著者
近藤 健二
出版者
日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会
雑誌
耳鼻咽喉科免疫アレルギー (ISSN:09130691)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.261-265, 2017 (Released:2017-09-28)
参考文献数
25
被引用文献数
1
著者
大澤 陽子
出版者
日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会
雑誌
耳鼻咽喉科免疫アレルギー (ISSN:09130691)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.43-49, 2020 (Released:2020-06-30)
参考文献数
28

花粉・食物アレルギー症候群(pollen-food allergy syndrome: PFAS)は,「口腔アレルギー症候群」とも呼ばれ,花粉抗原と食物抗原の交差反応によるクラス2食物アレルギーである。症状が口腔粘膜に限局することが多いが,口腔粘膜だけでなく,鼻炎・結膜炎・皮膚炎・呼吸器症状やショックを誘発する場合もある。相同性が高く多種の食物や花粉に共通して存在する抗原(pan-allergen)が原因になることが多く,いったん発症すると様々な花粉や食物にアレルギー反応を起こすようになる。本邦では,PR-10/Bet v1関連蛋白を含むカバノキ科花粉やプロフィリンを含むイネ科花粉によるPFASが多い。スギ花粉単独感作は,PFASのリスクにならない。PFAS原因食物の特異的IgEの証明が困難なことが多く,代用診断として,原因食物と交差反応をする花粉特異的IgEを証明することが推奨される。PFAS予防の基本は抗原除去(食べないこと)であるが,PR-10/Bet v1関連蛋白やプロフィリンによるPFASは,加熱処理により抗原性が喪失し摂取可能となる。しかし,PR-10/Bet v1関連蛋白の代表的抗原であるGly m4(大豆)やLTPによるPFASは加熱処理に抵抗性で注意が必要である。Gly m4特異的IgE測定はすでに保険収載されており活用が期待される。
著者
都築 建三 橋本 健吾 池田 ゆうき 阪上 雅史
出版者
日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会
雑誌
耳鼻咽喉科免疫アレルギー (ISSN:09130691)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.221-224, 2016 (Released:2016-12-28)
参考文献数
9

標準化スギ花粉エキス(シダトレン®)を用いた舌下免疫療法(sublingual immunotherapy: SLIT)の初回投与後に副反応を生じた症例を報告する。46歳女性。主訴は鼻汁,鼻閉。既往歴に食物アレルギー,気管支喘息(最近5年間発作なく呼吸機能正常),慢性副鼻腔炎(術後)があった。SLITの適応は,当院のリウマチ・膠原病内科および皮膚科コンサルトして慎重に決定した。スギ花粉非飛散期に入院して副反応に対する準備の上SLIT導入した。初回投与日の全身状態は良好であった。規定のプロトコール通り,シダトレン®(40 JAU/0.2 mL)を医師が初回投与した。アレルゲン曝露2~5分後に,皮膚・粘膜症状(頸部~頬部),消化器症状(口腔咽喉頭違和感),呼吸器症状(息苦しさ),循環器症状(血圧低下)を呈した。意識障害はなかった。過去に経験した食物アレルギーに伴うアナフィラキシーよりも軽度であったが,これらの反応はアナフィラキシー(グレード3)と考えられた。水うがい,β2受容体刺激薬吸入を行い,アレルゲン曝露の30分後にはこれらの症状は消失した。増量期は入院してプロトコール通りの投与量で行った。2日目以降は,アナフィラキシー反応は認めなかった。維持期となり退院した。SLIT開始から1年経過した現在,副反応を認めず維持療法を継続中である。アレルギー疾患合併症例においては,SLITの導入は慎重な判断と副反応に対する厳重な監督下で行う必要があると考えられた。
著者
西野 宏
出版者
日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会
雑誌
耳鼻咽喉科免疫アレルギー (ISSN:09130691)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.13-18, 2016 (Released:2016-03-30)
参考文献数
67

