著者
太田 勝巳 森下 進也 須田 浩平 小林 伸雄 細木 高志
出版者
園藝學會
雑誌
園藝學會雜誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.66-68, 2004-01-15
参考文献数
10
被引用文献数
1 34

8種の花卉(トレニア,エキザカム,ベゴニア,グロキシニア,ロベリア,ミムラス,カルセオラリアおよびカンパニュラ)において1.0%キトサンの土壌混和処理および水溶性無機肥料(1.0%キトサンと同量の窒素量となるよう施用)の施与を行い,栽培試験により成長量と開花について調査した.その結果,定植時(種により播種6週間後から13週間後)において,いずれの花卉においても1.0%キトサン土壌混和処理は対照区(肥料,キトサンとも無施与)および無機肥料区に比べて有意に高い成長量を示した.また,1番花開花日については,トレニア,エキザカム,ベゴニア,グロキシニア,ロベリアおよびミムラスにおいて,1.0%キトサン土壌混和処理は他の処理区に比べ,1番花の開花が有意に促進されたことが認められたが,カルセオラリアおよびカンパニュラにおいては促進効果はみられなかった.これはキトサンによるエリシター効果,土壌中微生物相の変化あるいは有機物として直接植物に吸収利用されることによると推察される.
著者
太田 勝巳 伊藤 憲弘 細木 高志 遠藤 浩司 梶川 修
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.407-412, 1993
被引用文献数
2 4

水耕ミニトマト, 'シュガーランプ', 'サンチェリー','ミニキャロル'および'アカコッコ'において培養液濃度が裂果発生に及ぼす影響を検討し, 裂果発生機構の解明を試みた。<BR>'アカコッコ'を除いた3品種においては培養液濃度が高いほど裂果発生が増加した。しかし, 'アカコッコ'は培養液濃度の影響を受けなかった。成熟果および裂果までの積算温度の差異はいつれの品種においても培養液濃度の影響がみられなかった。裂果発生が増加した要因は糖度の上昇, 果実の浸透ポテンシャルの低下および果肉の硬さの低下などによるものと考えられた。高濃度で栽培された果実ほど少ない水の注入量(果実体積当たりも同様) で人工裂開を生じた。<BR>'サンチェリー'は高培養液濃度で栽培された果実の果肉部分における浸透ポテンシャルが低下していた。吸水試験では高培養液濃度における果実ほど裂果が多く発生し, 果実の膨張率が高くなり, 吸水能力が高いことを示した。
著者
太田 勝巳 武田 栄治郎 吉岡 大輔 浅尾 俊樹 細木 高志
出版者
日本生物環境工学会
雑誌
植物工場学会誌 (ISSN:09186638)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.22-25, 1999-03-01 (Released:2011-03-02)
参考文献数
8

ミニトマトと大型トマトを供試して, 高温期と低温期において水耕培養液濃度を変えて栽培することによって, 尻腐れ果発生の差異を比較するとともに, 尻腐れ果発生初期の小果柄の離層部周辺の維管束の様子を観察した.1.ミニトマトでは低温期には尻腐れ果が全く発生しなかったが, 高温期には16~18%の発生が見られた.大型トマトでは低温期, 高温期いずれも高濃度培養液で栽培すると多くの尻腐れ果が発生した.2.ミニトマトの果実縦径当たりの果実生長量は栽培時の気温や培養液濃度によって変化しなかったが, 大型トマトのそれは高温期において高濃度より低濃度の培養液で栽培するとやや大きかった.3.尻腐れ果発生初期の小果柄の離層部周辺の維管束を正常果のそれと比較した.ミニトマトでは両者に大きな差異はみられなかったが, 大型トマトでは維管束数が減少し, かつ導管の径が小さくなっていた.
著者
太田 勝巳 鶴永 建治 細木 高志
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.216-218, 1998-03-15
被引用文献数
4 3

