著者
佐藤 光史 横田 和彦 内田 久則 吉田 宗紀 大宮 東生 大場 正己 阿曽 弘一 藤田 芳邦 矢島 義忠 真崎 義彦
出版者
北里大学
雑誌
北里医学 (ISSN:03855449)
巻号頁・発行日
vol.11, no.5, pp.493-498, 1981-10-31

30頭の雑種成犬を用い,血管吻合による同種膵移植実験を行なった。15頭のdonorとして用いるイヌに気管内挿管による全身麻酔を施行し,腹部正中切開で開腹した。門脈ならびに腹腔動脈,上腸間膜動脈を含め全膵を摘出し,門脈ならびに腹腔動脈より4℃乳酸加リンゲル液を用い膵を灌流した。15頭のrecipient犬も全身麻酔下で腹部正中切開で開腹し腹腔内に膵移植を施行した。donorの門脈をrecipientの下大静脈に,donorの腹腔動脈と上腸間膜動脈の起始部をrecipientの腎動脈分岐より下の大動脈に吻合した。空腸はRoux-en Y脚とし,主膵管と副膵管をそれぞれ空腸と吻合し,さらに胆嚢空腸吻合,胃空腸吻合を施行した。recipientの死因は膵炎,術後腹腔内出血,血管吻合部血栓による膵壊死が多かった。9日以上生存したイヌは6頭であり,免疫抑制剤を用いなかったrecipient 5頭の平均生存日数は12.8±3.4 (M±SD)日であった。血管吻合,膵管空腸吻合による膵移植実験は可能性があり,臨床応用にとっても良い方法であると考えている。