著者
大川 浩子 宮本 有紀 本多 俊紀
出版者
北海道文教大学
雑誌
北海道文教大学研究紀要 = Bulletin of Hokkaido Bunkyo University (ISSN:13493841)
巻号頁・発行日
no.46, pp.49-59, 2022-03-15

障害者の雇用は年々増加している.一方,国において就労支援に従事する支援者の質について,議論がされている.我々は,就労支援機関の職員にとってワーク・エンゲイジメントを高める仕事の資源であり,医療職の離職意向に影響を及ぼす要因でもある管理職について注目した.今回,地域の就労支援機関の管理者を対象にインタビュー調査を行い,管理職の現状と課題についてテキストマイニングを用いて検討した.対象は地域の就労支援機関で勤務する管理者12 名である.2019 年11 月から2020年8 月にかけて,現在の所属機関での人材育成や組織に関する課題を含めたインタビューを60 分程度実施し,インタビューデータを逐語録にし,テキストマイニングを行った.テキストマイニングでは,対象の属性による傾向を見ることを目的に定量的に分析を行った.管理者の所属機関の事業形態,所属法人の役員兼務の有無,法人規模の属性を外部変数としてコードのクロス集計を行った結果,【職員教育】【管理業務】【職員採用】に関しては属性問わず取り組みや課題があると思われたが,【収支状況】【人事システム】【役割】に関しては属性による違いがあることが考えられた.
著者
大川 浩子 本多 俊紀
出版者
北海道文教大学
雑誌
北海道文教大学研究紀要 = Bulletin of Hokkaido Bunkyo University (ISSN:13493841)
巻号頁・発行日
no.42, pp.85-94, 2018-03

近年,就労支援に携わる支援者の人材育成における課題が指摘されている.特に,大半の支援者は実務に携わるまで就労支援に関する知識にふれる機会がなく,支援者としての知識やスキルの獲得には雇用事業所の人材育成が影響すると思われる.今回,我々は就労支援に携わる人材育成の現状と課題を検討する目的で,全国の就労移行支援事業所470ヵ所の管理者を対象にアンケート調査を行った.回収率は51.8%(243ヵ所)であり,回答事業所の事業形態の内訳は,就労移行支援のみの事業所が32ヵ所,多機能型事業所が201ヵ所であった.この二つの事業形態間において,多機能型事業所は事業規模が大きく,管理者の経験年数(就労支援,管理職経験)が長い傾向が認められた.更に,研修システム,及び,研修受講内容,人材育成の課題についても,事業形態間で違いが見られた.これらの結果から,就労移行支援事業所における人材育成の課題は事業形態により異なる可能性があり,その背景として,事業所の業務内容や運営法人の規模の違いが考えられた.従って,就労移行支援事業所における人材育成は,事業形態にあわせた取り組みが必要であると思われた.
著者
大川 浩子 遠藤 芳浩 塩澤 まどか 船本 修平 本多 俊紀
出版者
北海道文教大学
雑誌
北海道文教大学研究紀要 = Bulletin of Hokkaido Bunkyo University (ISSN:13493841)
巻号頁・発行日
no.45, pp.23-35, 2021-03-15

近年,パーソナル・リカバリーの中の客観的リカバリーの一つに就労が考えられている.しかし,先行研究において,就労とリカバリーの関係は量的手法と質的手法による結果が異なっている.今回,我々は,就労とリカバリーの関係を量と質の両側面から検討するために,就労している障害当事者に対し,自己記入式のアンケート調査とインタビュー調査を行い,検討した.まず,量的な検討としてUWES-J 短縮版とSISR-B を用いたが,両者の相関は認められなかった.また,質的な検討としてインタビュー内容をUWES-J 短縮版とリカバリーの段階(SISR-A)を外部変数としてテキストマイニングを行った.その結果,ワーク・エンゲイジメントのレベルとリカバリーの段階ごとの文章の内容はポジティブ,ネガティブの割合が異なって現れることが示されたが,就労とリカバリーの関係を直接検討までに至らなかった.今後,就労とリカバリーの関係を検討するうえで,①就労のとらえ方,②リカバリーの定義ととらえ方,③研究協力者の協力した時期の3 点が課題になることが考えられた.