著者
斉藤 雅茂 近藤 克則 尾島 俊之 平井 寛 JAGES グループ
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.95-105, 2015 (Released:2015-06-12)
参考文献数
54
被引用文献数
4

目的 社会的孤立や孤立死の問題への関心は高い一方で,孤立状態の操作的定義に関する根拠は蓄積されていない。社会的孤立が健康の社会的決定要因の 1 つであることを考慮し,健康リスクが高まる交流の乏しさ(頻度)があるのかを明らかにすることを目的にした。方法 2003年10月に愛知県下 6 市町村における要介護認定を受けていない高齢者14,804人を対象にした AGES(Aichi Gerontological Evaluation Study,愛知老年学的評価研究)プロジェクトのデータの一部を用いた(回収率=50.4%)。性別・年齢が不明な人を除き,調査時点で歩行・入浴・排泄が自立であった12,085人について分析した。要介護認定・賦課データに基づいて,調査時点から2013年10月時点までの約10年間を追跡し,要介護状態(全認定および要介護 2 以上)への移行,認知症の発症と死亡状況を把握した。社会的孤立の指標には,別居家族・親族および友人と会う頻度と手紙・電話・メールなどで連絡を取り合う頻度を用いた。1 か月を4.3週と換算してすべての交流頻度を加算後,「月 1 回未満」から「毎日頻繁(週に 9 回以上)」群に分類した。結果 Cox 比例ハザードモデルの結果,調査時点での性別・年齢や同居者の有無,治療疾患の有無等を調整したうえでも,毎日頻繁群と比べて,月 1 回未満群では,1.37(95%CI:1.16–1.61)倍要介護 2 以上に,1.45(95%CI:1.21–1.74)倍認知症に,1.34(95%CI:1.16–1.55)倍早期死亡に至りやすいということが示された。月 1~週 1 回未満群でも同様に,いずれの健康指標とも有意な関連が認められたが,週 1 回以上の群では有意な関連は消失した。なお,調査後 1 年以内に従属変数のイベントが発生したケースを除外しても結果は大きく変わらなかった。同居者以外との交流頻度が月 1 回未満を孤立の基準とすると,高齢者の7.4%(男性で10.2%,女性で4.7%)が該当し,週 1 回未満を含めると15.8%(男性で21.2%,女性で10.6%)が該当した。結論 同居者以外との対面・非対面交流をあわせて週に 1 回未満という状態までがその後の要介護状態や認知症と関連し,月 1 回未満になると早期死亡とも密接に関連する交流の乏しさであることから,これらが社会的孤立の妥当な操作的定義であることが示唆された。
著者
中村 美詠子 尾島 俊之 野田 龍也 亀山 良子 福川 康之
出版者
浜松医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

フード・インセキュリティは物理的、社会的、経済的に食料アクセスが阻害された状態であり、近年、非伝染性疾患との関連が注目されている。本研究は日本におけるフード・インセキュリティの構成要素、該当状況、栄養状態、関連疾患について調査した。観察研究の結果 (1)多忙、遅いあるいは不規則な夕食等の時間的要因が主要な構成要素の一つであること、(2)日本人一般労働者や大学生に少なからず存在すること、(3)栄養摂取の乏しさやメンタルヘルスの低さに関連していることが明らかにされた。食環境対策推進においてはライフスタイルにおける時間的要素の変革が必要だろう。
著者
早坂 信哉 原岡 智子 尾島 俊之
出版者
一般社団法人 日本温泉気候物理医学会
雑誌
日本温泉気候物理医学会雑誌 (ISSN:00290343)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.112-118, 2016 (Released:2016-07-04)
参考文献数
20
被引用文献数
1

