著者
山口 智恵子 吉田 直美 高岡 哲子
出版者
北海道文教大学
雑誌
北海道文教大学研究紀要 = Bulletin of Hokkaido Bunkyo University (ISSN:13493841)
巻号頁・発行日
no.41, pp.87-95, 2017-03-15

本研究の目的は,わが国の高齢者介護予防プランに関するケアマネジメントの研究動向の明確化と今後の課題を検討することである. 文献抽出は,医学中央雑誌web 版(2006 ~ 2015 年)で,keyword「介護予防ケアマネジメント」と「介護予防プラン」を単独で,「高齢者」「介護予防」「ケアマネジメント」でand 検索を行い原著論文の絞込みをした.分析対象は,得られた文献中19 件であった.文献はマトリックス方式を用いて整理した.この結果,文献の掲載年別では2011 年が最も多く,2006 年の介護保険改正法の全面施行に伴う介護事業効果の見直しに関連した研究などが行われていた.対象者及び協力者は「高齢者」が多く,次いで,「三職種(社会福祉士,介護支援専門員,保健師)」,「地域包括支援センターの職員」が多かった.文献の中心テーマは【実態把握】と【システムの構築】が抽出された. 本研究の結果,短期間に見直し改正が行われる政策動向に伴い,現状の把握を行いながらも,システムの構築をめざす状況が明らかとなった.今後も当事者である高齢者や多職種との調整などの中心的役割を担う看護職者を対象とした実態把握研究と,システムの構築に関わる介入研究が継続的に行われる必要がある.
著者
大川 浩子 宮本 有紀 本多 俊紀
出版者
北海道文教大学
雑誌
北海道文教大学研究紀要 = Bulletin of Hokkaido Bunkyo University (ISSN:13493841)
巻号頁・発行日
no.46, pp.49-59, 2022-03-15

障害者の雇用は年々増加している.一方,国において就労支援に従事する支援者の質について,議論がされている.我々は,就労支援機関の職員にとってワーク・エンゲイジメントを高める仕事の資源であり,医療職の離職意向に影響を及ぼす要因でもある管理職について注目した.今回,地域の就労支援機関の管理者を対象にインタビュー調査を行い,管理職の現状と課題についてテキストマイニングを用いて検討した.対象は地域の就労支援機関で勤務する管理者12 名である.2019 年11 月から2020年8 月にかけて,現在の所属機関での人材育成や組織に関する課題を含めたインタビューを60 分程度実施し,インタビューデータを逐語録にし,テキストマイニングを行った.テキストマイニングでは,対象の属性による傾向を見ることを目的に定量的に分析を行った.管理者の所属機関の事業形態,所属法人の役員兼務の有無,法人規模の属性を外部変数としてコードのクロス集計を行った結果,【職員教育】【管理業務】【職員採用】に関しては属性問わず取り組みや課題があると思われたが,【収支状況】【人事システム】【役割】に関しては属性による違いがあることが考えられた.
著者
中田 真依 服部 ユカリ Mai Nakata Yukari Hattori 北海道文教大学人間科学部看護学科 旭川医科大学医学部看護学科
出版者
北海道文教大学
雑誌
北海道文教大学研究紀要 (ISSN:13493841)
巻号頁・発行日
no.39, pp.39-50, 2015-03

