- 著者
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松本 健義
西野 範夫
佐藤 公治
上野 直樹
布川 和彦
茂呂 雄二
西阪 仰
松本 健義
- 出版者
- 上越教育大学
- 雑誌
- 基盤研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2001
現在の子どもの根源的な危機は,学力低下にあるのではなく,<学ぶことの根拠>である<生>の低下,すなわち,他者と共にアクチュアルに生きる機会の激減にあるという認識にたち,以下のように研究を進めた。(1)感じ・考え・行う身体の論理と筋道を働かせて,子どもがもの,こと,人に働きかけ働きかけられて<学び合い・生き合う>ことを通して,根源的な<学び-知>が生成され成りたつ過程を明らかにする。(2)現象学的心理学,状況的学習論,談話心理学,相互作用・相互行為分析の視点と方法を取り入れた学びの過程の臨床的分析と教育実践の構想実践を行い,学びの過程に対応するカリキュラムと教育実践の総合的在り方を明らかにする。その結果,以下のような成果を得た。1.子どもの<学び-知>は,自己の行為の論理を働かせた,もの,こと,人との相互作用・相互行為の過程で,記号や道具を媒介にして,子どもともの,こと,人とのあいだに<できごと世界<関係=意味)>を,状況的・相互的・協働的に生成し,世界,行為,他者,<私>の意味を同時に生成する過程であることを明らかにした。また,意味生成としての子どもの学びの過程をとらえるあり方を学習臨床学として明らかにした。2.子どもの行為の論理による<できごと世界>の生成としての学びの過程が生起し,その過程で,過去の経験や活動といまここで未来へと向かいつくられる活動との関係,他者やできごととの関係を,子どもが新たにつくりつくり変えて自己の<生>と,世界,行為,他者,<私>の意味とを共に新たに生成することを支える教育実践のあり方を,学習臨床カウンセリングとして明らかにした。3.他者と共に<生きる-学ぶ>ことにより子どもが、<知>を生成する過程を通して,あらゆる教科の学びの基礎・基本となる子ども<生>の論理に対応した学習過程の臨床的カリキュラムが構成されることを明らかにすることができた。