著者
大澤 陽子
出版者
日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会
雑誌
耳鼻咽喉科免疫アレルギー (ISSN:09130691)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.43-49, 2020 (Released:2020-06-30)
参考文献数
28

花粉・食物アレルギー症候群(pollen-food allergy syndrome: PFAS)は,「口腔アレルギー症候群」とも呼ばれ,花粉抗原と食物抗原の交差反応によるクラス2食物アレルギーである。症状が口腔粘膜に限局することが多いが,口腔粘膜だけでなく,鼻炎・結膜炎・皮膚炎・呼吸器症状やショックを誘発する場合もある。相同性が高く多種の食物や花粉に共通して存在する抗原(pan-allergen)が原因になることが多く,いったん発症すると様々な花粉や食物にアレルギー反応を起こすようになる。本邦では,PR-10/Bet v1関連蛋白を含むカバノキ科花粉やプロフィリンを含むイネ科花粉によるPFASが多い。スギ花粉単独感作は,PFASのリスクにならない。PFAS原因食物の特異的IgEの証明が困難なことが多く,代用診断として,原因食物と交差反応をする花粉特異的IgEを証明することが推奨される。PFAS予防の基本は抗原除去(食べないこと)であるが,PR-10/Bet v1関連蛋白やプロフィリンによるPFASは,加熱処理により抗原性が喪失し摂取可能となる。しかし,PR-10/Bet v1関連蛋白の代表的抗原であるGly m4(大豆)やLTPによるPFASは加熱処理に抵抗性で注意が必要である。Gly m4特異的IgE測定はすでに保険収載されており活用が期待される。
著者
藤枝 重治 大澤 陽子 坂下 雅文
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.139-148, 2013 (Released:2013-09-02)
参考文献数
26

小児のアレルギー性鼻炎の診断は,5歳未満の未就学児において難しい.とりわけ3歳未満は,感染性の鼻炎との鑑別がつきにくく困難を要する.実際には,抗原特異的IgEの検出と詳細な問診が必要である.最近本邦では,アレルギー性鼻炎の低年齢化が問題となっている.我々は1歳6ヵ月検診(408名)を利用した疫学調査を行った結果,ダニ・ネコ・スギいずれかの抗原特異的IgE陽性者は,計10.7%であった.また鼻汁中好酸球陽性者は,7.1%であり,両者が陽性であったのは2%であった.最近,小児において数種類の第二世代抗ヒスタミン薬が保険適応になり,治療しやすくなった.鼻閉に関しては抗ロイコトリエン薬,鼻噴霧用ステロイドの併用が良い.スギに関しては舌下免疫療法が保険申請中であり,12歳以上は治療の選択が広がる.