本研究の目的は,急性心筋梗塞で入院中にせん妄を体験した患者の思いを明らかにすることである.闘病記録をnarrative と位置づけ,せん妄に関連のある内容を記録文書データとして収集し,テーマ分析方法を用いて分析した.分析の結果,シークエンス毎に3 つのコアテーマ,テーマ,サブテーマに分類された.コアテーマの《せん妄を発症するまでの思い》からは10 テーマ,《せん妄からの回復過程における思い》からは8 テーマ,《せん妄体験の想起と総括》からは4 テーマが導かれ,表面化されず患者自身しか知り得ない様々な思いが明らかになった.せん妄発症前は束縛恐怖など複数の苦痛や不安が存在し,せん妄発症後は断片的なせん妄の記憶,精神の弱さなどの否定的な思い,長期的なせん妄の余韻,自責の念や葛藤が存在していた.また,患者は家族や医療職者に対する感謝の思いを抱き,時間経過とともに病を克服しながら人生における貴重な体験と意味づけ,narrative を総括していた.これらのことから,患者が抱く様々な思いの存在に着目し,共感的姿勢で関わる重要性および,術前にせん妄の知識を提供するなどの予防的対応,早期に回復できるような個人に適した看護の必要性が示唆された.The objective of this study is to understand patient feelings after experiencing delirium whilehospitalized due to acute myocardial infarction. Using hospital diaries as narratives, we collected descriptions related to delirium as documented data, and analyzed these using thematic analysis. The analysis allowed the data to be classified into three core themes, themes, and sub-themes. From the core themes, we extracted ten themes from "feelings up to the development of delirium", eight from "feelings during the process of recovery from the delirium", and four from "recollections and summary of the delirium experience", which showed a variety of internalized feelings which only the patient could know. It was found that the patient suffered from different fears and anxieties such as the fear of being restrained before developing delirium. After delirium had developed, the patient had only a fragmental memory of the delirium, negative attitudes such as weakness of will, aftereffects after long-term delirium, feelings of remorse, and mental conflicts. The patient showed feelings of gratitude towards the family and medical professionals and overall viewed the experience as a positive life experience in overcoming the illness in the course of time. These findings suggest the importance of providing nursing care withempathy and paying attention to the variety of feelings of patients, as well as the necessity of proactive action, including providing information of delirium before surgery, and personalized nursing care to enable a speedy recover.
著者
大川 浩子 本多 俊紀
出版者
北海道文教大学
雑誌
北海道文教大学研究紀要 = Bulletin of Hokkaido Bunkyo University (ISSN:13493841)
巻号頁・発行日
no.42, pp.85-94, 2018-03

近年,就労支援に携わる支援者の人材育成における課題が指摘されている.特に,大半の支援者は実務に携わるまで就労支援に関する知識にふれる機会がなく,支援者としての知識やスキルの獲得には雇用事業所の人材育成が影響すると思われる.今回,我々は就労支援に携わる人材育成の現状と課題を検討する目的で,全国の就労移行支援事業所470ヵ所の管理者を対象にアンケート調査を行った.回収率は51.8%(243ヵ所)であり,回答事業所の事業形態の内訳は,就労移行支援のみの事業所が32ヵ所,多機能型事業所が201ヵ所であった.この二つの事業形態間において,多機能型事業所は事業規模が大きく,管理者の経験年数(就労支援,管理職経験)が長い傾向が認められた.更に,研修システム,及び,研修受講内容,人材育成の課題についても,事業形態間で違いが見られた.これらの結果から,就労移行支援事業所における人材育成の課題は事業形態により異なる可能性があり,その背景として,事業所の業務内容や運営法人の規模の違いが考えられた.従って,就労移行支援事業所における人材育成は,事業形態にあわせた取り組みが必要であると思われた.
著者
金丸 雅子
出版者
北海道文教大学
雑誌
北海道文教大学研究紀要 = Bulletin of Hokkaido Bunkyo University (ISSN:13493841)
巻号頁・発行日
no.42, pp.51-61, 2018-03-15

10年ぶりに改訂された幼稚園教育要領が平成29年3月に告示され,1年間の周知期間を経て平成30年度より施行される.新幼稚園教育要領においても,幼稚園教育は環境を通して行うものであることが基本とされ,また,重視する事項等においてもこれまでの基本的な方向性は維持されている.今回の改訂で最も大きなポイントと言えるのは,新たに,幼児教育と小学校以降の教育を貫く3つの柱を基本に,「幼稚園教育において育みたい資質・能力」が示されたことである.更には,それらをベースとした「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」10項目が明記され,これらの資質・能力の背景には,世界的な教育課題でもある「非認知能力」の育成についての考え方がベースにあるとされている.本稿では,「非認知能力」の育成を重視する新幼稚園教育要領における,モンテッソーリ教育の有効性について考察を行った.その結果,モンテッソーリ教育を受けた子どもたちについてのデータ等により,わが国の現行の幼稚園教育の枠組みにおいて多くの有効な示唆を持つと思われるモンテッソーリ教育の科学的根拠と具体的方法が,新幼稚園教育要領の実現においても有効であることが示唆された.
著者
大川 浩子 遠藤 芳浩 塩澤 まどか 船本 修平 本多 俊紀
出版者
北海道文教大学
雑誌
北海道文教大学研究紀要 = Bulletin of Hokkaido Bunkyo University (ISSN:13493841)
巻号頁・発行日
no.45, pp.23-35, 2021-03-15

