著者
佐藤 隆一 鈴木 敦生 小池 和幸 大澤 貴子 斎藤 啓二 竹田 誠 鈴木 富子
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.C0930-C0930, 2005

【目的】中学校での部活動におけるスポーツ障害とその後の実態を把握するために,我々は,市内の中学3年生を対象とした「部活動中に発生したケガに関するアンケート」調査を行い,第39回日本理学療法学術大会において概要を報告した.今回は,部活動引退後もなお「痛み」を訴える生徒の存在に着目し,検討を加えたので報告する.<BR>【方法】市内全中学校12校の3年生1613名(回収率92.8%)のうち,運動部に在籍していた1081名(男子654名,女子427名;運動部在籍率67.8%)を対象に「部活動中に発生したケガに関するアンケート」調査を無記名選択式(一部記述)質問票を用いて行った.アンケート調査時点で,部活動引退後男子平均3.2ヶ月,女子平均3.4ヶ月が経過していた.本研究では1.部活動引退後の痛みの有無,2.部活動中の受傷経験,3.部位,4.治療の有無などの項目について分析した.<BR>【結果】アンケート調査時点で「痛み」を訴えた生徒は,男子22.2%,女子は20.5%であった.部位は男子では膝関節(32.1%),腰部(21.1%),足関節(11.1%),女子では腰部(27.5%),膝関節(26.1%),足関節(20.1%)の順に多かった.現在,痛みのある部位と同じ部位のケガを部活動在籍中に受傷した経験のある生徒は,男子64.6%(部位内訳;腰部26.5%,膝関節25.0%,足関節10.9%),女子65.4%(膝関節34.1%,足関節24.4%,腰部21.9%)であり,受傷経験がないと回答した生徒は,男子35.4%(膝関節40.4%,腰部17.0%,足関節10.6%),女子34.6%(腰部35.3%,膝関節14.8%,足関節14.8%)であった.<BR> また調査時点で痛みに対する治療を受けている生徒は男子32.3%,女子37.3%であった.<BR>【考察】今回のアンケート調査では約20%の生徒が部活動引退後も「痛み」を訴えていた.「痛み」は,部活動中に受傷したケガと同一部位に生じている場合と,ケガとして認識されずに受傷経験はないと判断されている場合に分けられ,性別・部位によりその傾向は異なっていた.<BR> 「痛み」には成長期に特有の身体的変化から生じた筋・腱の過緊張状態や柔軟性の低下,骨アライメントの変化により二次的障害として引き起こされるものや,痛みやケガを経験的・習慣的に処置したり,無治療のまま経過することで慢性化するものがあると考えられ,それらが引退後の痛みの原因となっていると推察される.<BR> 青木らにより約16%の生徒がスポーツ障害を抱えたまま高校に進学し運動部に入部していることが報告されていることからも,引退後も継続したメディカルチェックが重要であり,今後もこれらの情報を学校側へ提供し,学校全体で「ケガ」に対する意識を高め,予防と再発防止に取り組むことを促していきたい.
著者
小澤 哲也 大澤 貴子 大山 由廉 中村 彩菜 霜田 直史 守田 誠司 澤本 徹 石塚 久美子 白石 尚子 村山 ゆかり 岸本 美保 川口 留佳 佐藤 隆一
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.121, 2017

