著者
大平 久司 飯村 龍 森 俊洋 辻本 誠
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.6, pp.19-26, 1996-11

地震被害への対策は,時系列でみると,事前の予防的対策,発生直後の緊急対応,復旧,の3段階に分けられる。本研究では,地震被害に対する目標としてあげられる,人命安全,財産保護,機能維持,の3段階のうち,人命は経済換算できないことから,地震直後の対応により人命損失をできるだけ少なくすることを目標とする。救命率の高い地震発生後48時間は人命救助活動を最優先として,人命救助活動の妨げとなる恐れのある他の活動を制限することが考えられる。本研究では,阪神・淡路大震災における被害データを用いて,地震発生直後の緊急対応による人的被害減少の可能性について,消火,救助,医療の側面から検討を行うとともに,これらの対応と関連する道路交通についての分析を行った。阪神・淡路大震災における延焼地区での死亡率の分析では,地震発生直後に延焼した地区の死亡率が高いことがわかった。一方,地震発生直後の同時多発火災に対応できるだけの消防力はなかったことから,消防の消火活動によってこれらの死亡者を救助することは困難だと判断される。緊急車両,一般車両を含めた地震発生後2日間の道路交通量の推定を行った結果,通勤,買い物といった目的の車両が走行していなければ,渋滞によって緊急車両の走行が妨げられることはないとの結論を得た。一方,渋滞によって,どの程度死亡リスクに影響があったかについては現時点では明らかにできていない。