- 著者
-
大宮 美智枝
落合 優
- 出版者
- 横浜国立大学
- 雑誌
- 横浜国立大学教育人間科学部紀要. I, 教育科学 (ISSN:13444611)
- 巻号頁・発行日
- vol.7, pp.1-14, 2005-02-28
本研究は、学校教育における「いのちの教育」の有効性とその実践方法を検討するものである。筆者が提唱する「いのちの教育」とは、人とのかかわりの中から、かかわりを肯定的に捉えライフスキルを養う健康教育をさす。第一報では、高校生の対人認知の実情を捉えるため「高校生のかかわり尺度」を開発した。Rosenberg の自尊感情尺度から「高校生のかかわり尺度」が自尊感情の説明変数となることが検証でき、人とのかかわりから学習を進め自尊感情の高揚を目的とする「いのちを考える」授業は、その尺度を活用し有効性を明らかにすることができた。具体的には、自尊感情に関連しては家族との関係性が有意に高く、授業は家族のいのち・他者のいのちに焦点を置いて考えさせることの有効性が示された点である。しかし、実際の教育現場では、友人の評価を重要視する生徒の動向を目の当たりしている。高校生の友人の認知と家族とのかかわりの関係性、及び授業の方向性をさらに検討するため、追加調査を行い検討を行った。分析の結果、「高校生かかわりの尺度3」では、前回の調査を概ね支持する結果となり、内的整合性がみられる16因子 (74項目) が抽出できた。また、肯定的な自尊感情とは、家族のかかわりが決定要因となる点については前回の結果を支持した。今回の調査では、自分の存在観について否定的な者は、学内友人が否定的なかかわりとの関係性があることが示唆された。今後に展開する「いのちの学習」では、友人とのかかわりに注目しがちなかかわりを、広い視野で捉えられるような支援と、家族や周囲のいのちに焦点をあてたカリキュラムを充実させると共に、ライフスキルを獲得できるようなかかわり合いの場としての機能が重要であると考えられた。