【背景・目的】介護保険によって入浴サービスが提供されているが,現在,高齢者にとって安全な入浴が可能か否かの具体的な判断基準・指針がなく,介護現場の入浴担当者は判断に困難を感じている.特に入浴前の体調確認は主に血圧測定,体温測定によって実施されていることから,本研究は,入浴前の血圧や体温と,入浴に関連した体調不良や事故の発生との関連について明らかにすることを目的とした.【方法】1.研究デザイン:症例対照研究(前向き調査による症例登録方式).2.調査対象:訪問入浴事業所として登録がある2,330か所の全事業所.3.調査方法:症例は入浴に関連した体調不良・事故の症例(以下,異常例と言う).対照は各事業所2例無作為抽出.調査期間は2012年6月~2013年5月までの1年間.4.解析方法:年齢,性別,障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度),要介護度,modified Rankin Scale,意識レベル,認知症高齢者の日常生活自立度,入浴前の血圧,入浴前の体温を単純比較した.その後,ロジスティック回帰分析を用いて,すべての体調不良・事故発生及び発熱,血圧上昇・低下を除いた体調不良・事故発生を目的変数に,その他の測定項目を説明変数とした単変量・多変量解析を実施した.【結果】異常例596件,対照1,511件を解析した.単純比較では異常例で体温が高かった.発熱,血圧上昇・低下を除いた体調不良・事故発生での多変量解析では,収縮期血圧は160~179mmHgでオッズ比(95%信頼区間)3.63(1.39-9.50),拡張期血圧は100~109mmHgで同14.71(1.31-165.77),体温は37.5~37.9℃で同16.47(3.30-82.40),38.0℃以上で同6.57(1.40-30.81)と有意な関連があった.【結論】高齢者における160/100mmHg以上の血圧,37.5℃以上の体温は入浴関連の体調不良・事故の危険因子である可能性がある.
著者
眞崎 直子 橋本 修二 川戸 美由紀 尾島 俊之 竹島 正 松原 みゆき 三徳 和子 尾形 由起子
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.164-169, 2018 (Released:2018-05-03)
参考文献数
23

目的 人口動態統計に基づく東日本大震災後の自殺死亡数を観察し,岩手県,宮城県と福島県(以下,3県と記す)の沿岸部の市町村と沿岸部以外の市町村での大震災後の自殺の超過死亡について,検討した。方法 基礎資料として,統計法第33条による人口動態統計の調査票情報から,2010年1月1日~2013年3月31日の死亡情報を利用した。死亡の定義としては,死亡年月日,死亡者の住所地市町村,性別,死亡時年齢,原死因コード(国際疾病分類第10回修正;ICD-10)とした。それ以外に,2009~2013年度の住民基本台帳人口と2010年の国勢調査人口を利用した。地域と期間別に自殺による死亡数を集計した。死亡者の住所地市町村を用い,3県の市町村およびそれ以外に区分し,沿岸部と沿岸部以外に分類した。期間としては,死亡年月日を用いて,東日本大震災の発生月(2011年3月)の1年前から2年後までの3年間とし,月に区分した。自殺は,ICD-10のX60~X84と定義した。自殺SMRは,地域と期間ごとに,3県以外の全国の同年同月の死亡率を標準死亡率として計算し,その有意性を近似的な検定方法で検定した。人口としては,2009~2012年度の住民基本台帳人口から線型内挿法で算定した。ただし,住民基本台帳人口では,公表資料の最終年齢階級が80歳以上のため,性別に80歳以上人口を2010年の国勢調査人口で80~84歳と85歳以上に比例按分した。結果 3県の沿岸部と沿岸部以外における東日本大震災前後の自殺SMRを算出した。震災後2年間(2011年3月~2013年2月)を通して,自殺SMRは沿岸部と沿岸部以外ともに増加傾向がなかった。3県において,震災前1年間に対する震災0~1年の自殺SMRの比は0.92,震災1~2年の自殺SMRの比は0.93であり,いずれも有意に低かった。3県の県別に沿岸部と沿岸部以外ごとにみると,震災前1年間に対する震災0~1年と1~2年の自殺SMRは0.73~1.07であり,福島県沿岸部の震災1~2年で0.73,宮城県の沿岸部で震災後1~2年で0.83および全体で0.90,3県全体の沿岸部以外について,震災1~2年で0.80,沿岸部以外で0.90,全体で震災0~1年,1~2年それぞれ0.92,0.93と有意に低く,一方,有意に高いものはなかった。結論 東日本大震災後の3県の自殺死亡について,震災から2年間には自殺死亡の増加がなかったと示唆された。今後は,中長期的に観察を継続していくことが大切であると考える。
著者
仲村 秀子 尾島 俊之 中村 美詠子 鈴木 孝太 山縣 然太朗 橋本 修二
出版者
東海公衆衛生学会
雑誌
東海公衆衛生雑誌 (ISSN:2187736X)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.71-75, 2013-07-20 (Released:2018-12-01)
参考文献数
13
被引用文献数
1

