- 著者
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大森 哲至
- 出版者
- 日本グループ・ダイナミックス学会
- 雑誌
- 実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
- 巻号頁・発行日
- vol.50, no.1, pp.60-75, 2010 (Released:2010-08-19)
- 参考文献数
- 41
- 被引用文献数
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2005年2月1日,三宅島の住民は2000年に起きた噴火から4年5ヵ月ぶりに帰島を果たした。しかし,その現状は噴火から7年が経過する現在でも島内の広い範囲で環境法16条に基づく火山ガスの基準を満たしていない。本研究では,精神健康調査票(GHQ28)を用いて,繰り返される災害下で復興活動に取り組む三宅村坪田地区住民の精神健康を検討した。主要な結果は以下の通りであった。精神医学的障害のおそれがある閾値点6点以上のハイリスク者は,住民の63. 6%であり,災害による精神健康への影響が長期化していた。ハイリスク者は全年齢階層で男性よりも女性に多く,男女とも60歳以上の高齢者に多かった。また,ハイリスク者の発生に寄与するリスク要因を分析した結果,最も相対危険度の高いのは,性別の要因であり,女性は男性の3. 8倍の危険度となっていた。次いで,相対危険度の高いのは,今後の生活や復興活動に対する悩みの有無であり,悩みのある人はない人の3. 3倍の危険度となっていた。さらに,仕事の回復していない人は回復している人の2. 8倍の危険度となっていた。