著者
大山 一夫 佐藤 博保
出版者
農林省九州農業試験場
雑誌
九州農業試験場報告 (ISSN:03760685)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.p333-351, 1981-03
被引用文献数
1

暖地型牧草の越冬性について,熊本県西合志町において,1974年より1979年にかけて試験した。なお,試験期間中の気温は,年間で最も低い1月の月平均最低気温が-2.0℃であり,6年間を通じての最低気温は-10.3℃であった。結果は次の通りである。1. 暖地型牧草の種,品種(系統)によって,越冬性が顕著に異なることが認められた。1)ブルーステム,ウィーピングクロリス,バーミューダグラス,ラブグラス類,ブルーパニック,スィッチグラス,ダリスグラス,バヒアグラス,ベチベルなどは殆んど全個体が越冬した。2)ウーリーフィンガーグラス,カラードギニアグラスの一部系統,ベージイグラスなども暖冬年にはよく越冬したが,寒冬年には越冬歩合が低下した。3)マカリカリグラス,コロンブスグラスなどもある程度越冬した。4)セタリア,スプレンディダおよびマメ科牧草のシルバーリーフデスモディウムなどは少ししか越冬しなかった。5)シグナルグラス,ローズグラス,ギニアグラス,グリーンパニックなどのイネ科牧草及び大部分のマメ科牧草は越冬しなかった。2. 越冬性と耐霜性の間には密接な関連が認められたが,一部に例外(ブルーパニックやジョンソングラスなど)もあった。3. 耐霜性ならびに越冬性と植物体本来の大きさとの間には,一定の関連がみられなかった。4. 越冬性は種のみでなく,品種・系統によっても異なり,ローズグラスでは,越冬歩合と日長反応の間に密接な関係が認められた。5. 冬期間,ビニール被覆を行うことにより,越冬歩合をある程度向上させることが可能であった。6. 越冬した牧草の早春における生育を比較すると,種(品種・系統)間で顕著な差異が認められた。
著者
上山 泰史 桂 真昭 松浦 正宏 大山 一夫 佐藤 信之助
出版者
農業技術研究機構九州沖縄農業研究センター
雑誌
九州沖縄農業研究センター報告 (ISSN:13469177)
巻号頁・発行日
no.39, pp.1-13, 2001-12

青刈り用エンバクの新品種「はえいぶき」は、暖地、温暖地で8月下旬~9月上旬に播種し年内収穫を育種目標に、秋季に安定して出穂する「Guelatao」を種子親、「ハヤテ」を花粉親として、個体選抜及び系統選抜を行う集団育種法によって育成され、1996年8月に「えん麦農林9号」として登録された。主な特性は次の通りである。秋の出穂日が「アキワセ」よりも3日、「ハヤテ」よりも10日早い極早生で、暖地では年内の収穫時までに乳熟期以降のステージに達する。収穫時の乾物率が高く、九州中部以北では予乾なしで、温暖な九州南部では乾物率の上昇が遅れるため若干の予乾処理で、ロールベールによる収穫・調製が可能である。乾物収量は「アキワセ」よりも高く、収量の安定性にも優れている。草丈は「アキワセ」よりも低く、茎数は多い。葉重割合が低く、草型は立型である。採種栽培での春の出穂及び種子の成熟期は「アキワセ」「ハヤテ」よりも早く、暖地で梅雨入り以前に採種できる。九州・沖縄から関東までの暖地・温暖地で利用でき、各地における播種及び収穫適期は、関東から瀬戸内海地域の暖地でそれぞれ8月下旬、12月上旬、九州北部で8月下旬、12月中旬、九州南部及び沿海部では9月上旬、1月中旬、沖縄で11月上旬、2月下旬である。冠さび病抵抗性や耐倒伏性が高くないので、これらの障害を避けるために適期播種及び収穫を行うことが重要である。播種量は青刈りエンバクの標準的な0.6~1.0kg/aとする。