定植後から収穫終了時まで園試処方標準濃度液で水耕栽培したミニトマト'サンチェリーエキストラ'において, 夜間(午前1時&acd;午前5時)光照射した場合, 裂果の発生が制御可能かどうか検討した.裂果発生率は対照区では約10%であった.強光照射区(81.1μmol・s^<-1>・m^<-2> PAR)においては4%となったが, 弱光照射区(8.1μmol・s^<-1>・m^<-2> PAR)においては約8.5%であり, 対照区とほぼ同程度であった.強光照射区では午前4時における気孔の拡散抵抗は低下した.果柄の水分移動速度は強光照射処理時間中に低下し負の値を示したが, 一方, 葉柄の水分移動速度は正の値をとり, 水分が流入していることを示した.午前4時における強光照射区の葉の水ポテンシャルは対照区に比べ低下した.以上の結果より, 夜間に強光を照射した場合, 葉からの蒸散が生じることによって植物体内から水分が減少し, 果実への水分流入が抑制された結果, 裂果の発生が低減したものと考えられる.
著者
太田 勝巳 細木 高志 松本 献 大宅 政英 伊藤 憲弘 稲葉 久仁雄
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.753-759, 1997-03-01
被引用文献数
8 15

定植後から収穫終了まで園試処方標準濃度液で水耕栽培したミニトマトについて,完熟果実の裂果発生時刻と果実横径の日変化および植物体内の水分移動との関係を調査した.<BR>1.夏季に'サンチェリー'の完熟果実250果を対象として,1時間ごとに裂果発生の有無を調査した.その結果,裂果は早朝に多く発生し,とくに午前4時~6時には裂果したすべての果実の43%が裂果した.<BR>2.夏季には'サンチェリーエキストラ',秋季には'サンチェリーを供試して,完熟果実横径の日変化をレーザー式変位センサーを用いて測定した.その結果,両品種,両季節とも早朝(午前6時~8時)に果実横径が増加し,午前中には減少し,午後からふたたび増加した.果実横径の増加は裂果発生の直前か裂果発生直後に大きかった.<BR>3.'サンチェリーエキストラ'の植物体内の水分移動量を茎流センサーを用いて測定した結果,茎と葉柄においては昼間水分の流入が多く,夜間水分の流入は少なかった.果柄においては昼間に水分が果実から流出し,夜間から早朝にかけて果実へ流入していた.<BR>以上の結果から,夜間から早朝にかけて果実内に水分が移動することによって果実の膨張が引き起こされ,果皮が内圧に耐えられなくなり,その結果として裂果が発生していると推察される.
著者
細木 高志 木村 大輔 長谷川 隆一 長廻 智美 西本 香織 太田 勝巳 杉山 万里 春木 和久
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.393-400, 1997-09-15
被引用文献数
5 5

RAPD法により14のボタン (<I>Paeonia suffruticosa</I>)品種, キボタン (<I>P. lutea</I>) およびシャクヤク (<I>P. lac-tiflora</I>) 品種および種間交雑5品種の識別を試みた.40種の10merのプライマーを試験した結果, 11種で多型マーカーとして有効な108本のDNAバンドを増幅した. これらのマーカーにより21種•品種が区別でき相互間の類似値が求められた.<BR>その結果, ボタン品種はシャクヤク品種やキボタンと明らかに区別できた. またボタンとキボタンとの種間交雑品種である'金閣', '金鶏', '金晃'およびシャクヤク×'金晃'の'オリエンタルゴールド'の類似値はボタン品種との中間の値を示した. ボタン品種の内, 江戸時代に静岡県から島根県に導入された獅子頭は, 明治時代に大阪府を起源とする他の品種と比べて類似値が低かった. 親子関係にあるボタン品種は両親または片親と高い類似値を示した. RAPDによる品種の類似関係は形態による分類と部分的に一致したが, 花弁のアントシアニジンによる分類とは一致しなかった.