- 著者
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大庭 昇
山本 温彦
富田 克利
- 出版者
- 鹿児島大学
- 雑誌
- 一般研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 1989
桜島火山灰は,黒灰,すなわち通常の火山灰,3価の鉄酸化物が多いこととクリストバル石・石コウ・無水石コウの存在で特徴づけられる赤灰,および発泡状火山ガラス粒子の多いことで特徴づけられる白灰の主に3グル-プに分けられる。通常の火山灰における発泡状火山ガラス粒子の存在および含水硫酸カルシウム結晶の存在は,火山灰の噴出時,断熱膨張や火山ガスによるある種の化学反応を経験したという意味で重要である。自然環境および社会環境は,火山灰と随伴火山ガスに起因する主な2要因,すなわち火山灰構成物の質と粒度による物理的要因および火山ガスによる化学的要因によって影響をこうむっている。農園芸作物,人体健康および土石流が,火山灰および随伴火山ガスに起因する物理的化学的要因によって影響されるメカニズムについて考察した。農園芸作物は,火山灰微粒子が気孔をふさぎ,呼吸機能を止め,機能不全を起こすという物理的要因と,火山ガスが水と結合し,酸として働くという化学的要因の双方からなる複合要因で,枯死落果する。一方,人間が毎日相当量の火山灰を吸入し続けていくとすれば,そう遠くない将来に,珪肺症または塵肺症あるいはそれらの類似症の呼吸器疾患を示す人が間違いなく出てくるであろう。火山灰はまた,土石流発生に関与している。桜島火山には18の枯れ川があるが,これらの枯れ川は,少量の雨が降っても,火山灰の物理的化学的特性に起因して、大規模な土石流を頻繁に発生させる。