著者
田中 豊人 高橋 省 大山 謙一 小縣 昭夫 中江 大
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本トキシコロジー学会学術年会 第38回日本トキシコロジー学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.20051, 2011 (Released:2011-08-11)

【目的】ネオニコチノイド系農薬の殺虫剤であるクロチアニジンについて行動発達毒性試験を行い、マウスの次世代の行動発達に及ぼす影響の有無について検討する。 【方法】クロチアニジンを混餌法によりCD1マウスに0(対照群)、0.003%、0.006%、0.012%となるように調製してマウスのF0世代の5週齢からF1世代の12週齢までの2世代にわたって投与して、マウスの行動発達に及ぼす影響について検討した。 【結果】F0世代の探査行動では、雄の平均移動時間・立ち上がり回数・立ち上がり時間が用量依存的に増加する傾向が見られた。F1世代の仔マウスの体重は授乳期の初期に用量依存的に増加した。また、授乳期間中の行動発達では雄仔マウスの7日齢時遊泳試験の頭角度が用量依存的に抑制された。さらに、雌仔マウスの7日齢時背地走性が用量依存的に抑制された。F1世代の探査行動については、雌仔マウスの立ち上がり回数が用量依存的に増加する傾向が見られた。さらに、F1世代の雄成体マウスの移動時間が用量依存的に増加する傾向が見られ、一回あたりの平均立ち上がり時間が中濃度投与群で短縮された。F1世代の自発行動にはクロチアニジンの投与の影響は見られなかった。 【まとめ】本実験においてクロチアニジンの継代投与により、次世代マウスの行動発達に対していくつかの影響が観察された。本実験で用いられたクロチアニジンの用量はADI値を基に算出された(0.006%がADI値の約100倍相当)ものであるが、実際の人の摂取量はADI値の1/25以下であるので現実的なクロチアニジンの摂取量では人に対して影響を及ぼさないものと思われる。