著者
高野 俊幸
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
ネットワークポリマー (ISSN:13420577)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.213-223, 2010-09-10 (Released:2014-03-31)
参考文献数
78
被引用文献数
11

リグニンは,最も豊富に存在する天然の芳香族ポリマーであり,再生可能な資源として注目されている。しかしながら,リグニンは,紙パルプ製造プロセス,あるいはバイオエタノール製造プロセスの副生成物として得られているのみで,その利用は進んでいないのが現状である。本稿では,天然リグニン,および単離リグニンの化学構造,単離リグニンの利用例を紹介し,今後のリグニンの利用に向けての課題について述べる。

4 0 0 0 OA ラジカル重合

著者
上垣外 正己 佐藤 浩太郎
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
ネットワークポリマー (ISSN:13420577)
巻号頁・発行日
vol.30, no.5, pp.234-249, 2009 (Released:2013-03-29)
参考文献数
54
被引用文献数
3

ラジカル重合は,活性の高い中性のラジカル種を成長種とする重合反応であり,古くから学問的にもさまざまな研究がなされてきた。一方では,その高い反応性と汎用性,水などの極性物質に対する高い耐性から,工業的にも最も広く用いられている重合の一つである。さらに近年では,リビングラジカル重合の開発により,さまざまな精密高分子合成にも用いられるようになり,ラジカル重合は新たな展開を迎えている。本稿では,ラジカル重合性モノマー,ラジカル重合における開始,成長,停止,連鎖移動反応の 4 つの素反応,ラジカル共重合など古典的なラジカル重合における基礎的な内容から,リビングラジカル重合,さらにラジカル重合における立体構造制御にいたる最近の発展について概説する。
著者
伊藤 幹彌 枡田 吉弘 弓削田 泰弘 高坂 智也
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
ネットワークポリマー (ISSN:13420577)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.89-96, 2012-03-10 (Released:2014-04-22)
参考文献数
15
被引用文献数
1

近年,鉄道車両の軽量化,破損の防止等を目的として樹脂ガラスの鉄道車両への適用が拡大している。しかし,コストの問題から在来線には積極的に適用はされていないのが現状である。在来線へ樹脂ガラス適用を拡大する うえで,樹脂ガラスの低廉化は重要な課題である。そこで著者らは樹脂ガラスのメンテナンスに関わるコスト削減を目的として長寿命化の可能性を検討した。具体的には,樹脂ガラスとして代表的な材料であり新幹線用の窓ガラスとしても使用実績のあるポリカーボネート樹脂(PC)を主な対象として各種初期特性,耐候性劣化条件における特性変化を測定した。また,劣化評価の手法として色変化に着目し,同評価手法の樹脂ガラスへの適用性についても検討した。
著者
森 大輔
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
ネットワークポリマー (ISSN:13420577)
巻号頁・発行日
vol.35, no.6, pp.285-289, 2014-11-10 (Released:2015-01-21)
参考文献数
10

天然樹脂セラックは,体長0.6 mm 前後のラックカイガラムシがマメ科,クワ科など特定の樹木(母樹)の枝に分泌する樹枝状物質を精製したものである。セラックという言葉はShell(貝殻)+Lac(多数)が語源となっており,Shellac とはラックカイガラムシの分泌物が貝殻状になることに由来し,Lac はヒンズー語のLakh(10 万)及びサンスクリット語のLaksha(10 万)より由来した言葉で,ラックカイガラムシが木に何万と密集している状況を表したものである(Fig. 1)。ラックカイガラムシの生育条件は亜熱帯地方が 適し,タイ・インドが二大産地となっている。 また,産業革命以降,天然樹脂の中で唯一の熱硬化性樹脂として,木工塗料を始め,工業用材料などに幅広く使用されてきたが,石油化学の発達につれ,合成樹脂万能の風潮になり,セラックは天然物の安全性とセラックでしか得られない物性を利用した用途以外は次 セラックは紀元前2000 年頃迄遡ることができる。 第に需要が減少していった。しかし,近年の環境配慮や資源の有効利用の面,人体への安全面から,セラックが再び見直されるようになってきている。
著者
清水 兵衛 宮脇 孝久 村上 司 小畑 敬祐 山崎 聡
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
ネットワークポリマー (ISSN:13420577)
巻号頁・発行日
vol.32, no.6, pp.310-316, 2011-11-10 (Released:2014-04-22)
参考文献数
8

