- 著者
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大沼 貴之
- 出版者
- 一般社団法人 日本応用糖質科学会
- 雑誌
- 応用糖質科学:日本応用糖質科学会誌 (ISSN:21856427)
- 巻号頁・発行日
- vol.6, no.1, pp.15-20, 2016-02-20 (Released:2019-03-18)
キチナーゼに関する研究は,酵素反応によるバイオマスであるキチンの低分子化および生理活性を示すキチンオリゴ糖生産の効率化を目的として,これまで主に微生物が生産するファミリーGH18キチナーゼを用いて行われてきた.その成果として,本酵素が強固な結晶構造をもつキチンをプロセッシブ分解する仕組みの解明や,"基質補助機構"と呼ばれる触媒反応機構を巧みに利用した糖転移反応によるオリゴ糖合成法の確立などが挙げられる.一方植物も構造的に多様なキチナーゼを生産するが,植物由来キチナーゼの構造機能相関およびその有効利用に関する研究はあまり進んでいなかった.本総説では筆者らが植物キチナーゼに焦点を当てて行った以下の研究の成果,(1)GH19キチナーゼ-基質複合体の立体構造の決定およびグライコシンターゼへの変換とそれらを利用したキチンオリゴ糖の化学-酵素合成法の確立,(2)植物クラスVキチナーゼの立体構造の決定と糖転移反応を増強した変異型酵素の開発,(3)キチンに結合性を示すLysMドメインの機能解析,について報告する.