著者
大森 光則 伊多波 良雄 Mitunori Oomori Mitsunori Omori Yoshio Itaba
出版者
同志社大学大学院総合政策科学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha University policy & management review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.61-76, 2009-07-25

外貨地方債とは、自治体が海外において発行もしくは募集した証券を指す。戦前の外貨地方債は、1899(明治32)年にわが国史上初めて神戸市が発行し、その後、東京市、横浜市、名古屋市、京都市、大阪市の旧6都がそれぞれ発行した。その理由は、水道、電気、ガスなどの都市基盤整備のためであった。戦後においても、東京都、横浜市、大阪市、大阪府、神戸市という大都市で発行されている。それらの都市で共通するものは、各自治体の臨海部の埋立事業である。さらに東京都では、地下鉄建設や下水道工事を行うことも目的となっている。それらを踏まえて、本稿では、先行研究のなかで十分に解明されていない点、すなわち外貨地方債を発行する際の政府及び自治体の保証と外貨地方債のメリット・デメリットに焦点を当てている。特に保証では、銘柄16件のうち11件に実際は付担保、優先弁済などの保証が付されていることを明らかにした。また、メリット・デメリットでは、公債負担論と外貨地方債を発行できる自治体の観点から述べている。特に戦後は、外貨地方債は、大都市のみに発行が許された結果、都市基盤の整備が行われた大都市と、これら以外の都市に格差が生まれることをデメリットとして挙げた。また今後の研究課題として、外貨地方債が自治体財政に与えた影響などを挙げた。