著者
大河 原信
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子 (ISSN:04541138)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.94-106, 1970-02-01 (Released:2011-09-21)
参考文献数
48
被引用文献数
1 2

ゼラチンや卵白にジアゾニウム塩や重クロム酸塩を配合し光照射すると,これら高分子物質は橋かけ,不溶化を起こす.この原理は古くから写真製版に利用されてきたが,近年ポリビニルアルコールの桂皮酸エステルが強度,保存性,解像力によりすぐれた新しい製版用樹脂として登場して以来,感光性高分子という新しい領域が誕生した.光と高分子の関係はさらに,一方でいかにして光劣化を防ぐかという問題,他方では光変化を積極的に利用しようとする方向に進展する.同時に一方では,それら安定剤や感光剤をポリマーに配合する様式から,感光構造を直接高分子中に結合,包含させる工夫,すなわち反応性高分子の一形態としての新分野が開拓され始めたのである.
著者
神谷 信行 大河 原信
出版者
工業化学雑誌
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.72, no.12, pp.2639-2644, 1969

メチレンブルーを主とするチアジン系色素と種々の還元剤を組合せた系を用いたアクリルアミドの光重合を行ない,重合開始能と光電池特性との関連性を調べた。還元剤として加えた第三アミンのうちでトリエタノールアミン,テトラメチルエチレンジアミンは重合開始能は大きいがトリメチルアミンは非常に小さい。ジメチルアミンのような第ニアミンも有効でモノメチルアミンのような第一アミンは効力が劣る。第三アミンの場合,Nに隣接したメチレン構造の存在が活性に寄与するものと思われる。ジメチルアミンの場合はアクリルアミドに付加して3級アミンを生成し, このアミンが有効に働いていたと推定される。メチレンブルー-還元剤系の光還元のしやすさと重合速度の大小とは必ずしも一定の関係はなく,還元剤の種類によって重合速度が著しく影響されることなどから光反応で生ずる色素ラジカルと還元剤ラジカルのうち,還元剤ラジカルが重合に大きく寄与しているものと思われる。このさいメチレンブルーラジカルは不均斉化反応などでロイコ体を生じ,これを電池のアノードに導入することにより光重合と光電池の組合せが可能であることが示された。