Interleukin-6(IL-6)は代表的な炎症性サイトカインである。IL-6は炎症のみならず癌細胞の生物学的活性に影響を与える。細胞増殖,細胞死抵抗性,浸潤,血管新生,転移,免疫,幹細胞,悪液質に関与していることがわかってきた。IL-6は多くの癌細胞において癌細胞活性を高め,腫瘍形成と転移に関与する重要なサイトカインである。この総説では簡潔にその働きを述べる。
著者
鈴木 祐輔 太田 伸男 倉上 和也 古川 孝俊 千田 邦明 八鍬 修一 新川 智佳子 高橋 裕一 岡本 美孝 欠畑 誠治
出版者
日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会
雑誌
耳鼻咽喉科免疫アレルギー (ISSN:09130691)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.193-200, 2015 (Released:2015-09-25)
参考文献数
21

鼻噴霧用ステロイド薬は,鼻アレルギー診療ガイドラインにおいて花粉症治療の中心的な薬剤として推奨されている。しかし初期療法としての鼻噴霧用ステロイド薬と,抗ヒスタミン薬を中心とした併用療法の効果について比較した報告は少ない。今回我々は,スギ花粉症患者20 例を鼻噴霧用ステロイド薬(デキサメタゾンシペシル酸エステル)群(DX-CP 群)6 例と,第二世代抗ヒスタミン薬(オロパタジン塩酸塩)にモンテルカストを追加併用した抗ヒ+抗LT 薬群14 例に分け,治療効果につき検討を行った。検討項目は鼻症状,JRQLQ No.1 によるアンケートおよび鼻腔洗浄液のeosinophil cationic protein (ECP) と血管内皮細胞増殖因子(VEGF) の濃度とした。DX-CP 群では飛散ピーク期と飛散終期の鼻症状スコアの上昇を抑え,鼻閉症状では有意にスコアを減少させた。抗ヒ+抗LT 薬群では飛散ピーク期に症状スコアが上昇したが抗LT 薬を併用した飛散終期にはスコアが低下した。QOL スコアではDX-CP 群の飛散ピーク期において抗ヒ+抗LT 薬群に比べ有意にスコアを抑えた。鼻腔洗浄液中のECP 値, VEGF 値はDX-CP 群ではシーズンを通じて値の上昇を抑えた。よってDX-CP は抗ヒスタミン薬や抗LT 薬と同様に季節性アレルギー性鼻炎に対する初期療法薬として非常に有用であると考えられた。
著者
宮部 はるか 川島 佳代子
出版者
日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会
雑誌
耳鼻咽喉科免疫アレルギー (ISSN:09130691)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.253-256, 2013 (Released:2013-12-26)
参考文献数
12
被引用文献数
2

56歳,男性。豆乳摂取後に口腔アレルギー症候群,アナフィラキシー症状を呈し救急搬送された。血清特異的IgE検査でシラカンバ花粉がクラス3,大豆はクラス2であった。prick-to-prick testにて豆乳,豆腐で陽性,またシラカンバの主要抗原であるBet v1が陽性,そのホモログである大豆の主要抗原Glym4が陽性であり,これらの交差反応により発症した豆乳による口腔アレルギー症候群 (oral allergy syndrome; OAS) であると示唆された。豆乳アレルギーの本邦での報告例は全例が花粉症を有しており,豆腐の摂取でアレルギーの既往がない例が多い。また大豆特異的IgE陽性率が低く,診断にはprick-to-prick testが有用である。花粉症の近年の花粉症の増加,健康ブームにより豆乳による口腔アレルギー症候群は今後増加することが予想され,耳鼻咽喉科領域の症状を呈することも多く,注意が必要である。
著者
神前 英明
出版者
日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会
雑誌
耳鼻咽喉科免疫アレルギー (ISSN:09130691)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.259, 2012 (Released:2012-10-12)

