著者
大塚 恵子 木村 肇 松本 明博
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
ネットワークポリマー (ISSN:13420577)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.24-30, 2014-01-10 (Released:2014-04-23)
参考文献数
19
被引用文献数
3

ジアリルフタレート樹脂の接着性と靭性向上を目的として,ポリエチレングリコールユニットの異なるアクリル酸エステルをジアリルフタレート樹脂に配合し,ラジカル重合で同時に反応させることで相互侵入高分子網目構造(IPN)を形成させた。破壊靭性値,およびはく離接着強度とせん断接着強度は,アクリル酸エステルのポリエチレングリコールユニットの分子量や配合割合が大きくなるに従って大きく向上した。特にポリエチレングリコールユニットの分子量が大きい場合に,破壊靭性値と接着強度はジアリルフタレート樹脂と比較して2 倍以上の値を示した。これは,ポリエチレングリコールユニットの導入による柔軟性付与,および柔軟性付与により硬化過程で生じる接着剤層の内部応力が緩和されるためであると考えられ,動的粘弾性挙動と一致した。また,ポリエチレングリコールユニットの分子量の小さいアクリル酸エステルを配合した場合やポリエチレングリコールユニットの分子量の大きいアクリル酸エステルの配合割合が小さい場合には,ジアリルフタレート樹脂にアクリル酸エステルが相溶したIPN を形成した。一方,ポリエチレングリコールユニットの分子量の大きいアクリル酸エステルを20 wt% 以上配合した場合には,ジアリルフタレート樹脂架橋構造中にアクリル酸エステルが分子レベルで微分散した相分離型IPN を形成した。