著者
高橋 武重 筒井 知 中塩 文行 竹下 健次郎 坂井 渡
出版者
工業化学雑誌
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.161-165, 1970

アルゴンプラズマジェットを用いてプロパンの熱分解反応を試みた。分解反応による主生成物はアセチレンで他に少量のエチレン, プロピレンが生成した。<BR>アセチレン収率に影響するいくつかの因子について検討した。その結果, ジェット入力 3.5kW, 全ガス流量11.Ol/min が最適な操作条件であることがわかった。プロパンを水素で希釈して水素と炭素のモル比 (H/C) を変えその影響を検討した。また同時に 2000~60000K の平衡組成の計算および C<SUB>2</SUB> スワンパンドによる温度測定を行なった。アセチレン収率は H/C の増加とともに増加し, 測定された温度は逆に低下した。この傾向は平衡計算の結果と一致している。温度測定と同時に行なったアルゴン原子線スペクトル (AI=4158. 59Å) の半径方向の大きさも H/C の増加とともに小さくなることより, 反応中に加えられた水素分子がジェット中で吸熱的に解離し, そのためジェット周辺部の温度が低下し, そこに吹き込まれたプロパンがよい収率でアセチレンに転化すると推察される。
著者
天笠 正孝 斎藤 善郎 鈴木 誉一 内田 武士 古川 保
出版者
工業化学雑誌
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.73, no.8, pp.1841-1849, 1970
被引用文献数
1

シクロヘキセンを出発原料とし,硝酸酸化によりアジピン酸を製造することを目的とし,反応条件を研究した。1)シクロヘキサノールの硝酸酸化:この反応において硝酸消費量はシクロヘキサノール1molにつき2.2~3molであり,アジピン酸収率が高くなる反応条件下においては硝酸消費量が少なくなることがわかった。2)シクロヘキセンの硫酸水和-硝酸酸化2段法によるアジピン酸の製造:硫酸水和反応で副生する黒色物質はシクロヘキセン中の微量過酸化物を除くことにより解決された。シクロヘキセンと硫酸の反応で上層に分かれてくる有機層を分離し,これよりシクロヘキセンを留去したものを硝酸酸化して92%の収率でアジピン酸を得た。3)シクロヘキセンの硝酸酸化によるアジピン酸の製造:過塩素酸添加濃度,反応温度,触媒濃度の変化に対し,それぞれアジピン酸収率72%,グルタル酸19%,コハク酸6%,油状物5wt%であった。
著者
山崎 康男 増田 昭夫 清水 節夫
出版者
工業化学雑誌
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.72, no.6, pp.1323-1326, 1969

硫酸存在下でのトルエンとアセトアルデヒド(Baeyer反応,以後B反応と略す)またはアセチレン(Reichert-Nieuwland反応,以後R-N反応と略す)の反応における生成物は,1-(o-トリル)-1-(p-トリル)エタン(OPD)および1,1-ジ(p-トリル)エタン(PPD)であるが,これらの生成比は両反応においてまったく逆になっている。すなわちB反応ではOPD:22%,PPD:78%であるのに対し,R-N反応ではOPD:73%,PPD:27%(反応温度はいずれも15℃)。そこで,この相違がいかなる反応段階にあるかを明らかにするために,反応の中間生成物がB反応ではメチルトリルカルビノール(MTC)類,またR-N反応ではビニルトルエン(VT)類であると考え,各段階にわけて,生成物の異性体組成を測定した。その結果,両反応におけるOPDとPPDの生成比の逆転はB反応ではMTC類,そしてR-N反応ではVT類が生成される段階にあることがわかった。これはR-N反応において,触媒として用いられる硫酸水銀が配向性に対して特異な影響を与えているために生じたものと考えられる。
著者
神谷 信行 大河 原信
出版者
工業化学雑誌
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.72, no.12, pp.2639-2644, 1969

メチレンブルーを主とするチアジン系色素と種々の還元剤を組合せた系を用いたアクリルアミドの光重合を行ない,重合開始能と光電池特性との関連性を調べた。還元剤として加えた第三アミンのうちでトリエタノールアミン,テトラメチルエチレンジアミンは重合開始能は大きいがトリメチルアミンは非常に小さい。ジメチルアミンのような第ニアミンも有効でモノメチルアミンのような第一アミンは効力が劣る。第三アミンの場合,Nに隣接したメチレン構造の存在が活性に寄与するものと思われる。ジメチルアミンの場合はアクリルアミドに付加して3級アミンを生成し, このアミンが有効に働いていたと推定される。メチレンブルー-還元剤系の光還元のしやすさと重合速度の大小とは必ずしも一定の関係はなく,還元剤の種類によって重合速度が著しく影響されることなどから光反応で生ずる色素ラジカルと還元剤ラジカルのうち,還元剤ラジカルが重合に大きく寄与しているものと思われる。このさいメチレンブルーラジカルは不均斉化反応などでロイコ体を生じ,これを電池のアノードに導入することにより光重合と光電池の組合せが可能であることが示された。