著者
杉野 公則 亀山 香織 長浜 充二 北川 亘 渋谷 洋 大桑 恵子 矢野 由希子 宇留野 隆 伊藤 公一
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.7-12, 2013 (Released:2013-05-31)
参考文献数
14
被引用文献数
1

甲状腺乳頭癌に比して甲状腺濾胞癌は術前診断が困難であるため切除後の病理組織検査で判明することが多く,遠隔転移を起こす頻度が高く,予後も悪いとされている。標準的な治療戦略として病理診断判明後,補完全摘術,アブレ-ションを行い,血中サイログロブリン値を指標とし,その上昇時にはI131内用療法を行う。しかし全ての濾胞癌症例にこの戦略が必要なのか疑問が残る。本腫瘍の予後因子および遠隔転移の危険因子を求めることで,上記戦略が必要な症例を明らかにした。甲状腺濾胞癌初回手術症例134例(1989年から1998年まで)に対し無遠隔転移生存率(DMFS)に関与する因子を検討した結果,年齢,原発腫瘍径,浸潤形式(広範浸潤型)であった。さらに,予後良好とされている微少浸潤型濾胞癌初回手術症例251例(1989年から2006年)に対して同様にDMFSに関与する因子を検討した結果,年齢が有意な因子であった。これらの危険因子を加味し,治療戦略を勘案すべきと考えられた。