著者
江上 廣一 廣瀬 昌博 津田 佳彦 大濱 京子 本田 順一 島 弘志 中林 愛恵 福田 治久 今中 雄一 小林 祥泰
出版者
一般社団法人 日本医療・病院管理学会
雑誌
日本医療・病院管理学会誌 (ISSN:1882594X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.205-215, 2012 (Released:2012-11-30)
参考文献数
32

2007∼09年度に収集された転倒・転落のインシデントレポート1,764件を対象に,転倒率(件/1,000患者・日)を用いて転倒・転落に関する疫学的側面を検討した。患者の平均年齢は男66.6±18.8歳(950件),女69.9±19.2歳(814件)であった。全体の転倒率は1.84件/1,000患者・日,性別では男2.06および女1.87であった。年齢別では,70歳代が2.82件/1,000患者・日(555件)でもっとも高く,高齢者ほど高い傾向にあった。診療科別において,外科系では整形外科が最低で1.14件/1,000患者・日,内科系では循環器内科および呼吸器内科が最低で1.97を示し,外科系より内科系診療科が高い傾向にあった。また,入院から転倒発生までの日数における転倒率(転倒件数)について,入院翌日が0.16件/1,000患者・日(118件)でもっとも高く,ついで入院3日目が0.12(84件),入院当日が0.11(78件)で以降漸減していた。転倒発生の平均値は12.4日であった。 転倒率からみた転倒の疫学的側面から,入院診療科や入院からの日数に応じた防止策を講じることが必要である。