- 著者
-
大塚 敏子
荒木田 美香子
三上 洋
- 出版者
- 日本公衆衛生学会
- 雑誌
- 日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
- 巻号頁・発行日
- vol.57, no.5, pp.366-380, 2010 (Released:2014-06-12)
- 参考文献数
- 56
目的 本研究は,学校教育における効果的な喫煙防止教育を検討するため,高校生を対象に現在の喫煙行動と将来の喫煙意思から将来喫煙者となるリスクを 3 群に分け,喫煙に対する認識,主観的規範,禁煙勧奨意欲など喫煙に関連する要因の特徴の違いを分析することを目的とした。方法 調査は便宜的に抽出された近畿 3 府県の 4 高等学校 1 年生747人(男子311人,女子436人)を対象とした。質問項目は,性別,喫煙行動,将来の喫煙意思,喫煙の勧めを断る自信,喫煙に関する知識,喫煙に対する認識,主観的規範意識,自尊感情,周囲の喫煙状況および禁煙勧奨意欲である。喫煙行動のリスク状況を把握するため現在および過去の喫煙行動と将来の喫煙意思により対象者を 3 群に分類し,各項目の得点の群間による差の検定を χ2 検定,一元配置分散分析および多重比較を用いて行った。結果 各質問項目の平均値は,ほとんどの項目でリスクが高い群ほど,喫煙を断る自信がない,喫煙に対する美化や効用を信じる気持ちが強い,主観的規範意識が低い,周囲に禁煙をすすめる意欲が低いというように好ましくない状況を示した。また,自尊感情以外のすべての項目で女子に比べて男子の方が好ましくないという傾向だった。さらに自尊感情以外の項目で低リスク群と高リスク群,低リスク群と中リスク群の間に有意な差がみられた一方,喫煙に関する知識と禁煙勧奨意欲の項目で中リスク群と高リスク群間に有意な差がなかった。結論 喫煙行動の中リスク群は非喫煙者ではあるが,喫煙に関する知識や禁煙勧奨意欲などの項目で,既に喫煙を開始している高リスク群に近い傾向を持っていることが示唆された。高等学校で行われる集団的な喫煙防止教育ではこれら全体の 2 割を占める中リスク群の特徴を考慮した教育内容が必要であると考えられる。