著者
大坪 菜々美 海老原 修
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.69, pp.88_3, 2018

<p> 国民の誰しもが経験する身体検査や体力・運動能力テストにより暗黙裡に身につけた性向は、同じく誰もが参加する運動会で強化され、さまざまな男女別の区分けに敷衍される。この区分けへの疑義をもたず、アプリオリな制度としてジェンダーの論議の蚊帳の外にある。文部科学省「体力・運動能力調査報告書」のありようが論議されるセクハラやジェンダー・バイアスの源流にあたる可能性を秘めるかもしれず、そこで、本研究では平成27年度調査報告書にテスト項目ごとの加齢に伴う男女の差の変化傾向を手掛かりにこの論議の端緒を求めた。そこには長座体前屈を除くすべての種目で、男子が女子よりも高い水準を示しているという文言が記載され、女子は男子よりも体力・運動能力が低いと判定される。体力・運動能力テストはもとよりスポーツが男女別に運営・管理される理由が再生産される。しかし、積極的な運動能力における男女の差は、全体の平均値のみで求められる調査が多く、男女の差が存在するのかは定かでない。そこで、社会的・文化的な要因によって、男女の体力・運動能力に差が生じたと仮定し、体力・運動能力調査報告書を傍証に、その要因が何であるかを検証する。</p>