目的 2011年に発生した東日本大震災前後の岩手県・宮城県・福島県の出生率・男児出生割合・低出生体重児割合の変化を明らかにすることである。方法 2007年から2011年の人口動態統計を用いて,全国,岩手県,宮城県,福島県における各年の出生数・出生率,男児出生割合,低出生体重児数と割合の推移を,それぞれの変化率を用いて検討した。出生数・出生率は男女を合わせた総数を,低出生体重児数と割合は,総数と男女別の検討を行った。次に,2007年から2010年を合わせた出生率,男児出生割合,低出生体重児割合と2011年のものと比較し,χ2検定を行った(有意水準を5%)。結果 2007年から2011年にかけて全国,岩手県,宮城県,福島県の出生数と出生率は,概ね低下していた。2007年から2010年を合わせた出生率と2011年との比較では,全国,岩手県,宮城県,福島県いずれも2011年は有意に低下していた。男児出生割合は,2007年から2011年にかけて全国は緩やかに減少していた。岩手県は52.26%から50.44%に年々減少し,宮城県,福島県は50.78%から51.91%の間を増減しながら全体としては横ばいであった。2007年から2010年を合わせた男児出生割合と2011年との比較では全国と岩手県は有意に減少していた。低出生体重児割合は,2007年から2011年にかけて総数では,全国は安定していたが,岩手県・福島県は年によって増減しながら,ほぼ横ばいであった。宮城県は概ね上昇していた。男女別にみると,男児は2007年から2011年にかけて,全国は8.50%前後を推移したが,岩手県,宮城県,福島県は増減を繰り返し,ほぼ横ばいであった。福島県は他県と比較して増減の幅が大きかった。女児は全国では10.70%前後を推移したが,宮城県は概ね上昇していた。岩手県,福島県は増減を繰り返しながら横ばいであった。2007年~2010年を合わせた低出生体重児割合と2011年との比較では,宮城県の女児は10.02%から11.04%へと有意に増加し,福島県の男児は8.25%から7.56%へと有意に減少していた。結論 東日本大震災が起こった2011年の全国・岩手県・宮城県・福島県の出生率は2007年から2010年と比較して有意に低下し,男児出生割合は全国と岩手県で有意に減少していた。低出生体重児割合は,宮城県の女児で有意に増加し,福島県の男児で有意に減少していた。今後,より詳細な分析が必要である。
著者
赤堀 摩弥 藤浪 正子 川田 典子 佐藤 圭子 小嶋 由美 中村 美詠子 尾島 俊之
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.34-43, 2018