「耳鼻咽喉科免疫アレルギー」編集委員会では,本誌に掲載された下記総説①が,先に発表された下記総説②の内容と一部明らかに重複しており,独立した総説として認められないとの結論に達しました。また著者からも本総説①の撤回依頼を受けております。これに伴い下記総説①の掲載を撤回することといたしました。これは,総説①中に総説②が引用されておらず,内容の重複について審査段階で認識できなかったためにおこったことであり,編集委員会としても遺憾な事態と考えます。 今後,総説①を引用することのないようにご注意ください。 総説①(撤回総説) 神前英明.IL-33とアレルギー性炎症.耳鼻咽喉科免疫アレルギー2011; 29(4): 241–246. 総説② 早川盛禎 ほか.IL-33の基礎とアレルギー性炎症の誘導.炎症と免疫(先端医学社)2010; 18(6): 15(579)-20(584).
著者
秋山 貢佐 星川 広史
出版者
日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会
雑誌
耳鼻咽喉科免疫アレルギー (ISSN:09130691)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.193-197, 2016 (Released:2016-09-29)
参考文献数
17
被引用文献数
2

鼻噴霧用ステロイド薬はアレルギー性鼻炎の薬物治療において重要な位置を占める薬剤である。鼻噴霧用ステロイド薬は即時相,遅発相の症状を共に軽減し,アレルギー性鼻炎の3主徴であるくしゃみ,鼻漏,鼻閉のすべてに対して有効とされるが,適正に使用されずに効果が十分に発揮できないことが少なくない。患者のアドヒアランスの低下には鼻噴霧用ステロイド薬の使用感に対する不満が要因となることがあり,各薬剤の特性を理解し患者の満足度を向上させるように処方を行うことが重要であるが,使用感に関心を持つ医師は少ないと考えられる。近年,1日1回タイプの新規薬剤が国内で使用可能になり,アドヒアランスの向上が期待されるが必ずしも期待通りに患者の満足度や使用率が向上しているとは言えないのが現状である。1日1回タイプの新規薬剤としてFluticasone Furoate,Mometasone Furoate,Dexamethasone Cipecilateが本邦では使用可能となり,これらの薬剤の臨床効果に関する検討は多くあるが,使用感に関して検討したものはわずかである。薬剤の使用感とアドヒアランスには密接な関係があり,本稿ではこれまでの報告や自験例を基にして,これらの事柄について述べる。
著者
竹野 幸夫 平川 勝洋
出版者
日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会
雑誌
耳鼻咽喉科免疫アレルギー (ISSN:09130691)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.225-229, 2013 (Released:2013-09-27)
参考文献数
20
被引用文献数
2 1

呼気中の一酸化窒素 (NO) の測定は,測定方法の標準化ガイドラインが近年確立され,呼吸器領域の新しい診断マーカーの可能性と治療への応用の道が開かれてきている。一方で,ヒト鼻副鼻腔は生理的に重要なNO産生の場であると同時に,1) その複雑な解剖学的構造,2) NOが有する生理的恒常性の維持と炎症性メディエーターという二面性,3) 生体組織中へのNOの再吸収現象,など測定の標準化には解決すべき問題が残っている。鼻アレルギーでは過剰産生されたNOが,炎症細胞を介した非特異的免疫応答の増強や,活性酸素種との反応を介した細胞障害作用を引き起こし,アレルギー性炎症の病態増悪の一因になっていると考えられている。我々の検討でも,通年性HD鼻アレルギー症例における鼻呼気FeNO値の測定は病態把握に有用な指標となることが示された (cut off値 70 ppb,敏感度 59.3%)。一方で,慢性副鼻腔炎では罹患した副鼻腔洞においてNO濃度の低下が認められており,粘液線毛輸送機能の低下による排泄機能障害と密接に関連している。副鼻腔炎加療による粘膜再生過程では,線毛細胞に局在するiNOS由来のNO産生により鼻腔NO濃度が上昇する。また好酸球性副鼻腔炎 (ECRS) では,局所好酸球浸潤に一致したNO酸化代謝産物の沈着が顕著であることより,炎症細胞も加えたiNOS誘導を背景とするNO産生代謝機構は非好酸球性のそれと異なっており,これらの面からもFeNOモニタリングは有用な指標となると思われる。
著者
田中 康広
出版者
日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会
雑誌
耳鼻咽喉科免疫アレルギー (ISSN:09130691)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.1-7, 2012 (Released:2012-03-29)
参考文献数
47

