著者
渡辺 栄二 大熊 利忠 宮内 好正 山口 卓雄 持永 瑞恵 田中 道宣 上村 邦紀
出版者
Japanese Society of Chemotherapy
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.896-902, 1987

新しく開発された注射用オキサセフェム系抗生物質である6315-S (flomoxef, 以下本剤と略す) を開腹術後および内視鏡的治療後の外科的感染症の6例に使用し, その有効性につき検討した。また, 胆道疾患開腹術後に胆管ドレナージを行なった4例については, 本剤1g点滴静注後の血中および胆汁中の濃度を測定し, 薬動力学的検討を行なった。<BR>外科的感染症6例中5例の本剤投与量および投与方法は2g (分2), 3g (分3), 4g (分2) を点滴静注し, 肝膿瘍の1例にはセルジンガー法により腹腔動脈内から1日1回4gをone shotで2日間, 総量8gを注入した。外科的感染症における本剤の有効率は肝膿瘍の著効例を含む6例中4例, 66.7%であった。最高投与日数は13日, 最大投与量は39gで, 副作用はなく, 1例にのみ活性化部分トロンポプラスチン時間 (APTT) の軽度延長を認めた。<BR>本剤1960分点滴静注後の血中および胆汁中動態に関して, 薬動力学的解析を試みた。点滴終了時の平均血中ピーク濃度は42.9μg/ml, 消失相の半減期T1/2 (β) は1.02時間であった。胆汁内濃度は総胆管胆汁採取例 (1例) においてピーク値Cmax.=47.1μg/ml (79分) であり, 肝内胆管胆汁採取例では3例平均Cmax. は12.4μg/ml (100分) であった。総胆管胆汁濃度は, 肝内胆管胆汁濃度に比し, 約4倍の値を示した。<BR>以上, 本剤は消化器外科感染症に対して, 有用な薬剤であることが示唆された。