著者
大場 孝宏
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.106, no.5, pp.262-270, 2011 (Released:2016-11-15)
参考文献数
15

近年,食の多様化や嗜好の変化に伴い洋食に合うワインなどの消費が増加している反面,清酒の売り上げが伸び悩んでいる。清酒の復権の一つとして,清酒を敬遠しがちな若者や女性をターゲットに,酵母の造る有機酸特にリンゴ酸生成に着目し,リンゴ酸生成に特徴を有する酵母の開発と,その育種酵母を用いたアルコール濃度の低い低アルコール清酒(ソフト清酒)の商品化に成功した例を著者に解説いただいた。新しい商品の開発に携わる人には参考となり,是非一読を勧める次第である。
著者
大場 孝宏 末永 光 一松 時生 羽田野 雄大 満生 慎二 鈴木 正柯
出版者
日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.103, no.12, pp.949-953, 2008-12-15
被引用文献数
5

(1)K9系酵母使用の清酒もろみから親株より2〜3倍のリンゴ酸生産性を示す9株を取得した。アルコールの生成、ボーメの切れは親株と同等であり、9株ともに親株よりリンゴ酸を2〜3倍生産し、酢酸の生産量は半分以下である。(2)K901使用のもろみからは、高頻度でリンゴ酸高生産株が得られた。(3)得られたリンゴ酸高生産株について、シクロヘキシミドヘの耐性及びジメチルコハク酸への耐性、またマルトース資化性及びグリセロール資化性を調べた結果、既に報告されている菌株と異なる性質を持っていると考えられる。(4)分離したリンゴ酸高生産株すべてが親株より酢酸生産量が低下していることから、分離したリンゴ酸高生産株では酢酸から生成したアセチル-CoAとグリオキシル酸からリンゴ酸を生成する経路が活性化されるような変異がおきているため、リンゴ酸高生産性を獲得したのではないかと推察される。