著者
青木 佑介 大湾 一郎 伊佐 智博 森山 朝裕 金城 聡 西田 康太郎
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.678-680, 2020

<p>【目的】85歳以上の大腿骨頚部骨折に対し人工骨頭置換術を施行した症例において,術前の心機能が術後の歩行能力や生命予後に影響するかを確認するために調査を行った.【対象・方法】2015年7月から2018年6月末までに85歳以上で転位型大腿骨頚部骨折に対し人工骨頭置換術を施行した53例を対象とした.全例に受傷前・術後の歩行能力,術後の転帰について電話による調査を行った.歩行能力は,独歩,杖歩行,歩行器歩行,車椅子の4段階に分類した.術後の歩行能力は退院後最も改善した時の歩行能力とし,歩行能力維持群,低下群の2群に分類し,年齢,左室駆出率,死亡率について検討を行った.さらに,調査時の生死によって生存群,死亡群の2群に分類し,年齢,左室駆出率(Ejection Fraction[以下EF])について検討を行った.【結果】歩行能力維持群と低下群では,年齢,EF,死亡率に有意差はなかった.生存群と死亡群においても,年齢,EFに有意差はなかった【考察】術前心機能が不良でも術後の心不全合併を予防することができれば,歩行能力や生命予後への影響はほとんどないと考えられた.</p>
著者
青木 佑介 伊佐 智博 森山 朝裕 金城 聡 大湾 一郎 仲宗根 哲 西田 康太郎
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.625-627, 2020

<p>レボフロキサシン服用後にアキレス腱断裂を受傷した若年患者の1例を経験したので報告する.【症例】32歳女性.10歳時に全身性エリテマトーデスを発症し,以降22年間ステロイド剤を使用していた.急性咽頭炎に対してレボフロキサシンの服用を開始し,翌日より両下腿後面に軽度の疼痛が出現した.レボフロキサシンはその後計7日間内服を継続し服用を終了した.服用終了後両下腿後面の疼痛は一時消失するも,内服終了3週間後,歩行中に左下腿後面に疼痛,腫脹,皮下出血が出現し,当科を初診した.左アキレス腱断裂と診断し,底屈位固定による保存療法を8週間行った.受傷後2か月のMRIではアキレス腱の連続性が認められた.受傷後8か月の時点で再発なく経過している.【考察】ステロイド使用歴のある患者に対してはニューキノロン系薬剤の使用に際してはアキレス腱断裂の副作用を念頭に置く必要があると考えられた.</p>
著者
青木 佑介 山口 浩 伊佐 智博 森山 朝裕 金城 聡 大湾 一郎 西田 康太郎
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.578-581, 2020

<p>合併症により保存的に加療した2-part上腕骨近位端骨折で20°以上の内反変形をきたすも機能予後が良好であった3例を経験した.【症例1】51歳女性.転倒し受傷.頚体角は受傷時115°,受傷後4週95°と内反変形の進行を認めた.超音波骨折治療を行い受傷後6カ月で骨癒合した.【症例2】82歳女性.転倒し受傷.頚体角は受傷時110°,受傷後4週100°と内反変形の進行を認めた.受傷後6カ月で骨癒合した.【症例3】81歳女性.転倒し受傷.頚体角は受傷時130°,受傷後6週105°と内反変形が進行し遷延癒合を認めた.テリパラチド投与を行い受傷後4カ月で骨癒合した.3症例とも長期間リハビリテーションを行い屈曲が健側の80%以上の可動域に回復した.【考察】長期間リハビリテーション継続可能な症例では,内反変形が残存しても機能障害は少ない可能性が考えられた.</p>
著者
新垣 薫 大湾 一郎 砂川 憲政 大嶺 啓 山口 健 城間 隆史 池間 康成 金谷 文則
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.228-232, 2007 (Released:2007-06-01)
参考文献数
8

