著者
呉地 正行 横田 義雄 大津 真理子
出版者
The Ornithological Society of Japan
雑誌
(ISSN:00409480)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2-3, pp.95-108, 1983-10-25 (Released:2007-09-28)
参考文献数
6
被引用文献数
2 2

(1)日本に渡来するヒシクイ Anser fabalis の各個体群の亜種調査を行うために,ヒシクイ A. f. serrirostris とオオヒシクイ A. f. middendorfi の野外識別の可能性を検討した.(2)この2亜種は形態的相違が顕著で,生態的にも異なる点が多く,野外観察でも識別可能である.至近距離の場合は嘴の形態のみで,遠距離(約1km)の場合でも25倍の望遠鏡を用いれば,嘴峰/頭長比〓1,嘴峰/嘴高(基部)比〓2,頭•嘴部全体の形態の相違,などの形態的比較や,鳴き声の相違などの生態的比較により亜種を識別できる.(3)野外識別法により得られた結果と,同一地域で採取された標本調査の結果は,よく一致した. 例えば,宮城県下の個体群は A. f. serrirostris が,また新潟県下のものは A. f. middendorfi が大多数を占めるという結果が,両方法から得られた.