著者
大庭 昇 富田 克利 山本 温彦 大迫 暢光 井ノ上 幸造
出版者
Japan Association of Mineralogical Sciences
雑誌
岩石鉱物鉱床学会誌 (ISSN:00214825)
巻号頁・発行日
vol.75, no.10, pp.329-336, 1980-10-05 (Released:2008-08-07)
参考文献数
6
被引用文献数
4 5

With respect to mineral and chemical compositions, microstructure, x-ray powder diffraction and grain-size distribution of volcanic ashes from Sakurajima Volcano, Kyushu, Japan, greyish black-colored “black ashes”, reddish dark grey-colored “red ash” and greyish white-colored “white ash” are compared with one another, and mechanisms of their formation are discussed. Many evidences show that the black ashes came from solidifying lavas, by which the summit crater had been buried, those which were explosively crushed and ejected by gas pressure which was accumulating within the vent. The red ash is considered possible to be a mixture of the preexisted and recent ashes which were affected by alteration due to action by volanic gases. Meantime, the white ash characterized by abundant vesiculated volcanic glasses seems to be that which was ejected continuously from magma which came up to the craters.
著者
富田 克利 上野 孝幸 河野 元治 三浦 英樹 北村 良介 大場 孝信
出版者
日本粘土学会
雑誌
粘土科学 (ISSN:04706455)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, 2003-03-28

第38次南極地域観測隊(1996-1997)によって採取されたリーセルラルセン山地域の地表から140cmの深さまでの試料について,粘土鉱物学的研究を行った.本研究では,粘土鉱物の種類や性質について,垂直的な変化や,風化の違いによる平面的な変化があるかを考察した.
著者
大庭 昇 山本 温彦 富田 克利
出版者
鹿児島大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

桜島火山灰は,黒灰,すなわち通常の火山灰,3価の鉄酸化物が多いこととクリストバル石・石コウ・無水石コウの存在で特徴づけられる赤灰,および発泡状火山ガラス粒子の多いことで特徴づけられる白灰の主に3グル-プに分けられる。通常の火山灰における発泡状火山ガラス粒子の存在および含水硫酸カルシウム結晶の存在は,火山灰の噴出時,断熱膨張や火山ガスによるある種の化学反応を経験したという意味で重要である。自然環境および社会環境は,火山灰と随伴火山ガスに起因する主な2要因,すなわち火山灰構成物の質と粒度による物理的要因および火山ガスによる化学的要因によって影響をこうむっている。農園芸作物,人体健康および土石流が,火山灰および随伴火山ガスに起因する物理的化学的要因によって影響されるメカニズムについて考察した。農園芸作物は,火山灰微粒子が気孔をふさぎ,呼吸機能を止め,機能不全を起こすという物理的要因と,火山ガスが水と結合し,酸として働くという化学的要因の双方からなる複合要因で,枯死落果する。一方,人間が毎日相当量の火山灰を吸入し続けていくとすれば,そう遠くない将来に,珪肺症または塵肺症あるいはそれらの類似症の呼吸器疾患を示す人が間違いなく出てくるであろう。火山灰はまた,土石流発生に関与している。桜島火山には18の枯れ川があるが,これらの枯れ川は,少量の雨が降っても,火山灰の物理的化学的特性に起因して、大規模な土石流を頻繁に発生させる。
著者
富田 克利 河野 元治
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

鹿児島県内の多くのシラス崖の表面からシラス試料を採取し、どのような粘土鉱物が生成しているかを調べた。その結果、比較的最近崖が崩れた場所での崩落したシラス中の粘土鉱物はスメクタイトと10Å-ハロイサイトが認められ、その含有量は、崩落しないで残っている崖の部に含まれている粘土鉱物の含有量に比べてはるかに多量であることがわかった。出水市の針原地区え大規模な地すべりが起こったが、この地域から採取した土砂中にも多量の10Å-ハロイサイトが含まれていた。また、最近大規模な地すべりを起こした鹿児島県吾平町で採取した土砂中のも多量の10Å-ハロイサイトが含まれていた。このように崖崩れを起こした土砂中には膨潤性粘土鉱物が例外なく含まれたいた。このことは、多くの雨が降った後、膨潤性粘土鉱物の層間に水が入り、粘土鉱物が膨潤したためにそれまで土砂中の粒子と粒子がくっついていたものがはがされ、土砂中に割れ目が生じると同時に水を含んだために重量が増し、崖の崩壊が起こったものと思われる。大分県湯布院花合野では大規模な温泉地すべりがみられるが、この地域の土砂中にはスメクタイトが多く含まれていた。このスメクタイトも膨潤性粘土鉱物であり、この粘土鉱物が地すべりを起こしている要因になっていることがわかる。以上のように膨潤性粘土鉱物の存在が地すべりや崖崩壊の原因になることがわかったので、天然のシラスを出発物質にして、シラスからどのようにして膨潤性粘土鉱物が生成するのかを調べるために、合成実験を行った。天然でシラス崖の表面に生成している膨潤性粘土鉱物は、それほど温度も高くなく、大気圧下で生成しているので、低温低圧の条件下での合成実験を試みた。その結果、200℃以下での水熱条件下でスメクタイトの合成に成功したし、大気圧下でのスメクタイトの合成にも成功した。今後この実験を継続して行っていくと同時に、シラスの崖崩壊を起こすのは、どのくらいの膨潤性粘土鉱物が含まれていると危ないかを予知できるように、膨潤性粘土鉱物の含有量と崖崩壊の関係をさらに詳細に検討する予定である。