著者
岡田 勇 大沼 宏平
出版者
独立行政法人 日本貿易振興機構アジア経済研究所
雑誌
ラテンアメリカ・レポート (ISSN:09103317)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.1-13, 2021 (Released:2021-07-31)
参考文献数
11

2019年のボリビア大統領選挙では、社会主義運動(MAS)の候補であったエボ・モラレスと次点候補との得票差が接近するなかで選挙不正が疑われ、モラレスが辞任・亡命する混乱に陥った。しかし、その1年後に行われたやり直し選挙では、MAS候補のルイス・アルセが得票率を積み増して当選を果たした。このようなMASの失墜と再来はどのように理解できるだろうか。本稿は、MAS派と反MAS派が西部5県と東部4県および農村部と都市部に安定的な支持基盤を有する構造性を指摘したうえで、多くの場合、選挙での多数決でこの構造的対立は解決されるが、党派対立と選挙プロセスへの不信が高まれば2019年選挙のような混乱が今後も起きかねないことを論じる。また、2019〜20年の反MAS派による暫定政権への不満や、MASの組織的動員力の高さ、そして反MAS派の分裂傾向がMASの復権をもたらしたことも指摘する。新アルセ政権は、こうした構造的な党派対立と社会経済面で山積する課題に対処することが求められる。