【目的】静岡県は他自治体と比較して脳血管疾患死亡率が高く,食塩摂取量も多い。そこで,脳血管疾患対策の1つとして,5年で5%の減塩を目指す「減塩55プログラム」に取り組むこととし,県民の食塩摂取状況の把握ができるチェック票を開発,減塩推進活動に活用することを目指した。<br>【方法】静岡県保健所栄養士のヒアリングによる質的データ,静岡県民102人を対象とした24時間蓄尿データより推定した食塩排泄量及び食物摂取頻度調査票(短縮版)データ等に基づいて,チェック票を開発,さらに,特に減塩をすすめたい働き盛り世代を対象としたリーフレット「ふじのくに お塩のとりかたチェック」を作成した。<br>【結果】チェック票合計点と推定食塩排泄量の間には,有意な正の相関(Pearson相関係数0.402)がみられた。チェック票より3段階にランク付けした場合,各群の平均推定食塩排泄量はおのおの 6.8 g,8.7 g,12.2 gであった。リーフレットは70,000部以上が希望のあった県内の健康保険組合,事業所,医療機関,県栄養士会,薬局,教育機関,保育所等に配布され,県内全ての市町,健康福祉センターで活用されている。<br>【結論】本チェック票は食塩摂取の簡易なスクリーニング・ツールとして使いやすいものとなったため,現在静岡県内の健康教室,イベント等さまざまな場面で活用されている。今後も本チェック票を活用し,静岡県における減塩対策を進めていく予定である。
著者
大澤 絵里 秋山 有佳 篠原 亮次 尾島 俊之 今村 晴彦 朝倉 敬子 西脇 祐司 大岡 忠生 山縣 然太朗
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.67-75, 2019-02-15 (Released:2019-02-26)
参考文献数
26

目的 日本での乳幼児の予防接種は,個別接種化,種類や回数の増加により,接種スケジュールが複雑化している。本研究では,目的変数である乳幼児の適切な時期の予防接種行動と,かかりつけ医の有無,社会経済状態など(個人レベル要因)および小児科医師数など(地域レベル要因)の関連を明らかにする。方法 本研究は,「健やか親子21」最終評価の一環として,1歳6か月児健診時に保護者および市町村(特別区・政令市も含む,以下市町村)を対象に行われた調査,市町村別医師数などの既存調査のデータを用いた分析である。本研究で必要な変数がすべて揃った430市町村23,583人を分析対象とした。分析はBCG, DPT,麻疹の予防接種の適切な時期での接種を目的変数として,個人レベル変数(かかりつけ医の有無,社会経済的状況など)を投入したモデル1,地域レベル変数(市町村の小児科医師数など)をいれたモデル2,モデル2に市町村の取り組みに関する変数をいれたモデル3として,マルチレベル・ロジスティック回帰分析を行った。結果 88.3%の保護者が,適切な時期に乳幼児の予防接種行動をとっていた。かかりつけ医がいない(オッズ比[95%信頼区間],0.45[0.36-0.55]),第2子以降(第4子以降で0.23[0.19-0.28]等),母親の出産時年齢が29歳以下(19歳以下で0.17[0.13-0.24]等),母親が就労(常勤で0.52[0.47-0.58]等),経済状況が苦しい(大変苦しいで0.66[0.57-0.77]等)者では,適切な時期に予防接種行動をとる者が少なかった。地域レベルの要因では,市町村の小児科医師数四分位最大群(15歳未満人口1,000人対),15歳未満人口1,000人対の診療所数,予防接種率向上の取り組み,かかりつけ医確保の取り組みは,適切な時期の予防接種行動に関連していなかった。市町村の予防接種情報の利活用は,適切な時期の予防接種の完了と負の関連がみられた(0.84[0.73-0.96])。結論 乳幼児期にかかりつけ医をもたないこと,若年の母親,出生順位が遅いこと,経済的困難,母親の就労が,複数の予防接種の不十分な接種との関連要因であった。乳幼児の予防接種において,不十分な接種のリスクがある家庭への特別な配慮と,乳幼児がかかりつけ医をもつことができるような環境整備が必要である。
著者
新村 洋未 若林 チヒロ 國澤 尚子 萱場 一則 三浦 宜彦 尾島 俊之 柳川 洋
出版者
Japanese Society of Public Health
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.170-176, 2008

