著者
大平 修也 松本 健義
出版者
美術科教育学会
雑誌
美術教育学:美術科教育学会誌 (ISSN:0917771X)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.93-112, 2019 (Released:2020-04-28)
参考文献数
92

本研究は,生活と芸術との関係をつくる協働的な芸術的行為を,現代芸術におけるアート実 践の性質と特性から定義し,芸術的行為に媒介された共感的対話の生成過程を社会的相互行為 の創造過程と位置づけ明らかにすることを目的とした。まず,社会的相互行為を創造するア ート実践に関連した現代芸術の11の様式の概観に基づき協働的な芸術的行為を定義した。次 に,これを事例分析の視点として,砂浜をつくり変える協働的な芸術的行為において,掘った 穴から現れた幼虫を契機に,人間と幼虫が共生する共感的対話が生成され,行為者たちの社会 的相互行為として創造されたことを,事例の相互行為分析と記録断片の記述分析により明らか にした。
著者
大平 修也
出版者
大学美術教育学会
雑誌
美術教育学研究 (ISSN:24332038)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.113-120, 2016

本論は,表現活動全般を含む人間の種々の活動をコトバとして捉える〈言分け〉構造,及び人間が先天的に有する身体を自然的要因として捉える〈身分け〉構造を手掛かりに,筆者の美術・図画工作科における造形活動の経験をきっかけとすることで,つくることに対する苦手意識の形成過程を明らかにし,筆者の今後の研究活動の土台を築くものである。これを基に,子どもたち一人ひとりが造形活動を介して,どのようにして素材や道具などの物的環境,及び教師や他の学習者などの人的環境と身体的に関わり,自らの想像の世界を広げていくのか,その在りようを見出したい。本論の構成は,美術・図画工作科における筆者の造形活動の経験,筆者の幼児期及び児童期以降の2つの造形活動にみる〈言分け〉・〈身分け〉構造,造形活動を介して形成され得る自己と学びの場への示唆としたが,本論の検証に関しては今後の研究課題としたい。