著者
鈴木 均
出版者
独立行政法人 日本貿易振興機構アジア経済研究所
雑誌
中東レビュー (ISSN:21884595)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.35-41, 2017 (Released:2019-11-12)

The result of the November election of the US president has crucial importance for the future of several countries including Israel, Saudi Arabia, and Iran, with different nuances pertaining to each country. In the case of Iran, contrary to the other two countries, the result of Donald Trump’s victory is disgusting, as he has openly denied the profits of the Joint Comprehensive Plan of Action (JCPOA) from the outset of his election campaign.If Hillary Clinton were elected, she would have followed Barack Obama’s political legacy in many ways, including the policies that brought about his breakthrough in US–Iranian relations after the 1979 revolution. We could refer to many pieces of evidence, especially from M. Landler’s convincing work entitled Alter Egos (2016). President Obama’s unprecedented challenge in this regard was to change relations with Iran such that there is less emnity. Nowadays it seems very difficult to expect that this rare historical chance at a stronger US-Iran relationship will eventually materialize.In this very difficult situation, Japan should not hesitate to make every effort to convince the Trump Administration that it is crucial for the US to maintain diplomatic relations with Iran to keep the Middle East from entering a more catastrophic situation characterised by greater warfare. Japan is an important player in this situation given its uniqueness in having an alliance with the US while at the same time being trusted by Iran.
著者
福田 安志
出版者
独立行政法人 日本貿易振興機構アジア経済研究所
雑誌
中東レビュー (ISSN:21884595)
巻号頁・発行日
pp.Vol.7_J-Art01, (Released:2019-07-30)

From the beginning of the Trump administration, the U.S. military presence in Gulf Cooperation Council (GCC) countries has rapidly evolved. Specifically, the number of U.S. Air Force soldiers stationed in Qatar, United Arab Emirates, and Kuwait has been significantly reduced. This may be a result of President Trump’s preference to minimize the level of U.S. troops deployed in the region. Conversely, the United States has maintained its naval presence in the gulf, including an aircraft carrier strike group and naval troops in Bahrain. In the same period, Iran has remarkably expanded its military capabilities after developing sophisticated new missile systems, drones, and submarines. Combined with recent hostile events in the gulf, this situation has heightened concerns about gulf security, in particular, to ensure the safe passage of crude oil destined for all parts of the world. Current tension may lead to an escalated presence of U.S. forces in the region.
著者
北野 浩一
出版者
独立行政法人 日本貿易振興機構アジア経済研究所
雑誌
ラテンアメリカ・レポート (ISSN:09103317)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.16-31, 2020 (Released:2020-01-31)
参考文献数
11
被引用文献数
1

2019年10月中旬に中高生の地下鉄無賃乗車運動から始まったチリの大規模な反政府デモは、瞬く間に社会問題全般に対する改善要求へと変わっていった。特に、高齢者の貧困の問題と年金改革要求は広く国民が支持する要求となった。統計データから見ると、チリの貧困・所得格差の実態は近年改善がみられる。しかし、OECDへの加盟や左派勢力の躍進などにより、貧困・所得格差の問題に関する民衆の不満は急速に高まっている。これまで、チリは比較的安定した政治システムと堅実な経済政策を維持してきたが、躍進する左派勢力と力を増す民衆運動を前に、政策の大転換を迫られている。
著者
アブディン・モハメド
出版者
独立行政法人 日本貿易振興機構アジア経済研究所
雑誌
アフリカレポート (ISSN:09115552)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.41-53, 2020-05-14 (Released:2020-05-14)
参考文献数
17

本稿では、2019年4月11日にスーダンのバシール大統領が失脚してから8月17日に暫定政府の設立合意が成立するまでに、国内の主要な政治主体間にいかなる権力闘争があったのかを分析する。そのために、暫定軍事評議会を支援したサウジアラビア・UAE・エジプトの三国陣営、そしてエジプトがスーダンに対する影響力を拡大することを危惧したエチオピアといった地域大国の役割にも注目した。主な結論は以下の3点である。(1)6月3日にスーダン軍部がデモ隊を強制排除する以前には、サウジアラビア陣営はスーダン国内政治に影響を及ぼすことができたが、(2)6月3日の事件以後には、エチオピアが、対立する国内主体間の交渉を仲介することに成功したため、サウジアラビア陣営の影響が限定的になり、(3)その結果、デモ隊の強制排除を通して軍政の復活を目指した暫定軍事評議会と、エチオピアの介入によって息を吹き返した民主化勢力との権力関係が拮抗するようになり、8月には暫定政府の設立に関する合意が可能となった。
著者
ケイワン アブドリ
出版者
独立行政法人 日本貿易振興機構アジア経済研究所
雑誌
中東レビュー (ISSN:21884595)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.152-160, 2018 (Released:2019-03-15)

