著者
大河内 茂美 杉万 俊夫
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.63-72, 2000-07-15 (Released:2010-06-04)
参考文献数
11

集団目標の達成を志向するP行動と, 人間関係それ自体の維持を志向するM行動という, 2種類の行動形態によってリーダーシップ行動を把握しようとするP-M論に基づき, P行動とM行動の効果性に関する数理モデルを提出した。P行動の下位形態として, メンバーの能力向上を志向するP行動と, 累積目標達成量の増加を志向するP行動を設定し, これらにM行動を加えた3つのリーダーシップ行動の時間的関数として効果性を定式化した。第1に, 「メンバーの能力」と「人間関係の円滑さ」が, 「集団モラール」に与える効果を, 経済学における生産関数を援用して定式化した。第2に集団モラールは, メンバーの能力向上, 人間関係の円滑化, 累積目標達成量の増加に利用されるものとし, それぞれに対する利用は, 上記3つのリーダーシップ行動によって決まるものとした。数理モデルの解析には, ポントリャーギンの最大値の原理を用いた。本モデルは, これまでの実証的研究の成果に対して, 有効な解釈を与えうることが示唆された。