, 考察を加えて報告した. 症例は35歳男性の潜水艦乗員. 定期健康診断の間接胸部X線で異常陰影を指摘され精査した. 咳嗽なく喀痰塗抹陰性であったが,胃液検査にて塗抹陽性であった. 定期外集団検診時のツベルクリン皮内反応 (ツ反) では強陽性者が, 発見2ヵ月のツ反では陽転者が発生源の周囲に多くみられた. 発生源と離れた場所に居住し接触があまりない乗員にも感染が疑われたので, 閉鎖循環方式の空調が関与した可能性も示唆された. 閉鎖環境における結核発生例に対しては環境の的確な把握が必要であり, 化学予防は積極的に行うべきで環境の除染には薬品による消毒よりも換気及び紫外線照射が有効であり, 艦艇には防疫対策として標準装備されることが推奨される.
著者
久保 恵嗣 小林 俊夫 福島 雅夫 芝本 利重 酒井 秋男 上田 五雨
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.26, no.8, pp.825-832, 1988

肺水腫における熱とインドシアニン・グリーン (ICG) 色素を用いた二重指示薬希釈法による血管外肺水分量測定の有用性を検討するために, 肺リンパ瘻を作製した麻酔下緬羊を用い, 本法による血管外肺水分量 extravascular lung thermal volume (EVLTV) と, 左房圧上昇 (IP, n=5), Escherichia coli エンドトキシン注入 (ETX, n=5) および肺微小空気塞栓 (Air, n=4) 時の肺循環および肺リンパ動態とを比較検討した. また, 肺リンパ液中のICG濃度を測定した. IP群では, 左房圧 (Pla) 10mmHg上昇に伴い肺動脈圧 (Ppa) も上昇し, 肺リンパ流量 (Qlym) は有意に増加した. 肺リンパと血漿との蛋白濃度比 (L/P) は有意に減少した. EVLTVは有意に増加した. ETX 1μg/kg, iv, 投与3~5時間後, Qlym およびL/Pは有意に増加したが, EVLTVは変化なかった. PpaとPlaは変化なかった. Air群では, 肺動脈主幹部に挿入した細いチューブ (内径0.3mm) より1.2ml/minの空気を3時間にわたり注入した. Ppaは空気注入中有意に増加したが, 注入終了後すみやかに前値に復した. Plaは変化なかった. Qlymは空気注入後より増加し, 注入終了後もその増加は持続した. L/Pは注入終了後軽度増加した. EVLTVは空気注入中著明に減少し, 注入終了後有意に増加した. 肺リンパ液中のICG濃度はETX群で著明に増加したが, 他の2群では変化なかった. 以上より, EVLTVはエンドトキシンおよび肺塞栓存在時の肺水腫の存在の可能性を過小評価する. また肺微小空気塞栓による肺血管透過性の機序は, エンドトキシン肺傷害のそれとは異なることを示唆するものと思われる.
著者
大西 隆行 藤田 次郎 池田 和真 泰 ゆうき 山地 康文 塩谷 泰一 高原 二郎 桑原 宏子 佐藤 明 根ヶ山 清 宇多 弘次 入野 昭三
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.365-371, 1991-03-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
20

症例1は70歳男性, 肺小細胞癌に対する化学療法後, 両肺にびまん性斑状陰影が出現. 症例2は49歳男性, 悪性リンパ腫に対する化学療法後, 右肺に巨大結節影が出現. 両例とも抗生物質投与にかかわらず陰影は増悪し, 呼吸不全にて死亡した. 剖検材料より得られた浸出液の培養にて Trichosporon beigelii が検出された. Trichosporon beigelii による呼吸器感染症は本邦では稀と考えられたのでここに報告する.
著者
鈴木 幹三 岸本 明比古 山本 俊幸 足立 暁 山本 和英 白井 智之
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.24, no.10, pp.1078-1082, 1986-10-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
18

剖検で確認した高齢者肺炎102例を臨床病理学的に検討した. 60歳以上の剖検180例中102例 (57%) に肺炎が認められ, このうち53例 (52%) は肺炎が直接死因となった. 基礎疾患は脳血管障害後遺症, 心疾患が大半を占めた. 病理学的な肺炎病巣の拡がりは肺炎死因率と正の相関を示した. 肺炎は両下葉および右上葉に好発し, 病理学的に炎症病変は巣状分布を示す例が最も多く, これらのなかに沈降性肺炎, 嚥下性肺炎の関与する例がみられた. 大葉性肺炎, 嚥下性肺炎, 肺化膿症は直接死因となる頻度が高く, 肺うっ血水腫は49%にみられた. 病変発現部位では, 肺胞性肺炎が70%を占め, 混合型肺炎は10%であった.
著者
桶谷 典弘 斉藤 博之 江部 達夫
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.34, no.9, pp.983-988, 1996-09-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
20
被引用文献数
1

半夏瀉心湯による薬剤性肺臓炎の1例を報告した. 症例は72歳の女性で, 口内炎の治療のため半夏瀉心湯と白虎加人参湯を内服したところ, 8ヵ月後に労作時息切れと胸部X線写真上びまん性の斑状影が出現し, 間質性肺炎の疑いで入院した. 薬剤性肺臓炎を疑い, 内服薬を中止したところ, 臨床症状, 胸部X線写真の改善を認めた. 気管支肺胞洗浄の検査では, リンパ球の増加とCD4/CD8比の低下を認め, 肺生検の組織像では, 細気管支周辺および肺胞壁に, リンパ球を主とする細胞浸潤を認めた. 白血球遊走阻止試験では, 半夏瀉心湯に対し陽性を示し, 半夏瀉心湯による薬剤性肺臓炎と思われた. 当薬剤による薬剤性間質性肺炎の報告は, 本邦で第1例目と思われる.
著者
手丸 理恵 山下 直宏 松井 祥子 大田 亨 川崎 聡 小林 正
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.32, no.5, pp.485-490, 1994-05-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
11