During the Oil Nationalization Movement of the early 1950s, Iran’s oil was boycotted by the British and major oil companies, which brought a lot of financial hardship to the government of Prime Minister Mossadegh. A few medium-scale oil companies tried to buy and transport it to the market, including Japanese Idemitsu Kosan. It was a very risky but highly profitable deal for them, because Iran gave large discounts to the buyers. However, after Mossadegh’s downfall and the establishment of the Zahedi government, the deal faced problems. Iran could not or would not easily accept the discounted rate requested by Idemitsu.In approximately 1954, the Japanese government intervened to support Idemitsu, including by writing letters to the Foreign Ministry. Below is one of those letters, which has been translated from Farsi to Japanese, that was sent to Dr. Ardalan, the Foreign Minister of Iran, in September 1956. In the letter, Japan demanded that the Iranians keep their obligations and promises and offered a long-term oil deal with special conditions. In the article, I describe the background and details of the deal, explain the Japanese government’s position regarding the Idemitsu deal, and shed some light on Japan’s energy diplomacy.
著者
坂口 安紀
出版者
独立行政法人 日本貿易振興機構アジア経済研究所
雑誌
ラテンアメリカ・レポート (ISSN:09103317)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.44-58, 2019 (Released:2019-07-31)
参考文献数
29

ベネズエラは現在、政治、経済、社会的に国家破綻の状況に陥っている。2019年1月、反政府派が過半数を支配する国会のグアイド議長が憲法の規定に基づき暫定大統領に就任して以降、ベネズエラは「ふたりの大統領」が並び立ち、政治的緊張が極度に高まっている。マドゥロ政権は軍の支持を背景に、反政府派政治リーダーや一般市民、そして離反が疑われる軍人などへの弾圧を強めている。国内ではいまだマドゥロ政権の実行支配が続いているが、マドゥロ政権による人権侵害は国際社会から厳しく糾弾されている。本稿では、ふたりの大統領がたつことになった背景、厳しい経済社会的状況にも限らずマドゥロ政権が継続している理由、ベネズエラ危機に対する国際社会の対応などについて、1月以降の情勢に関して情報を整理し、解説する。
著者
Arshin Adib-Moghaddam
出版者
独立行政法人 日本貿易振興機構アジア経済研究所
雑誌
中東レビュー (ISSN:21884595)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.75-81, 2019 (Released:2019-05-30)

20世紀の初頭から欧米の主導で発明され、機能してきた「中東」の地域概念はもはや存在していない。同様に旧オスマン帝国の領域を指す「近東」概念もその有効性をすでに完全に喪失した。現在では「西アジアおよび北アフリカ」地域と呼ぶべき同地域において、(1)米国の影響が度重なる失政によってますます周辺化していること、(2)その間隙を埋める域外大国としてロシアと中国が急速に台頭していること、(3)域内の主要な外交アクターとしてイランとトルコが影響力を強めていること、以上の3つの顕著な傾向を指摘することができる。こうした前提でトルコ・イラン関係をみる時、両国関係が地域的な安定にもたらす影響はどのようなものだろうか。その場合両国間の歴史的な長いライバル関係や対立関係にもかかわらず、20世紀以降の時代における両国関係は比較的良好なままに推移してきた。1979年のイラン革命直後の一時期はその例外であって、この時期には世俗主義的なケマル主義との齟齬が前面に出ていた。近年においてイラン・トルコ関係が大きく変化したのはトルコの親イスラーム政党である公正発展党(AKP)の2002年における躍進以降である。1996年に政権に就いた後、イランとの大幅な接近を試みたものの政権基盤が比較的脆弱だったエルバカン首相時代から、AKPの政権運営の下で軍部など世俗エリート層との抗争を経て、さらにエルドアン大統領のもと権力の集中が進むと、両国関係の深化は経済関係から安全保障分野までに広く及ぶ新たな段階を迎えるに至った。本論稿では以上の展開を近年の対クルディスタン問題やシリア問題、対米関係およびトルコのNATO加入などの文脈で具体的に検証し、最後に結論部で「アラブの春」以降の地域再編のなかで両国間の互恵に基づく広範な連携関係が積極的に果たしうる役割について展望する。(文責・鈴木均)
著者
北野 浩一
出版者
独立行政法人 日本貿易振興機構アジア経済研究所
雑誌
ラテンアメリカ・レポート (ISSN:09103317)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.70-83, 2019 (Released:2019-03-07)
参考文献数
14

