著者
大澤 絵里 秋山 有佳 篠原 亮次 尾島 俊之 今村 晴彦 朝倉 敬子 西脇 祐司 大岡 忠生 山縣 然太朗
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.67-75, 2019-02-15 (Released:2019-02-26)
参考文献数
26

目的 日本での乳幼児の予防接種は,個別接種化,種類や回数の増加により,接種スケジュールが複雑化している。本研究では,目的変数である乳幼児の適切な時期の予防接種行動と,かかりつけ医の有無,社会経済状態など(個人レベル要因)および小児科医師数など(地域レベル要因)の関連を明らかにする。方法 本研究は,「健やか親子21」最終評価の一環として,1歳6か月児健診時に保護者および市町村(特別区・政令市も含む,以下市町村)を対象に行われた調査,市町村別医師数などの既存調査のデータを用いた分析である。本研究で必要な変数がすべて揃った430市町村23,583人を分析対象とした。分析はBCG, DPT,麻疹の予防接種の適切な時期での接種を目的変数として,個人レベル変数(かかりつけ医の有無,社会経済的状況など)を投入したモデル1,地域レベル変数(市町村の小児科医師数など)をいれたモデル2,モデル2に市町村の取り組みに関する変数をいれたモデル3として,マルチレベル・ロジスティック回帰分析を行った。結果 88.3%の保護者が,適切な時期に乳幼児の予防接種行動をとっていた。かかりつけ医がいない(オッズ比[95%信頼区間],0.45[0.36-0.55]),第2子以降(第4子以降で0.23[0.19-0.28]等),母親の出産時年齢が29歳以下(19歳以下で0.17[0.13-0.24]等),母親が就労(常勤で0.52[0.47-0.58]等),経済状況が苦しい(大変苦しいで0.66[0.57-0.77]等)者では,適切な時期に予防接種行動をとる者が少なかった。地域レベルの要因では,市町村の小児科医師数四分位最大群(15歳未満人口1,000人対),15歳未満人口1,000人対の診療所数,予防接種率向上の取り組み,かかりつけ医確保の取り組みは,適切な時期の予防接種行動に関連していなかった。市町村の予防接種情報の利活用は,適切な時期の予防接種の完了と負の関連がみられた(0.84[0.73-0.96])。結論 乳幼児期にかかりつけ医をもたないこと,若年の母親,出生順位が遅いこと,経済的困難,母親の就労が,複数の予防接種の不十分な接種との関連要因であった。乳幼児の予防接種において,不十分な接種のリスクがある家庭への特別な配慮と,乳幼児がかかりつけ医をもつことができるような環境整備が必要である。