著者
早川 正道 増田 毅 比嘉 功 小山 雄三 秦野 直 小田 正美 大澤 炯
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.80, no.1, pp.28-34, 1989-01-20
被引用文献数
1

我々は3例の進行性腎癌患者に対して,2つの異なったtypeのLAK細胞の分割動注とrIL-2の全身投与を併用した養子免疫療法を行ったので,その効果について報告する.リンパ球分離を週1回行い,ついでPercollを用いた密度勾配遠心法でリンパ球を2つのサブタイプに分け,おのおのをrIL-2と共に培養してLAK細胞を誘導した.転移巣の栄養血管を介してLAK細胞を週2回動注した.3例中1例において,上臀動脈を介してLAK細胞を3ヵ月間動注することにより腸骨転移巣が明らかに消失した.また腰動脈へのLAK細胞動注により,腸腰筋と傍大動脈リンパ節転移の消失および腰椎転移巣の縮小が得られた1例を経験した.他の1例では,脳転移に対して内頚動脈よりLAK細胞を動注したが,脳浮腫が増悪し中止となった.LAK細胞の動注療法は,転移性腎癌の治療に有用であり,今後とも期待される方法と考えられた.
著者
宍戸 清一郎 早川 正道 比嘉 功 小山 雄三 秦野 直 大澤 炯
出版者
泌尿器科紀要刊行会
雑誌
泌尿器科紀要 (ISSN:00181994)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.401-405, 1990-04

From March, 1986 through June, 1988, the reduced M-VAC (methotrexate, vinblastine, doxorubicin, and cisplatin) regimen was used to treat 6 patients with metastatic or locally invasive transitional cell carcinoma of renal pelvis and ureter. Out of 5 evaluable patients with advanced stages (N+ and/or M+) pathological complete remission and partial remission were observed in one patient each and minor remission in two patients inspite of our reduced regimen according to performance status of the patients. Toxicity was rather mild except in one patient who showed severe myelosuppression. This regimen seems to give favorable antitumor activity against transitional cell carcinoma of upper urothelium.
著者
秦野 直 小山 雄三 早川 正道 小川 由英 大澤 炯
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.88, no.6, pp.624-631, 1997-06-20
被引用文献数
1

(目的)嚢胞性腎疾患に合併した腎癌の予後を検討した。(対象と方法)1994年,嚢胞性腎疾患に合併した腎癌の予後に関する全国調査をおこない,集計された216名を対象とし統計学的検討をおこなった。(結果)嚢胞性腎疾患の内訳は,単純性腎嚢胞69名,多嚢胞化萎縮腎61名,嚢胞状腎癌54名,多房性腎嚢胞19名,嚢胞腎3名,その他9名,不明1名であった。全体の五年生存率は84%ときわめて良好であった。性別および年齢別の予後に有意差は認めなかった。腎癌に起因する症状のないもの(65%)は症状のあるもの(35%)に比して有意に予後が良好であった。嚢胞の種類別では,ACDKの予後が最も不良で,嚢泡状腎癌が最も良好であり2群間に有意差を認めたが(Log-Rank検定),その他の嚢胞間に有意差はなかった。TNM分類では,pTI+2が全体の87%をしめ,一般の腎癌の報告に比べ多かった。このため今回の集計で予後が良好であったと考えられる。また嚢胞穿刺液の細胞診陽性群では陰性群に比し,有意に予後が不良であった。しかしながら嚢胞穿刺群と非穿刺群との予後に差はなかった。(結論)嚢胞性腎疾患に合併した腎癌では,一般の腎癌の統計に比較し予後は良好であった。嚢胞穿刺が播種をひきおこし,予後を悪化させる可能性を示唆するデータはなかった。