著者
馬場 裕 安念 君枝 押木 康江 川井 美和
出版者
横浜国立大学
雑誌
横浜国立大学教育人間科学部紀要. I, 教育科学 (ISSN:13444611)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.125-137, 1998-11

教育実習や研究授業などで現職の教師と接していくにつれ, 小学校, 中学校, 高等学校の教師の性格にはそれぞれの特長があるのではないかと感じられた。例えば, 小学校教師の特長としては, 「子供好きである」とか「人間的な触れ合いを重視する」などが感じられたし, 中学校教師の特長としては, 「相手の悩みを理解できる」とか「教え方がうまい」などが感じられた。そこで本稿では, 小学校, 中学校, 高等学校の教師にはそれぞれの学校の教師としての性格の特長があるかどうかを調査し, 数量化II類を用いて分析した。小・中・高の3つの校種の現職教員に, 性格に関するアンケート調査を行い, 数量化II類により3つの群に分類した結果, 群の重心には明らかな差があり, さらに, かなり高い判別的中率を得ることができた。すなわち, 3つの校種の教師の性格には明らかな差があるという結論を得ることができた。また, 小・中・高の各校種の教職志望の学部学生に, 現職教師と同じアンケート調査を行い, 現職教員のデータから作った判別式を用いて判別した結果, 判別的中率はかなり低かった。このことから, 自分の性格に適した職種を選ぶのではなく, 教師になった後に仕事の内容や職場に適するように性格が変化していくのでないかと思われる。
著者
堀 典子
出版者
横浜国立大学
雑誌
横浜国立大学教育人間科学部紀要. I, 教育科学 (ISSN:13444611)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.115-131, 2005-02-28

Joseph Beuys who always stimulated artistic circles from the 1970s to his death over dozens of years, and was regarded as the most important artist in Germany was the student of Ewald Matare (1887-1965) at the Art Academy of Dusseldolf. The students of Matare include various engravers who are playing active roles in the contemporary German engraver's circle, such as Erwin Heerich, George Meistermann, Gunter Haese and Elma Hildebrandt. Matare himself won the Art Prize of Nordrhein Westfalen State in 1953, and was requested to send his works to large scale exhibitions overseas, and thus he was esteemed as an internationally excellent artist. He had also exhibited his works in the early Documenta of Cassel and so the roles he and his students have played in the contemporary fine arts of Germany is big. In this research, based on a careful study of the doctoral dissertation "Art Teaching Method of Ewald Matare" by Roland Meyer-Petzold, the author would like to describe how Matare's lesson was performed and why Matare's art education brought about such a great effect. In the above-mentioned study, the author tried to make a summary of the dissertation in Japanese. Last year, the summary was used as a text for the "art pedagogy lecture" in the graduate school and in a seminar for the forth year students in which the author tried to study desirable methods of fine art education.
著者
大宮 美智枝 落合 優
出版者
横浜国立大学
雑誌
横浜国立大学教育人間科学部紀要. I, 教育科学 (ISSN:13444611)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.1-14, 2005-02-28

本研究は、学校教育における「いのちの教育」の有効性とその実践方法を検討するものである。筆者が提唱する「いのちの教育」とは、人とのかかわりの中から、かかわりを肯定的に捉えライフスキルを養う健康教育をさす。第一報では、高校生の対人認知の実情を捉えるため「高校生のかかわり尺度」を開発した。Rosenberg の自尊感情尺度から「高校生のかかわり尺度」が自尊感情の説明変数となることが検証でき、人とのかかわりから学習を進め自尊感情の高揚を目的とする「いのちを考える」授業は、その尺度を活用し有効性を明らかにすることができた。具体的には、自尊感情に関連しては家族との関係性が有意に高く、授業は家族のいのち・他者のいのちに焦点を置いて考えさせることの有効性が示された点である。しかし、実際の教育現場では、友人の評価を重要視する生徒の動向を目の当たりしている。高校生の友人の認知と家族とのかかわりの関係性、及び授業の方向性をさらに検討するため、追加調査を行い検討を行った。分析の結果、「高校生かかわりの尺度3」では、前回の調査を概ね支持する結果となり、内的整合性がみられる16因子 (74項目) が抽出できた。また、肯定的な自尊感情とは、家族のかかわりが決定要因となる点については前回の結果を支持した。今回の調査では、自分の存在観について否定的な者は、学内友人が否定的なかかわりとの関係性があることが示唆された。今後に展開する「いのちの学習」では、友人とのかかわりに注目しがちなかかわりを、広い視野で捉えられるような支援と、家族や周囲のいのちに焦点をあてたカリキュラムを充実させると共に、ライフスキルを獲得できるようなかかわり合いの場としての機能が重要であると考えられた。