チリでは2000年代以降近隣国からの移民が拡大していたが、2017年からは首都サンティアゴにおいてハイチとベネズエラからの移民の急増が大きな社会現象となっている。移民のプル要因としては、所得面と治安面で出身国とチリとの格差が拡大していることがあげられる。移民に対して極端な排斥の動きが出ている国もあるが、チリでは高齢化する労働力を補い成長の原動力と位置づける意見が政府から出され、違法滞在者の取り締まりを強化する一方、合法的な受け入れ体制が整備され始めている。労働力不足が顕在化している今のうちに、移民の同化政策をすることが肝要である。
著者
三浦 航太
出版者
独立行政法人 日本貿易振興機構アジア経済研究所
雑誌
ラテンアメリカ・レポート (ISSN:09103317)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.1-15, 2020 (Released:2020-01-31)
参考文献数
22

本稿は、2019年10月中旬以来チリで発生した社会危機を、2011年の学生運動や新しい左派勢力という視点から検討する。軍政下に導入され民主化後も継続してきた既存の政治経済社会システムは、経済格差や社会と政治の乖離を生み出し、それは市民の不満の蓄積、そして近年の抗議行動の増加へとつながった。2011年に大規模な学生運動が発生したことや、そこから生まれた新しい左派勢力である広域戦線が2017年総選挙で台頭したことは、2019年の社会危機の以前から既存のシステムに対する問題提起がなされていたことを示している。これまで学生運動や新しい左派勢力が示してきた変革への意思は、2019年の社会危機を通じてチリの多くの人々からも示され、新憲法制定に向けた合意へとつながった。2020年4月には新憲法をめぐる国民投票が実施される。既存のシステムを修正して維持するのか、新しいシステムへ変革していくのか、チリは大きな岐路に立たされている。
著者
中原 篤史
出版者
独立行政法人 日本貿易振興機構アジア経済研究所
雑誌
ラテンアメリカ・レポート (ISSN:09103317)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.17-34, 2018-07-31 (Released:2019-03-07)
参考文献数
20

ホンジュラスの政権与党である国民党は、憲法で禁止されていた再選を最高裁に対する異議申し立てを通して可能にした。それにより第2期目のエルナンデス政権が誕生した。しかし、この再選は憲法違反とする市民の強い批判に加えて、大統領や政権幹部、国民党も絡んだ汚職問題や無処罰への批判により、市民による反汚職、反政権の抗議行動が発生し始めた。その特徴として、それまでは政治に対する関心が比較的薄く、従来はこうした抗議活動には参加しなかった一般市民が、SNSなどを通じてつながり、社会正義をかかげて参加しているという点が指摘できる。本稿では第1期のエルナンデス政権のガバナンスを振り返ると共に、任期中に発覚した数々の汚職問題、軍・警察の腐敗問題と、市民から憲法違反と批判されながら国民党の強引な手法で実現した大統領の再選問題を取り上げる。そしてそれに対して社会正義を問い抗議活動を行うホンジュラス市民社会の活動を概観する。
著者
佐藤 章
出版者
独立行政法人 日本貿易振興機構アジア経済研究所
雑誌
アフリカレポート (ISSN:09115552)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.1-13, 2017-01-25 (Released:2020-03-12)
参考文献数
25

