著者
大林 民典
出版者
日本医真菌学会
雑誌
Medical Mycology Journal (ISSN:21856486)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.J141-J147, 2017 (Released:2017-11-30)
参考文献数
44
被引用文献数
7

カブトガニ血球中のβ-グルカン感受性因子の発見に基づいて血中(1→3)-β-D-グルカン測定法(以下,β-グルカン測定法)が,深在性真菌症の補助診断法として1985年,わが国で誕生した.多くの臨床治験ののち,今やβ-グルカン測定法は内外の深在性真菌症の診療ガイドラインに取り上げられ,世界のどこでも利用できる.しかし,わが国では比色法と比濁法というβ-グルカンに対する反応性が大きく異なる2つの方法が使われているため,両者の測定値を比較する際には注意が必要である.比濁法の血中β-グルカン1pg/mlは,大部分の例で,比色法の7pg/ml前後に相当する.したがって比濁法のカットオフ値は比色法より著しく高くなり,偽陰性による見逃しの可能性が高くなる.また最小検出限界値も比色法に換算すると比濁法では60pg/mlと高く,低値域の測定値の上昇による早期診断に寄与できない.海外で使われているいくつかの試薬もまた感受性が異なる.データの互換性を確立し,本法の有用性をさらに高めるには,国際的な標準化ないしハーモナイゼーションが必要である.将来,国際的な生物保護の流れに沿って,遺伝子工学がカブトガニ凝固酵素の供給源としてカブトガニに取って代わり,標準化の新たな機会をもたらすかもしれない.
著者
大林 民典 杉本 篤 瀧川 千絵 関谷 紀貴 長澤 准一 尾崎 喜一
出版者
日本医真菌学会
雑誌
Medical Mycology Journal (ISSN:21856486)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.J73-J79, 2015 (Released:2015-06-15)
参考文献数
25
被引用文献数
1 6

血中 (1→3)-β-D-グルカンの測定依頼があった 415 件の残余試料を用いて,新製品ファンギテック® Gテスト MK II 「ニッスイ」と,生産中止となったファンギテック® Gテスト MK を比較・検討した.両者の最大の違いは,旧製品では東アジア原産のカブトガニ Tachypleus tridentatus の血球由来の原料が使われていたのに対し,新製品では北米原産のカブトガニ Limulus polyphemus が使われている点である.両試薬の測定範囲 (いずれも4.0 pg/ml~500 pg/ml ) において,新試薬の旧試薬に対する Passing-Bablok 回帰係数は 1.065 (95%信頼区間 : 1.015~1.111),y 切片は-0.287 (95%信頼区間 : -0.667~0.118) と,ほぼ 1 対 1 の対応がみられた.一方,個々の検体についてみると,乖離を示すものも少なくなく,β-グルカンの側鎖の多様性に対するカブトガニの種による反応性の違いが原因の一つと推測された.しかし,深在性真菌感染の関与が疑われた 40 検体についても回帰直線の両側に偏りなく分布していたこと ( χ2 =0.9,φ=1,p=0.34),また両試薬ともカットオフ値 20 pg/ml を切るとそのような検体の出現が激減することから,ファンギテック® Gテスト MK II 「ニッスイ」は MK と概ね同等であり,後継試薬として問題ないものと考えられる.
著者
大林 民典
雑誌
臨床病理 (ISSN:00471860)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.528-532, 1996-06-25
被引用文献数
7