近年,樹状細胞を用いた悪性腫瘍に対する免疫療法は特に注目を集めており,腫瘍抗原特異的な抗腫瘍効果の誘導を目指した臨床試験が世界各国のさまざまな施設で行われてきた。樹状細胞は生体内において最も強力な抗原提示細胞であり,T細胞を中心とした免疫担当細胞を調節し,腫瘍特異的な免疫反応を誘導するうえで重要な存在だと言える。この樹状細胞を用いた免疫療法は1996年に悪性リンパ腫に対して初めて臨床試験が行われ,2010年4月にはホルモン療法抵抗性の転移性前立腺がんに対する樹状細胞療法(sipuleucel-T)の製造販売が初めてFDAにより認可された。これまでのところ樹状細胞を用いた抗腫瘍免疫療法は腫瘍抗原が明らかとなっているペプチドのパルス療法が主体となっており,その他腫瘍抗原自体やその溶解成分,またはRNAをトランスフェクトする方法なども行われてきた。これらの方法は腫瘍抗原の同定が必要であるが,腫瘍抗原が未だ同定されていないものも多く存在する。このような腫瘍に対しては腫瘍細胞と樹状細胞をポリエチレングリコールにて処理した融合細胞によるワクチンが有効と考えられる。本稿では現在までに筆者らが行ってきた樹状細胞と腫瘍細胞からなる融合細胞を用いた免疫療法とその抗腫瘍免疫の機序について概説し,頭頸部腫瘍に対する免疫療法の現状についても言及したい。
著者
鈴木 元彦 中村 善久
出版者
日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会
雑誌
耳鼻咽喉科免疫アレルギー (ISSN:09130691)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.243-250, 2012 (Released:2012-10-12)
参考文献数
29

アレルギー性鼻炎は我が国の20%以上が罹患しており,日常診療において重要な疾患の一つである。しかし臨床上有効な根本的治療がなく,新しい治療法の開発が期待されている。RNA干渉(RNAi)は二本鎖RNA(double-stranded RNA,dsRNA)やmicro RNA(マイクロRNA,miRNA)に代表されるRNAによって相補的な塩基配列をもつmRNAからの翻訳が阻害される現象であるが,RNA干渉によって特定の遺伝子発現を抑制することが可能となる。また二本鎖RNAによるRNA干渉の発見後,長い二本鎖RNAによるRNA干渉が用いられてきたが,近年siRNA(small interfering RNA,short interfering RNA)という21-23塩基対の短い合成二本鎖RNAによってもRNA干渉が可能なことがわかってきた。siRNAは特定のmRNAにのみ生物活性を発揮し,特異的に遺伝子発現を抑制する。つまりsiRNAは選択性が高く,医薬品としての開発が期待されている。siRNAを用いて様々な標的分子を選択し,抑制することができるが,医療品として効率よく疾患を治療するためには重要な標的分子を選ぶことが肝要である。本稿では,アレルギー性鼻炎に対する新たな治療戦略としてRNA干渉を用いた治療法について概説する。
著者
倉上 和也 太田 伸男 欠畑 誠治
出版者
日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会
雑誌
耳鼻咽喉科免疫アレルギー (ISSN:09130691)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.9-14, 2012-12-29
参考文献数
55
被引用文献数
1