<b>目的</b> 喫煙対策は健康維持増進を図る上で重要な項目での一つである。この研究の目的は健康日本21発表後10年間で目標達成を目指し地方計画を策定している全国の市町村の喫煙対策の目標設定状況と事業の実施状況を明らかにし,今後の市町村の喫煙対策事業実施の基礎資料を提供することである。<br/><b>方法</b> 2003年の全国調査において地方計画策定済みまたは策定予定と回答した1,446市町村のうち,2005年 6 月20日までに合併終了または合併予定の市町村を除いた953箇所に対し,郵送による質問紙調査を実施した。<br/><b>結果</b> 回答が得られた793市町村(回答率83.2%)のうち,地方計画を策定済みの638市町村を分析対象とした。<br/> 実施事業の内容では,市町村施設の分煙化がもっとも実施率が高く(74.8%),ついで禁煙支援プログラム(35.0%),市町村施設の全面禁煙(32.4%)であった。路上喫煙禁止またはタバコのポイ捨て禁止条例の制定(7.5%),禁煙・分煙を行っている飲食店名の公表,市町村施設の禁煙タイムは 5%以下であった。<br/> また未成年者の喫煙対策は,学校における教育が70%の市町村で実施されているものの,たばこ販売時の年齢確認,自動販売機の削減・撤廃は 5%以下,たばこ広告の制限は実施されている市町村はなかった。<br/> 人口規模の小さい市町村ほど目標設定や禁煙支援プログラムなどの事業や学校内全面禁煙の実施が低かった。<br/><b>結論</b> 「健康日本21」発表以後,市町村における喫煙対策事業は,庁舎内全面禁煙の増加や禁煙支援プログラム等,取り組みが進んでいるが,まだ事業拡大の余地はある。また未成年の喫煙対策は十分でないことが明らかとなった。これらの多くの喫煙対策事業は,人口規模の小さい市町村ほど実施率が低いことから,重点的に支援する体制の必要が示唆された。
著者
眞崎 直子 橋本 修二 川戸 美由紀 尾島 俊之 竹島 正 松原 みゆき 三徳 和子 尾形 由起子
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.164-169, 2018

<p><b>目的</b> 人口動態統計に基づく東日本大震災後の自殺死亡数を観察し,岩手県,宮城県と福島県(以下,3県と記す)の沿岸部の市町村と沿岸部以外の市町村での大震災後の自殺の超過死亡について,検討した。</p><p><b>方法</b> 基礎資料として,統計法第33条による人口動態統計の調査票情報から,2010年1月1日~2013年3月31日の死亡情報を利用した。死亡の定義としては,死亡年月日,死亡者の住所地市町村,性別,死亡時年齢,原死因コード(国際疾病分類第10回修正;ICD-10)とした。それ以外に,2009~2013年度の住民基本台帳人口と2010年の国勢調査人口を利用した。地域と期間別に自殺による死亡数を集計した。死亡者の住所地市町村を用い,3県の市町村およびそれ以外に区分し,沿岸部と沿岸部以外に分類した。期間としては,死亡年月日を用いて,東日本大震災の発生月(2011年3月)の1年前から2年後までの3年間とし,月に区分した。自殺は,ICD-10のX60~X84と定義した。自殺SMRは,地域と期間ごとに,3県以外の全国の同年同月の死亡率を標準死亡率として計算し,その有意性を近似的な検定方法で検定した。人口としては,2009~2012年度の住民基本台帳人口から線型内挿法で算定した。ただし,住民基本台帳人口では,公表資料の最終年齢階級が80歳以上のため,性別に80歳以上人口を2010年の国勢調査人口で80~84歳と85歳以上に比例按分した。</p><p><b>結果</b> 3県の沿岸部と沿岸部以外における東日本大震災前後の自殺SMRを算出した。震災後2年間(2011年3月~2013年2月)を通して,自殺SMRは沿岸部と沿岸部以外ともに増加傾向がなかった。3県において,震災前1年間に対する震災0~1年の自殺SMRの比は0.92,震災1~2年の自殺SMRの比は0.93であり,いずれも有意に低かった。3県の県別に沿岸部と沿岸部以外ごとにみると,震災前1年間に対する震災0~1年と1~2年の自殺SMRは0.73~1.07であり,福島県沿岸部の震災1~2年で0.73,宮城県の沿岸部で震災後1~2年で0.83および全体で0.90,3県全体の沿岸部以外について,震災1~2年で0.80,沿岸部以外で0.90,全体で震災0~1年,1~2年それぞれ0.92,0.93と有意に低く,一方,有意に高いものはなかった。</p><p><b>結論</b> 東日本大震災後の3県の自殺死亡について,震災から2年間には自殺死亡の増加がなかったと示唆された。今後は,中長期的に観察を継続していくことが大切であると考える。</p>
著者
山﨑 さやか 篠原 亮次 秋山 有佳 市川 香織 尾島 俊之 玉腰 浩司 松浦 賢長 山崎 嘉久 山縣 然太朗
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.65, no.7, pp.334-346, 2018-07-15 (Released:2018-07-31)
参考文献数
38