芳香脂肪族の構造を有するキシリレンジイソシアネート(XDI)の特性及びその誘導体であるXDI-トリメチロールプロパン(TMP)アダクト体の塗料用硬化剤としての性質を調査した。XDI は,イソシアネート基と芳香環がメチレン基を介して結合した芳香脂肪族のポリイソシアネートであり,芳香族および脂肪・脂環族ポリイソシアネートとは異なった性質を示した。この特徴ある構造に基づく性質を活かして,塗料,接着剤等への用途展開が期待できる。
著者
宮腰 哲雄 陸 榕 石村 敬久 本多 貴之
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
ネットワークポリマー (ISSN:13420577)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.224-232, 2010-09-10 (Released:2014-03-31)
参考文献数
27
被引用文献数
2

漆は古くから用いられてきた天然塗料で,その塗膜は艶があり優雅で美しいことから器物の装飾や華飾に用いられてきた。ウルシノキは日本や中国に生育しており,それから得られる樹液が漆液である。漆液の乾燥硬化は特殊で,高湿度下でラッカーゼ酵素の酸化作用で進行する。そのため漆液を塗装した器物を乾燥するには特別の設備が必要で,湿度や温度の管理が重要になる。そのことから漆液が自然乾燥する促進法についていろいろ研究されているがまだ本質的な改質に至っていない。本稿では,当研究室で行った漆の改質法としてくろめ返し漆やハイブリッド漆の開発について述べる。また金コロイドを用いたワインレッド様漆塗料の開発,ナノ漆の開発と,それを用いたインクジェットプリンターよる蒔絵製作法の開発など工業塗装への応用研究について概説する。
著者
野村 幸弘 佐藤 慎一 森 秀晴 遠藤 剛
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
ネットワークポリマー (ISSN:13420577)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.106-116, 2008-06-10 (Released:2012-08-20)
参考文献数
24

イソシアナート末端ポリウレタンと2級アミノ基を有するアルコキシシラン化合物 (シリル化剤) から, 新規なアルコキシシラン末端ポリウレタン (シリル化ポリウレタン) を合成した。シリル化剤は, 3-アミノプロピルトリアルコキシシランとアクリル酸エステルとの共役付加反応で合成した。得られたシリル化ポリウレタンの粘度は, アクリル酸エステルと反応させていない3-アミノプロピルトリアルコキシシランから誘導したシリル化ポリウレタンに対して低くなった。得られたシリル化ポリウレタンの硬化速度及び接着強さを比較したところ, シリル化剤のエステル部位のアルキル基が短いほど, 硬化が速いことが分かった。また, 引張せん断接着強さ及び接着性がシリル化率の影響を受け, シリル化率60%以上の条件では, シリル化率が低いほど接着性が高くなる傾向にあった。さらに, シリル化ポリウレタンの硬化触媒として, 三フッ化ホウ素-モノエチルアミン錯体 (BF3-MEA) とジブチルスズジメトキシド (DBTDM) の性能比較を行った。その結果, DBTDMに比較して, BF3-MEAは触媒活性が高いこと及びシリル化ポリウレタン硬化物の熱安定性を低下させないことが分かった。以上のことから, シリル化ポリウレタンは湿気硬化型接着剤のベースポリマーとして, またBF3-MEAはシリル化ポリウレタンの効果的な硬化触媒として利用できることが分かった。
著者
石倉 慎一 奥出 芳隆
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
ネットワークポリマー (ISSN:13420577)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.149-158, 1996

最近工業用塗料に耐酸性雨性を付与することが必要となり, これをきっかけにして新しい架橋反応系を塗料に導入する開発が盛んになっている。また, この分野では非脱離型の架橋反応をする塗料への潜在的な要求があり, この開発も続けられている。技術的には2液型常温反応系の高い反応性に着目し, その反応性官能基や触媒をブロックしたりマスクすることで貯蔵時の安定性を確保して, 1液型としようとするものが多い。このような開発事例に関し解説する。
著者
津田 祥平 中川 佳織 大山 俊幸 高橋 昭雄 岡部 義昭 香川 博之 山田 真治 岡部 洋治
出版者
Japan Thermosetting Plastics Industry Association
雑誌
ネットワークポリマー (ISSN:13420577)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.75-83, 2010
被引用文献数
1