IgG4関連疾患は,全身の諸臓器にCD4ないしCD8陽性Tリンパ球とIgG4陽性形質細胞が浸潤する全身性疾患であり,IgG4陽性細胞の浸潤は,唾液腺,甲状腺,膵臓,胆管,後腹膜などに認められることが多い。近年,自己免疫性膵炎,硬化性胆管炎,後腹膜線維症など,これまで独立して診断されてきた疾患が,新しい疾患概念であるIgG4関連疾患の一つの表現型である可能性が示唆されている。耳鼻咽喉科領域においては,ミクリッツ病やキュットナー腫瘍などの硬化性唾液腺炎やRiedel甲状腺炎などがIgG4関連疾患であるといわれている。IgG4関連疾患では,自己免疫性膵炎や硬化性胆管炎で発症する例も少なくないが,耳下腺,顎下腺,涙腺の腫脹が自覚症状として認識しやすいため,耳鼻咽喉科や眼科を最初に受診する例が多く存在する。また無痛性であるため,医療機関を受診していない例も相当数存在すると予想される。しかしながら,IgG4関連疾患は単独の病変にとどまらず,経過中に全身諸臓器に病変を生じることが知られており,注意が必要である。当科で経験した症例においても,その約半数に自己免疫性膵炎をはじめとした他臓器合併症を認め,他科との連携治療を行っている。IgG4関連疾患は,たとえ初診時の症状や所見が軽微なものであったとしても,詳細な全身検索と長期間の経過観察,また他科との密接な連携を要する疾患である。<br>
著者
櫻井 大樹
出版者
日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会
雑誌
耳鼻咽喉科免疫アレルギー (ISSN:09130691)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.291-295, 2017 (Released:2017-12-28)
参考文献数
7

頭頸部扁平上皮癌の進行例は,近年の集学的治療によって局所制御率の改善がみられているが,いまだ遠隔転移は大きな予後悪化因子である。予後の向上のため,また治療後に問題となる機能や形態の温存のために,現行の標準治療に加えて新規治療法が求められる。当科では頭頸部扁平上皮癌患者を対象に,NKT細胞のリガンドであるα-Galactosylceramide(αGalCer)を樹状細胞に提示させ鼻粘膜下に投与する免疫細胞治療の開発を行ってきた。これまでの臨床試験により安全性,免疫応答の誘導,再発患者での腫瘍縮小効果が認められている。現在,標準治療後の寛解症例を対象とし,再発予防を目的にアジュバント療法としてランダム化二重盲検比較試験が先進医療として進められている。近年,癌は自ら様々な抗腫瘍免疫の抑制機序を用いて体内の免疫監視機構から巧みに逃れていることが示されている。その免疫抑制機序の一つとして,制御性T細胞(Treg)や骨髄性抑制細胞(MDSC)など免疫抑制細胞の誘導が指摘されている。我々は頭頸部扁平上皮癌患者においてこれら免疫抑制細胞が有意に増加し,その増加は予後悪化因子になることを見出している。免疫抑制細胞の制御など新たな治療戦略は,抗腫瘍免疫活性を増強し予後を改善させる可能性が期待される。現在当科で進められているNKT免疫細胞治療と新たな治療とを組み合わせることで,進行癌への対応,予後の改善を期待し,今後の臨床試験への展開を検討している。
著者
神前 英明
出版者
日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会
雑誌
耳鼻咽喉科免疫アレルギー (ISSN:09130691)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.241-246, 2011 (Released:2011-12-29)
参考文献数
50

本論文は撤回されました。詳細については本文PDFをご覧ください。
著者
大久保 公裕
出版者
日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会
雑誌
耳鼻咽喉科免疫アレルギー (ISSN:09130691)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.1-5, 2011 (Released:2011-04-08)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

日本のアレルギー性鼻炎治療における抗ヒスタミン薬のエビデンスレベルは高くなかった。それは開発治験しかランダム化された試験がほとんどなく,またプラセボを使用しない,さらに英文での公表がなかったからである。このため近年では市販された後に多くのエビデンスが収集され,また開発治験でもその結果を英文で公表し,レベルが向上してきた。実際の臨床現場ではアレルギー性鼻炎の治療方針はガイドラインに述べられているようにくしゃみ・鼻汁型をその適応とし,効果の高く副作用の少ない抗ヒスタミン薬を基本治療薬とする。一方,鼻閉型では抗ロイコトリエン薬や鼻噴霧用ステロイド薬を主として処方すべきである。種々の抗ヒスタミン薬の効果がフィールド試験,暴露試験などで検討されているが,効果には個人的なバラつきが存在し,ただ単に強い弱いと比較する事だけでは抗ヒスタミン薬を選択できないことを知る必要がある。