目的 健やか親子21の最終評価における全都道府県の調査データを使用し,母親の育児不安と母親の日常の育児相談相手との関連を明らかにすることを目的とした。方法 対象は,2013年4月から8月の間に乳幼児健診を受診した児の保護者で調査票に回答した75,622人(3~4か月健診:20,729人,1歳6か月健診:27,922人,3歳児健診:26,971人)である。児の年齢で層化し,育児不安(「育児に自信が持てない」と「虐待しているのではないかと思う」の2項目)を目的変数,育児相談相手および育児相談相手の種類数を説明変数,属性等を調整変数とした多重ロジスティック回帰分析を実施した。結果 育児に自信が持てない母親の割合と,虐待しているのではないかと思う母親の割合は,児の年齢が上がるにつれて増加した。すべての年齢の児の母親に共通して,相談相手の該当割合は「夫」が最も多く,相談相手の種類数は「3」が最も多かった。また,「夫」,「祖母または祖父」を相談相手として選んだ母親は,選ばなかった母親と比べてオッズ比が有意に低かった。一方,「保育士や幼稚園の先生」,「インターネット」を相談相手として選んだ母親は,選ばなかった母親と比べてオッズ比が有意に高かった。育児不安と相談相手の種類数との関連については,すべての年齢の児の母親に共通した有意な関連はみられなかった。一方,児の年齢別にみると,1歳6か月児と3歳児の母親において,相談相手が誰もいないと感じている母親は,相談相手の種類数が「1」の母親と比べてオッズ比が有意に高く,「虐待しているのではないかと思う」の項目では,相談相手の種類数が「1」の母親と比べると,相談相手の種類数が「3」,「4」,「5」の母親はオッズ比が有意に低かった。結論 相談相手の質的要因では,すべての年齢の児の母親に共通して有意な関連がみられた相談相手は,夫または祖父母の存在は育児不安の低さと,保育士や幼稚園教諭,インターネットの存在は育児不安の高さとの有意な関連が示された。相談相手の量的要因(相談相手の種類数)では,幼児期の児を持つ母親においては,相談相手の種類数の多さが育児不安を低減させる可能性が示唆された。
著者
赤堀 摩弥 藤浪 正子 川田 典子 佐藤 圭子 小嶋 由美 中村 美詠子 尾島 俊之
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.34-43, 2018 (Released:2018-05-12)
参考文献数
9

【目的】静岡県は他自治体と比較して脳血管疾患死亡率が高く,食塩摂取量も多い。そこで,脳血管疾患対策の1つとして,5年で5%の減塩を目指す「減塩55プログラム」に取り組むこととし,県民の食塩摂取状況の把握ができるチェック票を開発,減塩推進活動に活用することを目指した。【方法】静岡県保健所栄養士のヒアリングによる質的データ,静岡県民102人を対象とした24時間蓄尿データより推定した食塩排泄量及び食物摂取頻度調査票(短縮版)データ等に基づいて,チェック票を開発,さらに,特に減塩をすすめたい働き盛り世代を対象としたリーフレット「ふじのくに お塩のとりかたチェック」を作成した。【結果】チェック票合計点と推定食塩排泄量の間には,有意な正の相関(Pearson相関係数0.402)がみられた。チェック票より3段階にランク付けした場合,各群の平均推定食塩排泄量はおのおの 6.8 g,8.7 g,12.2 gであった。リーフレットは70,000部以上が希望のあった県内の健康保険組合,事業所,医療機関,県栄養士会,薬局,教育機関,保育所等に配布され,県内全ての市町,健康福祉センターで活用されている。【結論】本チェック票は食塩摂取の簡易なスクリーニング・ツールとして使いやすいものとなったため,現在静岡県内の健康教室,イベント等さまざまな場面で活用されている。今後も本チェック票を活用し,静岡県における減塩対策を進めていく予定である。
著者
水田 明子 岡田 栄作 尾島 俊之
出版者
一般社団法人 日本公衆衛生看護学会
雑誌
日本公衆衛生看護学会誌 (ISSN:21877122)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.136-143, 2016 (Released:2016-09-02)
参考文献数
40

