著者
碓氷 泰市 村田 健臣 朴 龍洙 鈴木 隆 左 一八
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

インフルエンザウイルスの感染、接着に関わる特定の受容体シアロオリゴ糖鎖を高い効率且つ単純な手法で高密度に天然素材ポリペプチドである納豆菌由来γ-ポリグルタミン酸ベースに配して抗原性の変異を克服しかつトリ型およびヒト型インフルエンザウイルスに対応した強力な抗インフルエンザウイルス剤を構築した。また、感染阻害試験の結果から両型の受容体糖鎖特異性は末端シアル酸の結合様式において異なるだけでなく、そのコアとなる内部糖鎖構造も活性に大きく関与していることを実証した。
著者
坂田 完三 碓氷 泰市 渡邊 修治
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1995

1)烏龍茶のアルコール系香気生成機構の分子レベルでの解明:我々が確立したアルコール系香気前駆体検出法を用いて,烏龍茶水仙種および毛蟹種の殺青葉から,アルコール系香気前駆体を単離,構造決定し、これらのほとんどが2糖配糖体(β-primeverosides)であることを明らかにした.ついで,予備検討として,入手が容易な緑茶用品種やぶきた種新鮮葉からアルコール系香気生成酵素を精製し、本酵素がβ-primeverosidesを特異的に認識して加水分解し,アルコール系香気とprimeveroseを生成する酵素β-primeverosidaseであることを明らかにした.さらに,p-nitrophenyl β-primeveroside(pNP-Pri)を合成することができたので,これを用いて中国から入手した烏龍茶水仙種および日本産やぶきた種の新鮮葉中の香気生成酵素の精製を行い,これらがSDS-PAGEにて61KDaに単一バンドを示すほとんど同一の酵素であることを明らかにした以上のようにして,茶葉におけるアルコール系香気生成機構を分子レベルで明らかにすることができた.2)茉莉花の香気生成機構の分子レベルでの解明:ジャスミン茶の製造に用いられている茉莉花から,linaloolと2-phenylethanol,benzyl alcoholの2糖配糖体を香気前駆体として単離同定した.また茉莉花の開花直後の花から調製したアセトンパウダーの可溶化,カラムクロマトグラフィー等による部分的精製の結果,香気生成酵素は,グリコシダーゼで,本酵素は少なくとも3種類存在し,これらの酵素は2糖配糖体をアグリコンとグリコシド結合のみを加水分解して香気成分へと変換することを明らかにした.3)pNP-Priの酵素合成:香気生成酵素研究に不可欠な基質であるpNP-Priの酵素合成を行った.市販のpNP-β-D-glucophyranoside(pNP-Glc)を受容体基質,xylobioseを供与体基質として市販の酵素をスクリーニングしたところ,Pectinase Gに糖転移活性を認められた.部分精製した酵素を用いてpNP-Priの酵素合成が行えることを見いだした.この基質を手に入れることで,上記の研究は飛躍的に進展した.
著者
碓氷 泰市
出版者
静岡大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

1.細胞膜表面ミメティックスの作製細胞膜表面糖鎖を模倣した糖鎖分子集合体(クラスター化)の構築のため、新規ジスルフィド双頭型配糖体の合成を行った。具体的には、スペーサー部構造の異なる種々の革アセチルラクトサミン(LacNAc)配糖体を4,4'-dithiodibutyd cacidの両末端カルボキシル基に対して導入することで、各種LacNAc含有ジスルフィド双頭型配糖体を得た。また、これら双頭型配糖体は種々の糖転移酵素により糖鎖伸長が可能であり、α2,6-およびα2,3-シアリルトランスフェラーゼを用いることで双頭型配糖体の糖鎖部をヒト型やトリ型インフルエンザウイルスが認識する細胞膜表面糖鎖に変換可能であることを実証した。2.局在表面プラズモン共鳴法の確立金基盤上にジスルフィド基を用いて双頭型配糖体を固定化することで、ラベル化が不要な糖鎖固定化バイオセンサーを構築する事を目的として、金ナノ粒子修飾局在表面プラズモン共鳴(LSPR)基盤上への糖鎖の固定化を行った。蛍光顕微鏡を用いた観察では、LacNAc構造を認識する蛍光標識レクチン(デイゴマメレクチン;ECA)との糖鎖構造特異的な結合が観察された。また、LSPRにLacNAc含有ジスルフィド:双頭型配糖体固定化金基盤を用いたところ、糖鎖固定化によりECA(非標識)との相互作用問における最大吸光強度や最大吸収波長に違いがみられた。興味深いことに、この糖鎖-レクチン間相互作用における最大吸光強度や最大吸収波長は固定化糖鎖であるLacNAc含有ジスルフィド双頭型配糖体のスペーサー構造(アルキル鎖長など)によっても変化する事が示された。また、酸性糖であるシアロ型糖鎖を固定化した場合は、中性糖のときとは異なる光学特性を示すことも明らかとなった。以上の結果より、金ナノ粒子修飾LSPR法を用いることで、ラベル化が不要な糖鎖固定化バイオセンサーを開発した。さらに、高感度の光学的バイオセンサーを設計する際に、本糖鎖プローブの糖鎖構造及びスペーサー構造の重要性が示された。