著者
太田 勝巳 細木 高志 松本 献 大宅 政英 伊藤 憲弘 稲葉 久仁雄
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.753-759, 1997-03-01
被引用文献数
8 15

定植後から収穫終了まで園試処方標準濃度液で水耕栽培したミニトマトについて,完熟果実の裂果発生時刻と果実横径の日変化および植物体内の水分移動との関係を調査した.<BR>1.夏季に'サンチェリー'の完熟果実250果を対象として,1時間ごとに裂果発生の有無を調査した.その結果,裂果は早朝に多く発生し,とくに午前4時~6時には裂果したすべての果実の43%が裂果した.<BR>2.夏季には'サンチェリーエキストラ',秋季には'サンチェリーを供試して,完熟果実横径の日変化をレーザー式変位センサーを用いて測定した.その結果,両品種,両季節とも早朝(午前6時~8時)に果実横径が増加し,午前中には減少し,午後からふたたび増加した.果実横径の増加は裂果発生の直前か裂果発生直後に大きかった.<BR>3.'サンチェリーエキストラ'の植物体内の水分移動量を茎流センサーを用いて測定した結果,茎と葉柄においては昼間水分の流入が多く,夜間水分の流入は少なかった.果柄においては昼間に水分が果実から流出し,夜間から早朝にかけて果実へ流入していた.<BR>以上の結果から,夜間から早朝にかけて果実内に水分が移動することによって果実の膨張が引き起こされ,果皮が内圧に耐えられなくなり,その結果として裂果が発生していると推察される.