目的:中学生のいじめの加害経験と,クラスの結束,いじめの被害経験,時間的展望,家族構成,経済状況との関連を明らかにする.方法:2012年12月から2013年1月に,公立中学校8校の生徒(N=2,968人)に調査を行った.いじめの加害と被害経験の有無は2値変数にした.生徒同士の繋がりを4項目4段階評価で尋ね,クラスの平均値を算出し「クラスの結束」と定義した.いじめの加害経験を目的変数,クラスの結束,いじめの被害経験,時間的展望,家族構成,経済的余裕を説明変数とした単変量ロジスティック回帰分析を行った.結果:クラスの結束が高いといじめの加害経験のオッズ比が低かった(男:OR=0.44,95%CI=0.29–0.67;女:OR=0.59,95%CI=0.37–0.95).いじめの加害経験は被害経験と正の関連,現在の充実感と過去受容は負の関連があった.考察:クラスの結束はいじめの加害経験と関連した.いじめ防止対策にはクラスレベルでの信頼の構築が重要であり,現在の充実感,過去受容への働きかけも有用である.
著者
上原 里程 篠原 亮次 秋山 有佳 市川 香織 尾島 俊之 玉腰 浩司 松浦 賢長 山崎 嘉久 山縣 然太朗
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.63, no.7, pp.376-384, 2016 (Released:2016-08-17)
参考文献数
9
被引用文献数
1

目的 21世紀の母子保健の主要な取り組みを示すビジョンである「健やか親子21」では,母子保健統計情報の利活用促進が課題の一つである。市町村での母子保健統計情報の利活用促進には都道府県による支援が重要な役割を果たすと考えられるため,都道府県が市町村支援に活用できるよう市町村の母子保健統計情報の利活用の現状と課題を明らかにすることを目的とした。方法 2013年に実施された『「健やか親子21」の推進状況に関する実態調査』(以下,実態調査)のうち政令市および特別区を除いた市町村の「健やか親子21」を推進するための各種情報の利活用に関する設問を分析した。まず,市町村別の母子保健統計情報の集計分析を行っている都道府県および課題抽出を行っている都道府県が管轄している市町村を抽出し,さらに定期的に母子保健統計情報をまとめている市町村とまとめていない市町村に分けて,定期的なまとめをしていない市町村の特性を観察した。結果 実態調査の対象となった1,645市町村すべてから回答を得た。市町村別の集計分析を行っている都道府県は35か所(47都道府県のうち74.5%)あり,課題抽出を行っている都道府県は14か所(同29.8%)あった。集計分析を行っている35都道府県が管轄する市町村は1,242か所あり,このうち母子保健統計情報を定期的にまとめている市町村は700か所(56.4%),まとめていない市町村は542か所(43.6%)あった。母子保健統計情報を定期的にまとめていない市町村においては,妊娠中の喫煙,予防接種の状況,低出生体重児の状況について積極的に利活用している市町村の割合が有意に少なかった(いずれも P<0.001)。また,児童虐待の発生予防対策や低出生体重児に関する対策などは定期的なまとめをしていない市町村において都道府県と連携して実施した市町村の割合が有意に少なかった。結論 母子保健統計情報を定期的にまとめていない市町村では,児童虐待の発生予防などの対策について都道府県との連携が希薄であり,母子保健統計情報の利活用が進まないこととの関連が示唆された。都道府県は管内市町村の母子保健統計情報を集計分析して市町村へ提供することに加え,これらの母子保健事業を市町村と連携して取り組むことによって市町村での母子保健統計情報の利活用を促進できる可能性がある。
著者
遠又 靖丈 辻 一郎 杉山 賢明 橋本 修二 川戸 美由紀 山田 宏哉 世古 留美 村上 義孝 早川 岳人 林 正幸 加藤 昌弘 野田 龍也 尾島 俊之
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.61, no.11, pp.679-685, 2014 (Released:2014-12-11)
参考文献数
10