柴朴湯による薬剤性肺臓炎の1症例を報告した. 症例は60歳の女性で, 平成4年10月12日外来にて柴朴湯を投与され一包内服したところ, 約2時間後に悪寒, 呼吸困難が出現したため, 翌10月13日外来を受診, 著明な低酸素血症と胸部X線写真上両肺野にすりガラス様陰影を認めたため, 急性間質性肺炎を疑い, ステロイドパルス療法を施行し軽快した. その後, 成分が柴朴湯と近似した煎じ薬を3日間服用したところ, 再び発熱・呼吸困難が出現し, 胸部X線写真上も両肺野にすりガラス様陰影を認めた. 再びステロイドパルス療法を施行し軽快した. 薬剤によるリンパ球刺激試験および皮膚貼布試験では, 柴朴湯に対して陽性を示し, 経過とあわせ, 柴朴湯による薬剤性肺臓炎と診断した.
著者
閔 庚〓 河合 正行 田本 敦子 茂在 敏司 内田 英一
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.25, no.7, pp.722-730, 1987-07-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
18

肺の構成単位としての肺小葉の肺内における配置の様式を肺小葉の多面体としての性質から検討した. 76歳女性の剖検右肺と38歳男性の剖検左肺とを伸展固定し, 肺表面および肺割面における小葉の境界を点と線と面の集合と見なしてそれらの幾何学的性質を検討した. 肺小葉多面体は,頂点に3本の稜線があつまり, それぞれが3~9辺形を呈する面によって囲まれた多面体を呈していた. 辺の長さは平均5.7mm, 5.0mmで, 形状パラメータ m=3.07, 2.38, 尺度パラメータη=6.1mm, 5.3mmの Weibull 分布をなしていた. これを参考に5mmを単位として胸膜上の任意の点より半径5mm (つまり1単位) から20mm (つまり8単位) の同心円を描き, その円と交じわる小葉多面体数を検討したところ, 10mm (2単位) ごとにほぼ10個ずつ増え均等配列と考えられた. これらの性質は Bernal が多数の剛体球のランダム最密充填モデルで検討した液体分子の周りに作った Voronoi 多面体の性質と同じであった. 以上より小葉多面体を Voronoi 多面体とみなすと肺は液体分子の配置と同じ非結晶型格子に小葉構造を配置したものと考えられ, 気管支, 血管枝は非結晶格子の逆格子である小葉多面体 (Voronoi 多面体) の稜線網に配置された二分岐樹構造であると見ることができる. これを新たな肺の構造モデルとして, 小葉モデルと呼ぶことを提唱した. このモデルから肺動脈樹の流体力学的性質の理論的導出を試みた.
著者
野村 将春 藤村 政樹 松田 保 北川 正信
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.72-76, 1997-01-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
16

症例は75歳男性, 以前より風邪症状があると市販の総合感冒薬 (パブロンS®) を常用していた. 入院6日前より風邪症状を認め, パブロンS®を内服していたが, なくなったので, 新しい総合感冒薬 (パブロンゴールド®)を内服した. その翌日より呼吸困難出現, 近医にて胸部レントゲン写真上, 両側にびまん性陰影を認めたため, 精査目的で当科に紹介された. 胸部CTでは両側に間質性陰影が認められた. 気管支肺胞洗浄液中には好中球, リンパ球などの炎症細胞が認められた. 経気管支肺生検では肥厚した肺胞壁や間質への単核球の浸潤が認められた. 末梢血のリンパ球を用いた薬剤リンパ球刺激試験ではパブロンゴールド®が陽性であった. 以上よりパブロンゴールド®による薬剤性肺炎と診断した. 入院後, ステロイドを投与したところ症状は速やかに改善したが陰影は遷延した.
著者
石崎 武志 服部 絢一 松田 保 宮保 進 越野 健 藤村 政樹 岡藤 和博 南 真司 金森 一紀 佐賀 務 舟田 久
出版者
社団法人 日本呼吸器学会
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.86-97, 1985

肺真菌感染症を合併した21例の血液疾患を臨床床状, 胸部X線写真, 免疫血清学の観点から検討した. 起炎真菌はアスペルギルス17例, ムコール1例, 不明3例であった. 経気管支肺生検法で2例, 臨床経過で6例 (剖検所見で確認) を生前診断し抗真菌療法を行った. 抗真菌療法中に血液学的改善の得られた6例は治癒し, 改善の得られなかった2例は死亡した. 臨床症状として, 全例に通常の抗生剤不応性の熱発, 咳 (15例), 喀痰 (10例), 血痰 (10例), 胸痛 (9例), ラ音 (16例) 呼吸困難 (9例) を認めた. 胸部X線写真上, 肺炎様陰影 (12例), パッチイな浸潤影 (3例), びまん性微細網状小結節状影 (3例) シスト様影 (1例) を認め, air crescent sign を5例, 胸膜肥厚を9例に認めた.全例流血中アスペルギルスフミガーツス抗原・抗体とも陰性であった. 全体として, 注意深い臨床症状の観察, 胸部X線写真と経気管支肺生検法などによって早期に真菌性肺炎を診断し, 的確な抗真菌療法を開始することが, この致死的感染症治癒への一歩となる.