<p>【背景】</p><p>近年、人工呼吸器装着(MV)患者に対する離床の開始基準や実施基準が明確化されているが、離床時のリスクの層別化に関する報告は少ない。そこで本研究は離床時のリスクを層別化した離床プログラムの安全性を検討することを目的とした。</p><p>【方法】</p><p>当院救命救急センターに入院となり、離床プログラムに基づいてベッドアップ、端座位および車椅子乗車を実施したMV 患者5 例(男性5 例、年齢77 ± 11 歳、肺炎4 例、多発外傷1 例、APACHE2 スコア25.8 ± 1.5 点)、28 回の離床を対象とした。離床時のリスクの層別化として、人工呼吸器の設定(FiO<sub>2 </sub><0.6、PEEP <10cmH<sub>2</sub>O、PaO<sub>2</sub>/FiO<sub>2</sub> ratio >150)、高用量の強心薬を使用していないこと、バイタルサイン(SpO<sub>2 </sub>>88%、HR40-130bpm、sBP80-180mmHg、RR10-40bpm、体温<</p><p>38.5℃)の3 つの大項目を指標とし、基準を満たした大項目の数によって、3 項目をlow risk(LR)、1 ~2 項目をmoderate risk(MR)、0 項目をhigh risk と分類した。なお、high risk の場合は離床は実施しなかった。アウトカムは離床実施前後の血圧、心拍数、酸素飽和度、呼吸回数およびそれぞれの変化量と20 分の離床が完遂できたか否かとした。解析方法は各離床をLR とMR に分類し、アウトカムを対応のないt 検定とχ2 乗検定で比較した。なお、有意確率は5% 未満とした。本研究は当院倫理委員会の承認を得て実施した。</p><p>【結果】</p><p>離床のリスク分類はLR 18 回、MR10 回であった。LR はMR の離床に比較して20 分の離床完遂率(LR vs. MR: 50% vs.</p><p>10%)、PF ratio(171 ± 17 vs. 131 ± 17)、体温(37.1 ± 0.5 vs. 37.7 ± 0.7℃)、離床後のSpO<sub>2</sub>(97 ± 3 vs. 95 ± 3 %)に有意差を認めた(p <0.05)。それ以外の項目に有意差は認めなかった(p >0.05)。</p><p>【結論】</p><p>LR とMR のMV 装着下の離床は著しい呼吸循環動態の悪化を招くことはないが、MR の離床は離床時間の調整などが必要である。</p>
著者
佐藤 隆一 鈴木 敦生 小池 和幸 大澤 貴子 斎藤 啓二 江端 広樹 竹田 誠 鈴木 富子
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.C0080-C0080, 2004

【目的】中学生になると部活動を通じて本格的にスポーツを開始する生徒が多く、この時期、スポーツによって生じる様々な損傷や障害は、成長障害や他の二次的障害を引き起こす可能性があるといわれている。当院では部活動中に「ケガ」をした中学生が理学療法の対象となることは少なく、中学生が抱える「ケガ」の実態や件数、その後の状況を知り得る機会がほとんどない。<BR> そこで今回我々は、市内中学3年生を対象とした「部活動中に発生したケガに関するアンケート」調査を実施し、検討したので報告する。<BR>【方法】市内全中学校12校の3年生1613名(回収率93%)のうち、運動部在籍1018名(男子654名、女子427名;運動部67%)を対象に「部活動中に発生したケガに関するアンケート」調査を無記名選択式(一部記述)質問票を用いて行なった。<BR>【結果】部活動中の「ケガ」の発生率は58%;624名(男子370名、女子254名)であった。中学校別の発生率は、A校43%、B校62%、C校57%、D校54%、E校71%F校59%、G校60%、H校68%、I校55%、J校86%、K校62%、L校34%、M校63%であった。また、性別、部活動別に「ケガ」の発生率・再損傷率・調査時点における痛みの発生率をみると、男子サッカー部68%・34%・29%、野球部63%・46%・24%、バスケットボール部74%・41%・20%、ソフトテニス部47%・13%・22%、陸上部66%・29%・27%、卓球部20%・33%・13%、バレーボール部57%・40%・32%、剣道部73%・45%・27%、バドミントン部40%・8%・42%、水泳0%であった。女子は、バスケットボール部84%・47%・22%、バドミントン部35%・27%・23%、ソフトテニス部64%・43%・21%、陸上部67%・46%・30%、バレーボール部68%・50%・28%、剣道部67%・50%・25%、ソフトボール87%・58%・19%、卓球部25%・40%・0%であった。<BR>【考察】今回の調査結果で、部活動中の「ケガ」の発生率は各学校によりばらつきがみられるものの、約60%の生徒が「ケガ」をしていた。また再損傷者は男子で約35%、女子で約40%に上った。これらの「ケガ」の多くは、過熱した練習による「overuse」や試合中の激しいスピードやコンタクトによる外傷性のものの可能性が高いと考えられた。<BR> アンケート調査時点で、多くの生徒は部活動引退から約3ヶ月経過していたが、男女ともに約20%の生徒が何らかの「痛み」を訴えており、それは部活動中の「ケガ」に直接関係するものとは限らなかった。それらの原因に、成長期特有の身体的変化による筋・腱の過緊張状態や柔軟性低下、骨のアライメントの変化が引き起こされ、筋・腱の疼痛が発生したことなどが考えられる。<BR> 今後、これらの情報を学校側へ提供し、学校全体で「ケガ」に対する意識を高め、部活動ごとに「ケガ」の予防と再発防止を徹底し、メディカルチェックを行なう必要性を促していきたい。