この十数年あまり西アフリカでは、イスラーム・マグレブのアル=カーイダ(Al-Qaida in the Islamic Maghreb: AQIM)をはじめとするイスラーム主義武装勢力の活発な活動が見られる。これらの組織の活動は、サハラ・サヘル地帯における治安・安全保障上の問題を提起するにとどまらない。そこでは、イスラーム主義武装勢力が、現代西アフリカの政治的・社会的変動に照らしていかなる意味を持つのかという問題も提起されているのである。そこで本稿は、こういった歴史的評価に関わる問題を掘り下げるための基礎的作業として、AQIMとその系列組織に焦点を合わせ、西アフリカへの進出の経緯、マリ北部への定着の様子、マリ北部紛争への関与、その後の動向を検討したい。その際、「グローバルなテロ組織」といった観点からの研究が陥りがちな視点の偏りを避けるため、これらのイスラーム主義武装勢力が社会とどのような関係を取り結んでいたかにとくに注目し、検討を行う。
著者
岩崎 えり奈
出版者
独立行政法人 日本貿易振興機構アジア経済研究所
雑誌
アジア経済 (ISSN:00022942)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.35-67, 2020-03-15 (Released:2020-04-01)
参考文献数
48

本稿では,チュニジア南部タタウィーン県の村において実施した家族計画実態調査の追跡調査を用いて,過去20年間における同地域の女性の出生行動をミクロな視点から分析した。その結果,同地域における出生率の低下と女性の出生行動に関して,晩婚化による晩産化と,家族計画・避妊手段の普及を直接的な要因として女性の出生数が低下したこと,娘世代が20代前半で結婚し,第1子を結婚後1年以内に産む点は母親世代と同じだが,第1子出産後に間隔をあけて子どもを産む傾向があること,理想子ども数を4人とする家族規模に関する価値観は20年の歳月がたっても変わらなかったことが明らかになった。以上の分析結果は,出生率の低下が一般に想定される近代的な家族観への変容によってもたらされたのではないことを示している。社会経済状況への女性と世帯の対応が「晩婚化」と「晩産化」,観念的には折衷の理想子ども数4人であり,間隔をあけて子どもを産む出生行動を導いていると考えられる。
著者
菊池 啓一
出版者
独立行政法人 日本貿易振興機構アジア経済研究所
雑誌
ラテンアメリカ・レポート (ISSN:09103317)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.1-12, 2019 (Released:2019-07-31)
参考文献数
11

本稿はボルソナロ政権下における大統領・議会関係の特徴を検討したものである。2018年総選挙におけるボルソナロの当選や下院選・上院選での社会自由党の躍進、労働者党・ブラジル社会民主党・ブラジル民主運動の議席の減少は既存の政党政治に対する不信の産物であった。そのため、ボルソナロは比例代表制・多党制・大統領制という組み合わせによって生み出される連立政権に特徴づけられる「連合大統領制」を否定して議員連盟との協力による閣僚任命を行ったが、政党連合を基盤としない大統領・議会関係は不安定であり、議会が政権運営の障害となるケースも出てきている。2019年4月頃から政権側による他党との歩み寄りの模索がみられるが、「連合大統領制」への回帰による大統領・議会関係の安定化と政権の一層の支持率の低下というジレンマの中でボルソナロ大統領がどのような選択をしていくのかを、今後注視していく必要がある。
著者
上谷 直克
出版者
独立行政法人 日本貿易振興機構アジア経済研究所
雑誌
ラテンアメリカ・レポート (ISSN:09103317)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.51-70, 2020 (Released:2020-01-31)
参考文献数
15

2019年の5月にV-Dem(Varieties of Democracy)研究所から発行された年報『Democracy Facing Global Challenges-V-Dem Annual Democracy Report 2019』によると、昨年のレポートでここ約10年の世界の民主政の特徴として指摘された、「民主主義の後退(democratic backsliding)」や「専制化(autocratization)」傾向が相変わらず続いているという。中南米地域についても、引き続き「専制化」が指摘されるニカラグアやベネズエラ、「後退」するブラジルに加え、新たにハイチやホンジュラスでも「後退」や「専制化」傾向が認められた。そこで本稿では、そうして「専制化」するホンジュラスや、隣接するグアテマラ、エルサルバドルの、いわゆる中米の北部三角地帯諸国(Northern Triangle of Central America、以下NTCs)の「民主主義」の現状について、V-Demの様ざまな指標の変化に着目しつつ、報告する。