相分離変換システム法により,天然リグニンから精密な分子設計の下に誘導されるリグニン系新素材であるバイオマス由来リグノフェノールのエポキシ樹脂硬化剤への適用可能性を検討した。エポキシ樹脂としてビスフェノールA ジグリシジルエーテル(DGEBA),硬化剤としてリグノフェノール(LP),硬化促進剤として1- シアノエチル-2- エチル-4- メチルイミダゾール(2E4MZ-CN)を用い,エポキシ基と水酸基の当量比を1:0.9 とした系において,硬化物のガラス転移温度が198℃を示し,石油由来のフェノールノボラック(PN)を硬化剤とした硬化物を約60℃上回った。さらに5% 熱重量減少温度も373℃と熱的に安定であった。FT IR 測定において,910cm<sup>-1 </sup>のエポキシ基由来の吸収帯が消失していることから,LP の水酸基がDGEBA のエポキシ基と十分に反応していることが観察された。また硬化物の動的粘弾性試験(DVA)から,PN 硬化物と比較して,室温での貯蔵弾性率の上昇,および架橋密度の上昇が観察された。以上の結果より,リグノフェノールはエポキシ樹脂の硬化剤として適用可能であり,最大で49% のリグノフェノールを含むエポキシ樹脂硬化物が作製できることが示された。
著者
山田 哲弘
出版者
Japan Thermosetting Plastics Industry Association
雑誌
ネットワークポリマー (ISSN:13420577)
巻号頁・発行日
vol.30, no.6, pp.344-354, 2009

オリゴロイシン基を導入した両親媒性化合物を用い,その化合物が形成する超分子フィルムの物性を,加圧や熱処理によって向上させた事例を示した。この分子は,自己組織化してβ-シート構造を形成すると,隣り合うシートの間でロイシン側鎖の噛み合いが可能になる。そこで,気水界面に展開した分子を凝縮したり,油圧プレス機を用いてキセロゲルを力学的に加圧したりすると,β-シート同士を接着できることがわかった。この噛み合いは分子ジッパーの一種で,ここではロイシンファスナーと呼ぶことにする。ロイシンファスナーは,π-A 曲線に現れる一時的な表面圧の増加や,原子間力顕微鏡(AFM)による表面形態観察の結果から間接的に判断できるが,ロイシンファスナー形成が推測されるフィルムのMAIRS解析を行うと,メチル基の非対称伸縮振動に帰属される吸収帯(ν<sub>as</sub>CH<sub>3</sub>)の一部が 2955cm<sup>-1 </sup>付近から2985cm<sup>-1 </sup>にまでシフトすることがわかり,これが直接的な検出手段になることを明らかにした。また,ロイシンファスナーが形成されると引っ張り応力が増加し,ヘキサロイシン基を有する化合物で最大2.5MPaの応力が得られた。加圧によって向上する性質は引っ張り応力だけではなく,柔軟性の向上という点にもあらわれ,ロイシンファスナーが形成されたフィルムは折り曲げても割れることのない柔軟性を持つようになることもわかった。
著者
高橋 昭雄
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
ネットワークポリマー (ISSN:13420577)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.34-41, 2012-01-10 (Released:2014-04-22)
参考文献数
26
被引用文献数
4

省エネやCO2 排出量の削減を目的に,自動車,電車,産業機器類の電動化と電子制御化による効率向上が進 められている。このため半導体製品の高機能化と高電力密度化が求められ,半導体素子の発熱量は増加している。特に,ハイブリッド自動車(HEV)や電気自動車(EV)の出現とともにエレクトロニクス化が急速に進む自動車はFig. 1 に示すように,100 個に達する電子制御部品(ECU)が搭載されている。さらに,MEMS 技術が応用されたほぼ同数のセンサも使用されている。Fig. 2 に示すようにパワー密度の向上に伴 い電子制御系,電力制御系共に,高温での過酷な環境に長期間曝される。この環境に耐えて,デバイスを保護するための性能がこれら電子部品の封止材料および配線基板材料に必要となっている。また,数百アンペアに達する大電流が流れるパワーデバイスも使用されるため,200℃付近の高温に耐える,これまでにない長期耐熱性も要求される1),2)。エレクトロニクス実装の主体をなす半導体封止材やプリント配線基板材料には,エポキシ樹脂が使用され,耐熱性の点から改良が進められてきた。本論では,HEV,EV を対象としたパワーデバイスを実装するための高分子材料の現状と将来方向について研究状況も含めて総説する。
著者
永田 員也 真田 和昭
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
ネットワークポリマー (ISSN:13420577)
巻号頁・発行日
vol.36, no.6, pp.299-308, 2015-11-10 (Released:2016-01-07)
参考文献数
24
被引用文献数
1

フィラーの利用分野は多岐わたり,技術体系も複雑であることから,本稿ではトリックスポリマーをゴムや熱硬化性樹脂などの架ポリマーに焦点を当て,コンポジットの材料設計にいてフィラーの視点から詳しく紹介したい。
著者
岡田 耕治 渡邉 洋輔 齊藤 梓 川上 勝 古川 英光
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
ネットワークポリマー (ISSN:13420577)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.81-87, 2016-03-10 (Released:2016-05-27)
参考文献数
16
被引用文献数
1

