- 著者
-
常深 祐一郎
- 出版者
- 日本医真菌学会
- 雑誌
- Medical Mycology Journal (ISSN:21856486)
- 巻号頁・発行日
- vol.57, no.2, pp.J71-J75, 2016 (Released:2016-05-31)
- 参考文献数
- 15
- 被引用文献数
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爪白癬治療の基本は経口抗真菌薬であるが,経口抗真菌薬は爪白癬治療のためだけにあるのではない.外用のみでは難治な角化型足白癬には経口抗真菌薬の併用が有効である.眼や耳,口などに接する顔面白癬,広範囲の体部白癬,外陰部の複雑な部位に及んだ股部白癬などは完全に外用し尽くすことは困難で,再発が多くなる.よって経口抗真菌薬が必要である.白癬だけでなく,広範囲の癜風やマラセチア毛包炎,爪カンジダ,カンジダ性爪囲爪炎にも経口抗真菌薬は重宝する.また,真菌症であっても抗真菌薬の外用が困難または禁忌となる場合がある.頭部白癬は外用抗真菌薬の刺激で炎症が強くなる可能性があり,外用できたとしても毛包内までは効果が及ばないため,経口抗真菌薬のみを使用する.また,びらんや接触皮膚炎などを伴った趾間型足白癬は,外用抗真菌薬により刺激性皮膚炎を起こして悪化するため使用しづらい.この場合,局所はステロイド外用薬や亜鉛華軟膏などで治療し,白癬菌には経口抗真菌薬で対応し,合併症消失後は外用抗真菌薬に切り替える.さらに外用は手間と時間を要するため,アドヒアランスが低下しがちである.そこで,経口抗真菌薬を併用し,治療効果を高め,治療期間を短縮することも有用である.経口抗真菌薬は,イトラコナゾールとテルビナフィンの違いを理解して使用することが重要である.新規経口抗真菌薬の臨床試験も行われており,経口抗真菌薬がさらに活用されることを期待する.