人工股関節置換術後の股関節部痛の鑑別疾患として人工関節の感染,臼蓋コンポーネントのloosening,恥骨の不顕性骨折,腰椎疾患,腹部疾患などがある.今回,人工股関節置換術後に鼠径部痛を来たし,腸腰筋腱炎の診断にて腸腰筋腱切離術を施行し,疼痛が消失した症例を経験したので報告する.症例は57歳,女性.平成11年右THA,平成12年左THAを施行し,右THA術後4カ月頃より右鼠径部痛を自覚.血液検査所見,骨シンチ,関節穿刺液の培養検査より感染は否定的で,鎮痛剤により経過観察したが疼痛改善を認めなかった.関節内への局麻剤の注入にて一時的に症状が改善し,関節造影にて臼蓋カップの前方に腱性索状物が造影され,身体所見と併せて腸腰筋腱炎と診断.手術にて腸腰筋腱の切離を行ったところ術後は鼠径部痛が消失し,現在は疼痛なく経過.人工股関節置換術後の腸腰筋腱炎は臼蓋カップ辺縁が前方に突出する場合に生じることがあり,術後疼痛の鑑別疾患として念頭におく必要がある.
著者
当真 孝 山口 浩 森山 朝裕 大湾 一郎 金谷 文則
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.546-551, 2018

<p>中高齢者の広範囲腱板断裂を合併した反復性脱臼の治療には難渋する.今回,我々の術後成績を報告する.対象は広範囲腱板断裂を伴う反復性肩関節脱臼に対して関節唇・腱板修復術を施行した8例8肩である.内訳は男性5肩,女性3肩,平均年齢は66歳,平均経過観察期間は25カ月であった.術前後の肩関節可動域(以下,ROM)(屈曲・外旋・内旋),日本肩関節学会肩関節不安定症評価法(以下,SISスコア),再脱臼・再断裂を調査した.ROMは術前(屈曲78°・外旋24°・内旋1点)が術後(130°・56°・4点),SISスコアは術前23点が術後73点に改善した.再脱臼はなく,亜脱臼を1例,関節症性変化を1例,腱板再断裂を1例に認めた.広範囲腱板断裂を伴う反復性肩関節脱臼に対する関節唇・腱板修復術は有用な術式と考えられた.</p>
著者
当真 孝 山口 浩 森山 朝裕 大湾 一郎 金谷 文則
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.364-366, 2018

<p>外傷後急速に破壊が進行した肩関節症に対し,人工肩関節全置換術を行った症例を報告する.84歳,女性.1.5カ月前に転倒,右肩関節を打撲した.近医を受診し単純X線像では異常は指摘されなかった.その後,疼痛が増悪したため,当院を紹介された.初診時所見は,肩関節屈曲10度,外旋-30度,内旋L1,JOA scoreは36点であった.当院初診時単純X線像,CTでは上腕骨頭の扁平化,関節窩骨欠損を認めたが,MRIでは腱板断裂を認めなかった.急速破壊型関節症と診断し,関節窩骨欠損部への骨頭骨移植を併用した人工肩関節置換術を施行した.術後24カ月で疼痛はなく,肩関節可動域は屈曲130度,外旋40度,内旋L1(健側は屈曲130度,外旋40度,内旋Th8)でJOA scoreは85点まで改善した.</p>
著者
当真 孝 山口 浩 森山 朝裕 大湾 一郎 金谷 文則
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.11-15, 2018
被引用文献数
1

<p>我々は,腱板断裂関節症(Cuff Tear Arthropathy:以下CTA)に対し,小径人工骨頭置換(Small Humeral head replacement:以下s-HHR)と腱板修復術または筋腱移行術を施行しているので,その治療成績を報告する.対象は術後1年以上経過観察可能であった17例17肩.平均年齢は73.9歳,性別は男性5肩,女性12肩.術式はs-HHR+腱板修復術7肩,s-HHR+筋腱移行10肩(肩甲下筋部分移行2肩,大胸筋移行術8肩).調査項目は,日本整形外科学会肩関節疾患治療判定基準(以下JOAスコア),平均肩関節可動域(屈曲,外旋,内旋:JOAスコアを用いて点数化),とした.結果はJOAスコアが術前45点から術後79点,術前屈曲55度,外旋26度,内旋1.6点から,術後屈曲123度,外旋26度,内旋3.7点と改善した.CTAに対するs-HHRおよび腱板修復術または筋腱移行は,有用な術式と考えられた.</p>