著者
大塚 敏子 巽 あさみ
出版者
一般社団法人 日本公衆衛生看護学会
雑誌
日本公衆衛生看護学会誌 (ISSN:21877122)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.219-229, 2016 (Released:2016-12-22)
参考文献数
27
被引用文献数
1

目的:発達上“気になる子ども”をもつ保護者への保育士の支援経験を明らかにする.方法:“気になる子ども”の保護者への支援経験がある保育士12名に対し半構造化面接を行った.研究方法は質的帰納的研究方法を用いた.結果:“気になる子ども”を持つ保護者への保育士の支援の実態として【核心を伝える下準備としての基本的な関係づくり】,【方法や時期を見極めた上での核心の伝達】,【保護者の気持ちに配慮した専門的支援活用のための支援】,【情報共有や助言による保育士自身の安心感】,【期待した反応が得られない保護者への強い困難感】の5つのコアカテゴリが抽出された.考察:保育士は,保育実践の場を持ち,日々保護者とも接点があるという強みを活かして保護者との関係を深めながら子どもの発達への気づきの促しや専門的支援の勧奨を行っていた.一方,拒否的反応や困り感のない保護者に対しては強い困難感を抱いていることが明らかとなった.
著者
大塚 敏子 荒木田 美香子 三上 洋
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.366-380, 2010 (Released:2014-06-12)
参考文献数
56

目的 本研究は,学校教育における効果的な喫煙防止教育を検討するため,高校生を対象に現在の喫煙行動と将来の喫煙意思から将来喫煙者となるリスクを 3 群に分け,喫煙に対する認識,主観的規範,禁煙勧奨意欲など喫煙に関連する要因の特徴の違いを分析することを目的とした。方法 調査は便宜的に抽出された近畿 3 府県の 4 高等学校 1 年生747人(男子311人,女子436人)を対象とした。質問項目は,性別,喫煙行動,将来の喫煙意思,喫煙の勧めを断る自信,喫煙に関する知識,喫煙に対する認識,主観的規範意識,自尊感情,周囲の喫煙状況および禁煙勧奨意欲である。喫煙行動のリスク状況を把握するため現在および過去の喫煙行動と将来の喫煙意思により対象者を 3 群に分類し,各項目の得点の群間による差の検定を χ2 検定,一元配置分散分析および多重比較を用いて行った。結果 各質問項目の平均値は,ほとんどの項目でリスクが高い群ほど,喫煙を断る自信がない,喫煙に対する美化や効用を信じる気持ちが強い,主観的規範意識が低い,周囲に禁煙をすすめる意欲が低いというように好ましくない状況を示した。また,自尊感情以外のすべての項目で女子に比べて男子の方が好ましくないという傾向だった。さらに自尊感情以外の項目で低リスク群と高リスク群,低リスク群と中リスク群の間に有意な差がみられた一方,喫煙に関する知識と禁煙勧奨意欲の項目で中リスク群と高リスク群間に有意な差がなかった。結論 喫煙行動の中リスク群は非喫煙者ではあるが,喫煙に関する知識や禁煙勧奨意欲などの項目で,既に喫煙を開始している高リスク群に近い傾向を持っていることが示唆された。高等学校で行われる集団的な喫煙防止教育ではこれら全体の 2 割を占める中リスク群の特徴を考慮した教育内容が必要であると考えられる。