近年,パーソナル・リカバリーの中の客観的リカバリーの一つに就労が考えられている.しかし,先行研究において,就労とリカバリーの関係は量的手法と質的手法による結果が異なっている.今回,我々は,就労とリカバリーの関係を量と質の両側面から検討するために,就労している障害当事者に対し,自己記入式のアンケート調査とインタビュー調査を行い,検討した.まず,量的な検討としてUWES-J 短縮版とSISR-B を用いたが,両者の相関は認められなかった.また,質的な検討としてインタビュー内容をUWES-J 短縮版とリカバリーの段階(SISR-A)を外部変数としてテキストマイニングを行った.その結果,ワーク・エンゲイジメントのレベルとリカバリーの段階ごとの文章の内容はポジティブ,ネガティブの割合が異なって現れることが示されたが,就労とリカバリーの関係を直接検討までに至らなかった.今後,就労とリカバリーの関係を検討するうえで,①就労のとらえ方,②リカバリーの定義ととらえ方,③研究協力者の協力した時期の3 点が課題になることが考えられた.
著者
牧野 均 生駒 一憲
出版者
北海道文教大学 ; 2004-
雑誌
北海道文教大学研究紀要 = Bulletin of Hokkaido Bunkyo University (ISSN:13493841)
巻号頁・発行日
no.40, pp.55-68, 2016-03

運動イメージ課題をリハビリテーションに効果的に応用するために,一人称イメージと三人称イメージの運動イメージ想起の方法の違いに着目し,機能的磁気共鳴画像法(functional magnetic resonance imaging ,以下f-MRI)を用いて脳活動部位の比較を行った。対象は,一人称イメージ課題群19名,三人称イメージ群17名である.結果,一人称イメージ課題群では,被験者自身の動く足趾映像を見ながら運動イメージ課題を行った場合,第三者の動く足趾映像を見ながら運動実行課題を行った場合と比較して,左角回と右紡錘状回の活動が増加した.三人称イメージ課題群では,第三者の動く足趾映像を見ながら運動イメージ課題を行った場合,被験者自身の動く足趾映像を見ながら運動実行課題を行った場合と比較して,左中前頭回ブロードマンの9野の後部領域の活動が増加した.一人称イメージ課題群と三人称イメージ課題群の群間比較では,三人称イメージとしての被験者自身の動く足趾映像を見ながら運動イメージ課題を行った場合,一人称イメージとしての第三者の動く足趾映像を見ながら運動イメージ課題を行った場合と比較して,左右の舌状回と右前帯状皮質の活動が増加した.これは,一人称イメージ課題と三人称イメージ課題に被験者自身と第三者を組み合わせることで相補的な制御で課題の遂行を行った可能性があることを示す.以上の結果より,一人称イメージを運動イメージ課題として用いる場合は被験者自身の足趾を見つめさせつつセラピストが他動的に足趾を動かすこと,三人称イメージ課題を用いる場合は向かいに座ったセラピストの足の動作を模倣しつつ同時にセラピストが他動的に足趾を動かすことが自己を認識しつつ効果的にリハビリテーションを行う可能性があると考える.
著者
片倉 徳生 三上 勝夫
出版者
北海道文教大学
雑誌
北海道文教大学研究紀要 = Bulletin of Hokkaido Bunkyo University (ISSN:13493841)
巻号頁・発行日
no.43, pp.15-27, 2019-03

