著者
屋敷 圭子 大戸 信明 川嶋 善仁 中原 達雄
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.334-339, 2017-12-20 (Released:2017-03-21)
参考文献数
10
被引用文献数
1

近年,紫外線や大気汚染などの環境因子,食生活の変化やストレス等によって敏感肌を訴える人は増加している。われわれは,すでに敏感肌向け化粧品に多く配合されているグリチルリチン酸ジカリウム(DPG)の有効性について検討した。DPGは,神経ペプチドであるサブスタンスPによる神経成長因子の遺伝子発現上昇を抑制したことにより,敏感肌の特徴的状態である知覚過敏反応を抑制できる可能性が示された。また,敏感肌を対象にした臨床試験では,0.2%DPG配合製剤は乳酸によって誘導されるかゆみに対する違和感に対して改善傾向が認められた。これらの結果から,DPGは,種々の敏感肌の人に対して改善作用を有する可能性が示唆された。
著者
岩橋 弘恭 川嶋 善仁 村上 敏之 大戸 信明 屋敷 圭子 鳥家 圭悟 木曽 昭典
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.17-24, 2012

紫外線の暴露は皮膚に対してさまざまなダメージを与え,シミ,シワおよびたるみといった光老化を引き起こす原因となる。本研究では,UVBダメージ抑制作用を有するテンニンカ果実エキスの有効成分の探索と,新たな作用メカニズムの解明を試みた。テンニンカ果実から単離した成分であるピセアタンノールは,表皮角化細胞において細胞死抑制作用を示した。そのメカニズムの一つとしてDNA損傷抑制作用が認められ,代表的なDNA損傷であるシクロブタン型ピリミジンダイマー減少作用およびヌクレオチド除去修復遺伝子の発現上昇抑制作用もしくは発現促進作用を示した。さらに抗酸化作用として,表皮角化細胞に対するグルタチオン合成促進作用を示し,抗炎症作用としてプロスタグランジンE2産生抑制作用を示すなど,テンニンカ果実エキスと同様の作用が認められたことから,ピセアタンノールが有効成分の一つと考えられた。また新たにテンニンカ果実エキスにインターロイキン-1<i>&beta;</i>分泌抑制作用を見出した。したがって,テンニンカ果実エキスおよび成分であるピセアタンノールは紫外線によるダメージを抑制し,抗老化作用が期待できる素材であると考えられた。
著者
木曽 昭典 川嶋 善仁 大戸 信明 周 艶陽 屋敷(土肥) 圭子 村上 敏之 新穂 大介 神原 敏光 水谷 健二
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.267-273, 2009-12-20 (Released:2011-12-21)
参考文献数
22
被引用文献数
2

皮膚の潤いを保つには,表皮の角層における水分保持機能およびバリア機能が不可欠である。これらの機能を発揮するため,セラミド,コレステロールおよび遊離脂肪酸から構成される角層細胞間脂質が重要な役割を果たしている。本研究では,セラミドの産生促進作用を指標にして,皮膚の潤いを保つのに有効な植物抽出物の検索を行った結果,甘草葉抽出物に表皮角化細胞においてセラミドの合成に関与する酵素であるセリンパルミトイルトランスフェラーゼおよびスフィンゴミエリナーゼの遺伝子発現を促進する作用,3次元培養皮膚モデルおよびヒト皮膚においてセラミド産生促進作用を見出した。さらに他の角層細胞間脂質であるコレステロール合成の律速酵素として知られるHMG-CoA還元酵素の遺伝子発現促進作用や表皮ヒアルロン酸の合成を促進する作用も認めた。また,甘草葉から単離した活性成分についても検討したところ,6-prenyl-naringeninが活性成分の一つであることが示唆された。これらの結果から甘草葉抽出物は,角層細胞間脂質や表皮ヒアルロン酸の合成を高め,多角的に皮膚機能を維持・改善するスキンケア素材である可能性が示唆された。