著者
大槻 信也 三瓶 政一 森永 規彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-II, 通信II-無線通信・無線応用 (ISSN:09151885)
巻号頁・発行日
vol.78, no.6, pp.435-444, 1995-06-25
被引用文献数
34

16QAMに代表される多値QAM技術は,伝送帯域を拡大することなく高速伝送が実現でき,陸上移動体通信において非常に有効な技術である.しかしながら,フェージングによる受信レベルの落込みや遅延波の影響に弱く伝送品質の劣化が生じてしまうという問題がある.このような問題を解決するため本論文では,瞬時伝搬路状況に適応した変調多値数を用いる適応変調方式を提案している.提案方式ではTDMA/TDD方式に基づいた方法により伝搬路状況として瞬時のC/N_0および遅延広がりを推定し,伝搬路状況が良好な場合には256QAM等の変調多値数の大きな変調方式を用いることにより高速伝送を行う.また伝搬路状況が劣悪な場合には雑音,遅延波に対して強いQPSK等の変調多値数の小さな変調方式を用いることにより,従来の変調多値数固定の方式と比較して,伝送品質を劣化させることなく高速伝送を実現することが可能である.計算機シミュレーションにより,その伝送特性を評価した結果,提案方式はQPSK方式と比較して一様レイリーフェージング下においても,遅延波存在下においても,伝送品質を劣化させることなく高速伝送が実現できることがわかった.