管理職から見た学級経営の困難な状況の特徴とその対処を検討するために,北海道内33 市部の公立小学校627 校を対象に調査を行った.調査の結果,194 校から回答があり,学級経営の困難な状況が生じた学校(経験校 72 校)と生じなかった学校(未経験校122 校)に分けて検討した.因子分析の結果,経験校の管理職は,「学習に臨む構えの欠如」,「教師への反発・授業妨害」,「教師への反抗・暴力」が,学級経営の困難な状況の特徴であると捉えた.具体的には,「授業中の私語が多く,教師の注意でやめない」「授業開始後も横を向いて座ったり,教科書やノートを出さなかったりする子の方が多い」が,一番割合が高く,17 年前の調査と同様の結果であった.また,その対処として,「校内教育体制の確立と関係機関との連携・協力」「教師と児童との信頼関係の構築」など,多岐にわたり多面的な対処が大切であることが窺えた.
著者
高岡 哲子 小塀 ゆかり 川端 愛子 片倉 裕子
出版者
北海道文教大学
雑誌
北海道文教大学研究紀要 = Bulletin of Hokkaido Bunkyo University (ISSN:13493841)
巻号頁・発行日
no.43, pp.79-87, 2019-03-20

目的:本研究の目的は,わが国の看護学領域におけるクリッカーに関する文献検討を行い,研究の動向と研究成果を明らかにし,看護教育実践に活用することである.方法:看護学領域におけるARS 機器に関する文献検索を行った結果,合計34 件が抽出され,重複した文献13 件を除外した21 件を対象文献とした.得られた文献をマトリックス方式で整理したのち原著論文のみを抽出して「使用教材」,「研究目的」などの視点で整理した.これらの結果をもとに,今後の課題の視点で検討した.結果:我が国の看護学領域におけるクリッカーに関する文献検討を行った結果,演習や実習においてはPF-NOTE,講義ではクリッカーが主に活用されていた.また,クリッカーやPF-NOTE を使用することで,授業に対して楽しく積極的に参加できること,気づきや動機づけになっていたことなどが報告されていた.考察:看護学における演習で自身の判断に自信が持てず,発言を躊躇する傾向にある者にとって,匿名性と自らの判断を客観視できるPF-NOTE やクリッカーの使用は有効であると考える.また,今後の課題として受講者の段階的な教育方法の工夫と適切な評価方法の検討の必要性が示唆された.
著者
川端 愛子
出版者
北海道文教大学 ; 2004-
雑誌
北海道文教大学研究紀要 = Bulletin of Hokkaido Bunkyo University (ISSN:13493841)
巻号頁・発行日
no.40, pp.15-28, 2016-03

本論文は子育て・教育支援における「関係力育成プログラム」の実践を反応収集提示装置「PF-NOTEプロトタイプ」を活用して評価し,この指導法の有効性と,分析法として採用したPF-NOTEプロトタイプの活用の有用性を明らかにしたものである.分析のツールに用いた「PF-NOTE プロトタイプ」は,収録したビデオ映像を視聴しながら臨床実習生がリモコンでマーキング情報を記録することができるシステムである.ここでは,「関係力育成プログラム」が重視している「行動を流れの中で捉える」,「関係的視点から子どもの行動を捉える」,「構造化された場の構築」の3つの視点に耐えうる分析法として採用されている.これまでの研究は次の4つに大別することができる.研究1は「子育て・教育支援における評価方法の教育工学的研究」,研究2は「臨床観察法におけるPF-NOTEプロトタイプの運用効果」,研究3は「文教ペンギンルームにおける実践的研究」,研究4は「ミュージックセラピィの振り返りにおけるPF-NOTEプロトタイプの活用に関する実践的研究」である.本研究では,これらの4つの研究を概観することにより,今後の研究の方向性について総説した.
著者
間野 康男
出版者
北海道文教大学
雑誌
北海道文教大学研究紀要 (ISSN:13493841)
巻号頁・発行日
no.30, pp.37-44, 2006-03-25