著者
大滝 一登
出版者
全国大学国語教育学会
雑誌
国語科教育 (ISSN:02870479)
巻号頁・発行日
vol.90, pp.17-25, 2021-09-30 (Released:2021-10-20)
参考文献数
36

本稿は、高等学校「現代国語」新設において「作文の能力」が重視された高等学校独自の背景や改革の経緯を考察し、その到達点を明らかにするものである。特に、当時国が有していた情報と問題意識、改訂に関わった研究者の見解に着目し検討を行った。そこで明らかとなったのは、科学技術立国を目指す社会情勢の中、高等学校の作文教育の低調さを示す調査資料の存在、作文を重視しアメリカで注目されていた「コナント・レポート」への傾倒、コンポジション理論の導入を積極的に進めた森岡健二の作文教育観と、言語過程説に基づき独自の作文教育理論を構築しようとした時枝誠記のそれとが混在した形で指導事項として示されたと考えられる我が国独自の「作文の能力」観であった。