目的 介護保険の統計資料を用いた研究において,健康日本21(第二次)の目標である「平均寿命の増加分を上回る健康寿命の増加」は,2011年から要介護 2 以上の認定者数が 1 年ごとに 1%ずつ徐々に低下した場合(健康寿命延伸シナリオ)に2020年に達成されうることが報告されている。本研究は,この健康寿命延伸シナリオを達成した場合の介護費・医療費の節減額を推定した。方法 要介護認定区分別の介護費・医療費(人口一人あたりの平均)の基礎資料として,介護給付費実態調査と宮城県大崎市の調査データを用いた。2011~2020年の自然経過(現状シナリオ)の要介護認定者数は,将来の人口構成が「日本の将来推計人口」のとおりで,年齢階級別の要介護認定者(要介護 2 以上で区分別)の出現割合が2010年と同じである場合とし推定した。次に,健康寿命延伸シナリオ達成による要介護認定者の減少人数を算出した上で,介護費・医療費の推定節減額を算出した。結果 各年次の要介護 2 以上の減少分がすべて「認定なし」に移行すると仮定した場合,2011~2020年の累計で 5 兆2,914億円が節減されると推定された。さらに要介護 2 以上の減少分がすべて「要介護 1」に移行すると仮定した場合,同期間の累計で 2 兆4,914億円が節減されると推定された。結論 健康日本21(第二次)の達成によって約 2 兆 5 千億円~5 兆 3 千億円の介護費・医療費の節減という,健康づくり政策の投資効果の目安が明らかとなった。
著者
石澤 太市 渡邊 智 谷野 伸吾 油田 正樹 宮本 謙一 尾島 俊之 早坂 信哉
出版者
一般社団法人 日本温泉気候物理医学会
雑誌
日本温泉気候物理医学会雑誌 (ISSN:00290343)
巻号頁・発行日
vol.75, no.4, pp.227-237, 2012 (Released:2013-10-23)
参考文献数
30
被引用文献数
1

背景:入浴は、身体を清潔に保つための重要な行為であり、生活習慣の一つである。入浴に対する意識は、疲れを取る、リフレッシュ、健康のため、睡眠をよく取るため等であり、健康維持と捉えることができる。しかし、これまで家庭での入浴習慣と健康状態との関係はほとんど研究されていない。目的:本研究は家庭における日々の入浴と身体的・心理的健康状態との関係を明らかにすることを目的とした。方法:健康成人男女 198 名を対象として調査を行った。入浴習慣の調査項目は、被験者の性別・年齢、浴槽浴頻度、入浴剤使用頻度、浴槽浴時湯温、浴槽浴時間、浴槽浴時水位について調査した。健康状態の調査項目は、気分プロフィール検査である POMS(Profile of Mood States)を用い、主観的健康感および睡眠の質については VAS(Visual Analogue Scale)を用いて評価した。結果:浴槽浴頻度の高い群において、「緊張不安」および「抑うつ・落込み」が有意に低く、主観的健康感が有意に高かった。また、入浴剤使用頻度の高い群では、主観的健康感および睡眠の質が有意に高かった。全身浴群においては、「疲労感」が有意に低く、主観的健康感および睡眠の質が有意に高かった。結論:入浴習慣と身体・心理状況との関連が、健康成人男女を対象として行った研究により明らかになった。全身浴による浴槽浴頻度および入浴剤使用頻度が高い入浴習慣は、中壮年の身体的・心理的健康状態を高めたと考えられた。