著者
大川内 夏樹
出版者
日本近代文学会
雑誌
日本近代文学 (ISSN:05493749)
巻号頁・発行日
vol.93, pp.16-31, 2015-11-15 (Released:2016-11-15)

北園克衛の初期の代表作である「記号説」には、映画のモンタージュを思わせる簡潔な言葉の羅列、あるいは語句や言い回しの反復といった特徴的な表現が見られる。これらの表現は、北園が強い関心を寄せていたモホリ=ナギの「大都市のダイナミズム」の受容を通して生み出されたものだと考えられる。また「記号説」と「大都市のダイナミズム」との間には、作品中に都市的な建築物のイメージを用いているという共通点もある。このような建築物のイメージに注目することで、これまでの研究ではしばしば〈意味〉の無い〈抽象画〉のような詩とされてきた「記号説」を、都市を描いた詩として捉え直す可能性が見えてくる。