3D プリンターが,「材料に合わせた方式でユーザーが設計した通りの構造物を造形する新たなツール」として注目され始めてからはや数年。この3D プリンターブームは,熱溶解積層法の特許失効による開発コストの低減,3D ソフトウェアのフリー化,インターネットによる情報の共有化が背景にあり,いまや個人レベルでのモノづくりを可能にした。一方,全く別の経緯で同時期に,著者らは3D ゲルプリンターを開発に着手しており,数百 μm オーダーで柔らかくて潤いのあるゲルの三次元造形に成功している。本稿では,従来の3D プリンターで使 用される樹脂や金属,セラミックなどドライマテリアルにはないゲルの優位性と,その特徴を生かしたゲル造形物の将来性,開発の経緯の一つである高強度ゲルの登場を述べながら,実際の造形方法・造形例について紹介する。既存の3D プリンターによるモノづくり革命をさらに加速するツールの一つとして,3D ゲルプリンターが活躍する日は近い。
著者
松好 弘明 川崎 真一 山田 和志 西村 寛之
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
ネットワークポリマー (ISSN:13420577)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.29-37, 2015-01-20 (Released:2015-03-17)
参考文献数
14

低温焼成フッ素樹脂塗料を用いて,焼成温度を変えたコーティング膜を調製し,コーティング膜の物性と耐摩耗性を測定し,考察した。コーティング膜の焼成温度が高いほど鉛筆硬度,非粘着性,耐摩耗性が良好であった。 ATR-FTIR とESCA にて耐摩耗試験における摺動部と未摺動部のコーティング膜を分析した結果,コーティング膜の摺動部ではフッ素樹脂の減少が確認された。
著者
大野 大典
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
ネットワークポリマー (ISSN:13420577)
巻号頁・発行日
vol.38, no.6, pp.277-284, 2017-11-20 (Released:2017-12-27)
参考文献数
24
被引用文献数
1

近年,電子機器の高性能化にともない,用いられる部品・部材に対しても従来よりも高い性能が求められている。電子部品に用いられる樹脂に対しては,鉛リフロー半田に対応できる高耐熱性,高速情報通信における低損失のための低誘電特性,環境問題への対応からノンハロゲンでの難燃性,実装時の信頼性向上のための低熱膨張性,環境からの吸湿による不具合や特性変化を小さくするための低吸水性,といった種々の特性を向上させることが求められており,これらの要求に対応するために各種機能性熱硬化性樹脂の開発が進められている。本稿では,高耐熱性と低誘電特性を併せ持つ樹脂の開発動向,高耐熱性と難燃性を併せ持つ樹脂の開発動向について紹介する。
著者
平田 靖
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
ネットワークポリマー (ISSN:13420577)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.242-249, 2012-09-10 (Released:2014-04-23)
参考文献数
15
被引用文献数
1

低燃費タイヤは,汎用タイヤ対比一本当たり約57kg のCO2 削減が可能となる。CO2 削減に有効な低燃費タイヤの進歩を支える代表的な技術としてシリカ配合がある。シリカ配合の特長は,背反性能である「転がり抵抗」と「ウェットスキッド抵抗」の両方を改良できることである。その特長を発揮するためには,シリカを充分に分散させる必要があり,さまざまな方法が開発されてきた。一般的に使用されるシランカップリング剤に加えて,更なる分散や補強の改良を目指した分散改良剤やシリカ用ポリマーの分子設計が行われ,大幅な改良効果が達成されている。一方,近年発達著しい分析技術と計算科学の導入によるナノスケールでの構造解析や物性予測技術も進んでおり,ナノスケールでの階層構造の定量化やエネルギーロスの発生機構が解明されつつある。このようなシリカ配合用原材料の分子設計とナノ解析技術を活用して,「転がり抵抗」と「ウェットグリップ性能」を最高レベルで両立化させたタイヤが開発され,すでに市販されている。
著者
藤田 健弘 山子 茂
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
ネットワークポリマー (ISSN:13420577)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.4-13, 2017-01-10 (Released:2017-06-14)
参考文献数
81

リビングラジカル重合(LRP)はラジカル重合において分子量と分子量分布,およびブロック共重合体を通じてモノマー配列を制御する合成法である。1993 年のGeroges らの報告以来,新しい方法の開発と高分子材料への応用が広がってきている。本稿では,LRP の鍵である休止種の活性化に焦点を絞り,最近の二つの進歩について紹介する。一つは,光を用いる休止種の活性化である。これにより,生成ポリマーの構造の制御の向上や,触媒の低減化などが可能になってきている。もう一つは非共役モノマーのLRP である。非共役モノマーの成長末端ラジカルは共役モノマーの末端に比べて不安定であり,休止種の活性化が難しいため,その進展は限られていた。しかし,重合系をうまく選択することで,さまざまな非共役モノマーがLRP に利用できるようになってきている。これらの進展により,LRP の可能性がさらに広がってきている。